テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第110回は、22日に放送されたフジテレビ系バラエティ特番『有吉ダマせたら10万円』をピックアップする。

「芸能界一うたぐり深い男・有吉弘行を見事ダマせるか?」という一点突破型の企画だが、視聴者も予想して楽しめるほか、1対1の心理戦、有吉の毒など、何気にエンタメ性は高い。事前公開された放送内容詳細には、「満を持して1年ぶりの放送」という自信満々のコメントもあっただけに期待してよさそうだ。

今回、有吉に挑むのは、近藤真彦、EXIT、指原莉乃、純烈などキャラクターの異なるクセ者ばかり。「年1回放送からの昇格はあるのか?」も含め、その可能性を探っていきたい。


■いきなり「不正解」でガチンコ感が漂う

有吉弘行

オープニングのナレーションは、「いつも有吉にヤラレっぱなしの芸能人が自ら考えた問題で有吉をダマす!」。この段階では、「視聴者は有吉とチャレンジャーのどちらに肩入れして見るのか?」、まだ分からなかった。

最初のチャレンジャーはチャラ男キャラの芸人・EXIT。すかさず有吉は「こんなもん街のチンピラですからね」と毒を放った。1問目は「高額整形ガールは一体誰?」で、スタジオに3人の女性が登場するやいなや、有吉は「みんな整形顔だね!」と言い切ってしまう。単なる毒ではなく、視聴者が思っていることを瞬発的に代弁できるのが有吉の強みだ。

さらに有吉は、女性たちに口を開かせておいて「歯がヘン」、目をつぶらせた女性が緊張すると「キスするわけじゃないんだから」、「脂肪吸引もしたい」という女性に「努力する気ねえのかよ!」と言いたい放題。ところが有吉はいきなり間違えてしまった。1問目から間違えた上に、本当に悔しそうな顔を見た視聴者は、「この番組はガチなんだな」と思ったのではないか。

有吉は続く2問目の「高額整形ガールは一体誰?」と、3問目の「EXIT・兼近大樹が6年ぶりに会う思い出の人はどっち?」を連続正解。有吉が不正解続きでは成立しない企画だけに、スタッフも胸をなでおろしただろう。ともあれ、EXITは10万円を獲得した。

2番目のチャレンジャーは純烈。やはり有吉は「問題のあるメンバーがいなくなった(不祥事で脱退)から誠実な人たちですよね」と毒を放つ。1問目は「キャラ強すぎ純烈ファン! 実際にいるのはどっち?」で有吉は不正解。2問目は「NGなしの純烈が唯一NGなファンサービスはどっち?」で正解し、純烈も10万円を獲得した。

3番目のチャレンジャーはアイドル界のレジェンド・近藤真彦。さすがの有吉も近藤の登場に「汗、吹き出ちゃった」とたじろぐ。問題は「今年デビュー40周年! 55歳近藤真彦 難関チャレンジ できる? できない?」。1問目は「激狭縦列駐車1発できる? できない?」。

自信満々の近藤は、番組が設定した車幅を自ら狭め、スタッフが車につけた衝突保護カバーを取り去った。「人生で1回もぶつけたことがない」「絶対ぶつけられない」と語る別撮りのインタビューカットも挿入するなど、「ここがクライマックス」という感が漂ってくる。ところが有吉は「できない」と予想して、近藤は失敗し、スタジオは大爆笑の渦に。直後、「泣きのもう1回」で成功したシーンを映したが、こうしたタレントへの過剰配慮は蛇足ではないか。

■「有吉ダマし成功率35%」は妥当か

2問目は、「45年ぶりに挑戦する8段の跳び箱を跳べる? 跳べない?」で、有吉は「跳べない」と答えたが、近藤は跳び切って不正解。続く3問目は、「本当にあったドッキリはどっち?」で、有吉はまたも不正解。近藤は20万円を獲得した。

4番目のチャレンジャーはバカリズム。問題は「このポエム 相田みつを? バカリズム?」。前回放送時の人気コーナーだけに、バカリズムは「徹夜で考えてきた」と胸を張るが、有吉は3問連続で見破ってしまう。「今日は“相田”が分かる!」と自信満々の有吉に対して、バカリズムは悔しくて思わず唇を噛む姿を見せたが、残り2問は不正解で20万を獲得した。

5番目のチャレンジャーはモーリー・ロバートソンで、問題は「ハーバード大学のウソホント」。しかし、有吉は2問ともあっさり正解してしまい、2問目は問題すら放送すらされなかった。よほど盛り上がらなかったのだろうが、スタジオ観覧アリの番組ならこんなシビアさもあえて見せることで、「ヤラセはしません」という誠実な制作姿勢をアピールできるのかもしれない。

