日本テレビの福田博之社長とテレビ東京の吉次弘志社長が8日、ビデオリサーチ主催の「VR FORUM 2025」に登壇し、「放送メディアの変化と不変的な価値とは?」をテーマにトークを繰り広げた。

  • (左から)テレビ東京の吉次弘志社長、日本テレビの福田博之社長

    (左から)テレビ東京の吉次弘志社長、日本テレビの福田博之社長

『孤独のグルメ』は「松重さんが食い続けられる限り」

近年、日テレの編成で大切にしているというのは「日常」と「祝祭」。「日常」は、いつもの時間にいつものコンテンツを体験できるレギュラー番組。一方の「祝祭」は、「たくさんの人と一緒に感動を共有できるものを出していこうという考え方」(福田社長)だといい、『24時間テレビ』『箱根駅伝』といった従来の大型番組に加え、今年新たに立ち上げたのが『ダブルインパクト 漫才&コント二刀流No.1決定戦』と『THEグルメDAY』だ。

吉次社長は「テレビ東京は系列局も少ないし、会社規模も小さいので、日テレさんが日本橋のど真ん中で千客万来の経営をしてらっしゃるとすると、うちは一本裏道に逸れたところの小さな店構えで、意外と行ってみると温かくていいねという感じの会社だと思っています」と位置付けを設定。また、同局を代表するドラマ『孤独のグルメ』について、「何度こすっても楽しめる番組なので、テレビ東京の財産です。(主演の)松重(豊)さんが食い続けられる限りぜひやっていただきたいと思っています(笑)」と期待を述べた。

福田社長の生成AIショート動画を上映

IP(知的財産)戦略の話題では、吉次社長が『恐怖心展』『行方不明展』を紹介。「どういう展覧会なのかと説明しろと言われても、何だかよく分かりません(笑)。『行方不明展』は、行方不明にまつわるお手紙とか、最後に入った電話ボックスとか、フィクションが置いてあるんです。若いカップルなどに大盛況でしたが、夕方になるとサラリーマンが一人で来るというのが多かったのが興味深かったです」という。ちなみに、これらは大森時生プロデューサーの仕掛けたイベントだが、吉次社長は「引き抜かれると困るので、名前は申し上げません(笑)」と、その場で付け加えた。

福田社長は対照的に、「クリエイターIPのグローバル展開」を掲げていることを説明し、『世界の果てまでイッテQ!』の古立善之氏、今年の『24時間テレビ』の総合演出も担当した『上田と女が吠える夜』の前川瞳美氏、『ブラッシュアップライフ』『ホットスポット』の水野格氏・小田玲奈氏といった制作者を紹介。柏原萌人氏の企画プロデュース、大納啓汰氏の総合演出/AI監修による『秋元康×AI秋元康』は、AKB48新曲プロデュース対決で秋元康が自身のAIに敗れるという結果に、英BBCや豪ABCなど海外メディアで話題になったという。

このAIという最新技術について、日テレでは、企画開発支援や権利処理代行によるクリエイティブな業務時間の創出や、ヒットコンテンツの再現性向上にも活用。会場では生成AIで制作した福田社長が出演するショート動画が上映された。

テレ東では、報道スタジオを中心に、仮想デジタル映像とリアル映像を組み合わせた「バーチャルプロダクション」を導入。吉次社長は「テレ東は経済関係の番組が多いので、グラフなどを作るのにバーチャルが力を発揮しています。最初のうちはみんな手探りでしたが、だいぶスキルが上がってきているのを実感しています」と手応えを述べた。

  • 生成AIが描いた30代の日テレ福田社長

    生成AIが描いた30代の日テレ福田社長

圧倒的リーチメディアが果たす責任

地上波テレビの強みであるスポーツコンテンツについて、福田社長は、NetflixがWBCの国内放送権・配信権を独占取得したことに「国民の圧倒的な関心事でもあるので、自局で放送できる、できないかはともかくとして、やっぱりテレビで見たいという思いはあります」とした上で、「テレビは圧倒的なリーチメディアであることは間違いないし、大きなムーブメントを起こす力を持っています。放送尺が違うので一概に比べられませんが、今年の『箱根駅伝』は5,540万人、『24時間テレビ』は6,642万人、『MLB開幕シリーズ』は7,260万人に見ていただきました。『世界陸上は』8,000万近い人たちにしっかりと届いている。我々にはそういったムーブメントを起こす力、ノウハウを持っていることを、多くの番組が証明しています」と強調。

続けて、「JFA(日本サッカー協会)さんが“25年後の未来に向けて、テレビを通じて夢を育てる”、“いつでもどこでも誰もが見られる環境を”と掲げていらっしゃいます。これは、我々に向けて、“テレビ頼むよ”というメッセージだと思いますので、しっかりと受け止めて、責任を持ってやっていきたいと思います」と決意を述べた。

今年の「VR FORUM 2025」は、8日・9日の2日間で53人の登壇者による全19セッションを開催。オンラインを含む4,900人が参加した。全19セッションのアーカイブ動画は、14日以降、順次公開予定となっている。