テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第108回は、7日に放送されたTBS系バラエティ番組『爆報! THE フライデー』(毎週金曜19:00~)をピックアップする。

同番組は、有名人の知られざる一面を徹底的に掘り下げる“爆弾報道”バラエティ。MCの爆笑問題と、「フライデー」というフレーズのイメージ通り、他番組とは一線を画すスクープを前面に押し出した構成で視聴者を引きつけている。

今回のメインは市原悦子さんで、自宅へ潜入して遺品を発見するほか、あるミュージシャンに残した遺言など、知られざる晩年の真実に迫るという。さらにヨン様、中尾彬・池波志乃夫妻、山口いずみ、巻誠一郎などのコーナーも予定されている。

2011年秋から放送されている金曜夜を象徴する番組であり、裏番組をことごとく蹴散らしてきたが、ここに来て「かげりが見られる」という声もあるだけに現状確認したい。

  • 爆笑問題の田中裕二(左)と太田光

■トップからヨン様、眼瞼下垂を紹介

番組開始とともに映し出されたのは、「爆報! ワイドショーを騒がせた海外スター来日衝撃映像」の文字。当番組のカラーは、こんな昭和の写真週刊誌を彷彿(ほうふつ)とさせる大風呂敷とノスタルジーに他ならない。

画面左上に「オバサマvs警察…大パニック映像」の文字が表示され、物々しいナレーションとBGMで登場したのは、ぺ・ヨンジュン。ドラマ『冬のソナタ』の映像に続いて、殺到するオバさんたちと警官360人のもみ合いが映し出された。けっきょく負傷者が続出し、ヨン様は謝罪会見を開くはめになってしまったのだが、ファン層である「中高年女性をつかもう」という狙いは明白だった。

約6分が過ぎたここでようやく『爆報! THE フライデー』のタイトルバックが登場。さらに、「大女優 報道されなかった晩年の真実」というナレーションが入り、19年1月にこの世を去った市原悦子さんの姿が映された。しかし、たっぷりあおっておきながら、まさかのおあずけ。番組が選んだ2番目のネタは、和田アキ子や高畑淳子ら芸能人たちが手術を行っているという“眼瞼下垂(がんけんかすい)”だった。

番組は、眼瞼下垂でまぶたが下がり、「女優業どころか日常生活にすら支障が出ている」という女優・山口いずみに密着。術式の詳細をCGで見せたほか、「術後は目が開きすぎてしまうかもしれない」というリスクも忘れずに紹介した。このような医療も中高年層向けのコンテンツであり、当番組の人気を支えている。

CMをはさんで手術は無事に成功し、山口はビフォーアフターの写真を披露。「山口いずみは今、再び前向きな気持ちを取り戻し、女優としての意欲に燃えていた!」というナレーションで締めくくられた……と思いきや、ナレーションは続き、「本日のゲスト中尾彬の妻・池波志乃も、硬化性骨髄炎という病に苦しめられていた」と別の病気を紹介。池波はスタジオで「11時間半の大手術を受け、今も口がしびれたまま」という壮絶な体験を語った。

3つ目のコーナーは、「爆報 あの人は今…大追跡 元サッカー日本代表・巻誠一郎は今…」。サッカードイツワールドカップから14年が過ぎ、39歳となった巻が、地元の熊本県宇城市で暮らす姿をクローズアップするという。

まずは元女優の智子さんと12歳・10歳・7歳の男児を紹介。続いて、農業の担い手が少なくなったことによる“空き農地問題”に向き合い、外国人や障がいを持った人たちとミニトマト作りに励む様子が映され、「巻は今、地元の子どもたちにサッカーを教えながら、現役時代さながらに泥臭く頑張っていた」というナレーションで終了した。

■エンディングが“樹木葬”だった理由

放送開始から30分が過ぎたところで、ついに市原さんのコーナーがスタート。この徹底したじらし方も昭和風の番組を感じさせるが、中高年層にとっては毎週徹底されているから気にならない。つまり作り手と視聴者のお約束になっているため、さほど嫌な感じはしないのではないか。

番組は市原さんが声優を務めた『まんが日本昔ばなし』の懐かしい映像を紹介したあと、ドキュメンタリー調にシフトチェンジ。「われわれは彼女の晩年と死の裏側を知る、ある人物とコンタクトに成功。市原が生前暮らした自宅ですべてを語ってくれるという」とシリアスモードに突入した。

登場したのは、40年以上マネージャーを務めた男性で肩すかしだったが、遺品がそのまま残された2LDKの自宅は臨場感たっぷり。さらに、「ブスだから」と顔面コンプレックスを持っていたことや、自宅のあるマンションにもう1部屋買い、稽古場にして演技を磨いたこと、演出家の夫が亡くなり自宅に引きこもってしまったが、ミッキー吉野のサポートで元気を取り戻したことなどが明かされた。亡くなる5日前、ミッキー吉野は昏睡状態から奇跡的に目を覚ました市原さんと20分間話し、「愛してるわよ」という最後の言葉を聞いたという。