最後のチャレンジャーは指原莉乃で、問題は「詐欺メイクしているのは一体誰?」「芸能人の兄弟姉妹ウソ? ホント?」。有吉はまたも2問連続であっさり正解して番組は終了した。

ラストカットに「今回の有吉ダマし成功率35%」とあったように、有吉は17問中11問正解。番組の理想としては、『芸能人格付けチェック』におけるGACKTのように「もっと強い存在であってほしい」ところだが、「リアルなレベルに収まった」とも言える。最後まで見て分かったのは、前述した「視聴者は有吉とチャレンジャー、どちらに肩入れして見るのか?」の答えが有吉ということ。やはり「有吉が負けっ放しでは番組が成り立たない」ことを視聴者は分かった上で楽しんでいるからだ。

ただ、この番組が本当に見せたいのは、有吉の勝ちまくる姿ではないのかもしれない。「いやあ、こっちかな~」と真剣に考え込み、正解すると「よし!」と力強くガッツポーズし、不正解のときは思い切り顔をしかめるなど、そのリアクションはどの番組よりも大きかった。「今年一番笑った」と大爆笑したり、「何で俺らこんなこと真剣にやってるのかな?」と薄ら笑いを浮かべたり、考えながら相田みつをと空想の会話をしはじめたりなど、とにかく楽しそうなのだ。

■「CMをまたぐ正解発表」は古い

有吉は4月からレギュラー化される『有吉の壁』(日本テレビ系)でも、「常に笑いっ放しで、ときどき毒を吐く」という楽しげなMCスタイルを見せているが、これを今後のスタンダードにしていくのか。もしそうなら安心して見られる反面、どこか物足りなさも感じてしまう。

当番組のようなMCのパーソナリティを全面に出した番組は、「司会者の時代」と言われた70・80年代以降めっきり減ってしまった。現在では明石家さんまの番組くらいで、その他は池上彰や林修がMCを務める教養・情報系番組のみ。出演者をソツなくさばきながら番組を進めるタイプのMCばかりの中、当番組のようなMCのパーソナリティにいい意味で頼った番組がもっとあってもいいだろう。その意味で当番組は、上下動の激しい人生を経験してきた有吉の勝負師ぶりをよく引き出している。

では、「『有吉ダマせたら10万円』はレギュラー昇格の可能性があるのか?」と言えば話は別。まだまだラッシュアップされるべき課題が散見される。

たとえば、「売れっ子の芸能人が1問10万円の賞金で盛り上がるのか?」といえば疑問符がつく。「2問連続正解で100万円、3問連続正解で1000万円」くらいの一獲千金がなければ、視聴者をハラハラドキドキさせられないのではないか。

また、有吉とチャレンジャーそれぞれに「負けたときのペナルティがない」という点にも物足りなさを感じてしまう。罰ゲームがいいとは言わないが、有吉が追い込まれたり、何かを失ったりするシーンがないため消化不良の感があった。「相田みつをを酷評してしまうかもしれない」というリスクのあるバカリズムのコーナーが最も緊張感があることがそれを物語っている。

最後に1つ挙げておきたいのは、「果たして正解はどっち?」とCMをまたいで正解を発表する古い演出。現在の視聴者は、「問題の正解まで放送して、次のシーンを見せてあおってからCMに入る」のが我慢できるギリギリのラインだろう。一点突破のシンプルな構成だけに、視聴者を誘導する利己的な演出は避けたいところだ。

■次の“贔屓”は…一般人の失敗エピソードは面白いのか? 『全日本大失敗選手権』

『全日本大失敗選手権』MCの東野幸治

今週後半放送の番組からピックアップする“贔屓”は、29日に放送される『NHK杯 輝け!!全日本大失敗選手権大会 ~みんながでるテレビ~』(22:10~22:59)。

日本全国からとびきりの失敗エピソードを持つ人が集まり、NHK杯を賭けてトークバトルを繰り広げる視聴者参加番組。特番として放送されたあと昨春から月1レギュラー化し、今回で11回目となるなど、名物番組になりつつある。

「全国の老若男女が集合」「面白ければ鐘が鳴る」など、「NHKのど自慢」の要素がプンプンだが、民放各局で視聴者参加番組がなかなか増えない中、ひそかに注目度は高い。「一般人の失敗エピソードは面白いのか?」という根源的な問題も含め、テレビマンたちにとっては気になる番組だろう。

著者:木村隆志(きむら たかし)

コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月20~25本のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組にも出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』など。