番組は最後に、市原さんと夫が眠る千葉県袖ケ浦市の寺を映し出した。子どもがいなかった夫妻が選んだのは、墓石の代わりに樹木を墓標とし、永代供養で跡継ぎを必要としない樹木葬。生前訪れたときに美しい桜を勧められたが、普通の榎を選んだところに市原さんらしさを感じてしまう。

実際の樹木が映され、「派手さはなくても輝き続けた国民的大女優・市原悦子は我々の心の中でこれからも生き続ける」というナレーションで終了。視聴者に終活を意識させるようなエンディングもまた中高年層に向けたメッセージだったのではないか。

ぺ・ヨンジュンは47歳、山口いずみは65歳、池波志乃は64歳、巻誠一郎は39歳、さらに市原悦子さんは昨年82歳で亡くなった。ちなみにミッキー吉野も68歳であり、やはり最もシンパシーを感じるのは60代以上の視聴者なのだろう。

■コーナー中もあおり続ける潔い演出

金曜夜は、残業、会食、飲み会、デート、習い事、イベントなどで、20~40代のリアルタイム視聴が難しいことは容易に想像がつく。だからこそ当番組は高年層に狙いを定めて高視聴率を記録してきたのだが、この日は8.2%(ビデオリサーチ調べ・関東地区 ※以下同)に留まった。前4週の平均も8.1%だけに、これが現状のアベレージと言ってもよさそうだ。

裏番組を見ると、『NHKニュース7』15.3%、『クイズ!あなたは小学5年生より賢いの?SP』(日本テレビ系)11.3%、『ザワつく!金曜日』(テレビ朝日系)9.8%、『坂上どうぶつ王国』(フジテレビ系)8.1%、『完食者ゼロの店!デカ盛り道場破り』(テレビ東京系)4.4%。

ターゲット層で見ると、『爆報! THE フライデー』のライバルは『ザワつく!金曜日』『NHKニュース7』だが、このところ『坂上どうぶつ王国』も社会派ネタを増やしているだけに、中高年層の視聴者をめぐるバトルは激化している。だから今回の放送は「トップにヨン様&メインに市原さん」というビッグネーム2本立てで勝負したのなら合点がいく。

最後に1つ挙げておきたいのは、週刊誌さながらのあおりフレーズ集。「日本芸能史上類を見ない」「謎の病とは?」「死の裏側」「自宅へ緊急潜入!」「衝撃の遺品」「紅白ミュージシャンM」「市原が残した遺言」「驚きの墓とは?」などの視聴者をあおるようなフレーズが1時間飛び交いっ放しだった。

CMまたぎだけではなく、コーナー放送中にも何度となくあおるような映像がはさまれるのだから、もはや一芸と言ってもいいレベル。このような演出は、若年層がテレビに嫌悪感を抱くところである一方、徹底することで中高年層にとっての懐かしさにつなげている。

スタジオの出演者たちが単なるワイプのリアクション要員で「爆笑問題ですらほとんどコメントしない」というムダさや、MC・田原俊彦の佇まいも、いい意味での前時代的なムードを醸し出す。「古い」「時代錯誤」などと言われることも多い番組だが、それを貫けば味になり、希少価値は増すのではないか。

苦戦の兆候が見える今だからこそ、むしろ「もっと古く、もっと時代錯誤と思わせるような演出にトライしてほしい」と思わずにはいられない。

■次の“贔屓”は…爆買い、大食い…珍客にスポットを当てる『ウワサのお客さま』

(左から)小倉優子、堀田茜、川島明、伊達みきお、富澤たけし (C)フジテレビ

今週後半放送の番組からピックアップする“贔屓”は、14日に放送されるフジテレビ系バラエティ『ウワサのお客さま 全国店員さんインタビュー! バレンタインSP』(20:00~21:55)。

2度のパイロット版を経て、昨秋にレギュラー放送スタートしたサンドウィッチマンと川島明がMCを務める生活情報系バラエティ。さまざまなチェーン店の個性的なお客さまにスポットを当て、視聴者にとってのお得情報を交えて放送している。

次回の放送予定は、「業務スーパーで爆買い100人の母! 第2弾」「『しゃぶ葉』で肉100皿超え大食い家族の長女は超肉食JK」「『スイパラ』でウワサ筋肉スイーツ男子」「スーパー銭湯で湯船には目もくれずサウナを堪能する芸能人」。

生活情報バラエティは一時期のブームこそ去ったが、毎週15%前後の高視聴率を記録する『有吉ゼミ』(日テレ系)もあるだけに、その可能性を追究していきたい。

著者:木村隆志(きむら たかし)

コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月20~25本のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組にも出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』など。