テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第107回は、1日に放送されたフジテレビ系バラエティ特番『内村カレンの相席どうですか』をピックアップする。

18年7月から不定期放送されている“相席”がテーマのトークバラエティ特番。ゲストが会いたい人を立て続けにスタジオに呼んでトークを展開していくのだが、進行役を滝沢カレンが務める面白さもあり、各所でオリジナリティを感じさせる。

今回のメインゲストは、香取慎吾、菅野美穂、三浦翔平の3人。香取は伊藤淳史、フワちゃん、ぺこぱ、ミルクボーイ、八木優希、菅野は叶姉妹、石田ひかり、星野真里、ギャル曽根、三浦は田中真弓と相席するという。やはり注目は、地上波バラエティ復帰が進む香取であり、すべての絡みがネット上の話題を集めるのではないか。

  • 内村光良(左)と香取慎吾

■こんなにツッコむウッチャンはレア

オープニングは、番組の見どころ紹介。香取の登場シーンを中心に「これでもか」と言うほどの映像を先出したのは、「内容に自信がある」ことの表れではないか。ただ同時に「香取の出演シーンをじらすつもりでは」という不安も抱いてしまった。

まずは菅野美穂がスタジオに登場。カレンが中学生時代に菅野と会った(実際は3階から地上の菅野を見かけただけ)エピソードを話し、さらに「(菅野さんは)面白そうな方ですよね」とつぶやくと、内村が「あんたが面白いわ!」のツッコミで笑わせた。菅野のプロフィールを読みはじめても、「ドラマ」と「ドイツ」を読み間違えたり、「『イグアナの娘』?」と疑問形になったり、台本を初めて見るようなカレンの進行が1つのエンタメになっている。

相席の1組目は叶姉妹。興奮気味の菅野は「恭子さんの“乳間ネックレス”、近くで見ていいですか?」と近づいてひざまずき、姉妹の胸をタッチ。「ありがとうございます…」と漏らすと、すかさず内村が「初めての動物にさわった感じになってる」とツッコミを入れた。この番組ほどツッコミを入れる内村は見たことがないし、それがいたく楽しそうに見える。

菅野は叶姉妹のバッグを見ることになり、入っていたのは宝石、ゴールドバー、ランジェリー。菅野はランジェリーをプレゼントされ、「子どもの送り迎えのときにこれを…」とボケて笑いを誘い、「相席の結果 ちょっとセクシーになれました」というテロップで終了した。

相席の2組目は、番組が「最強ママ女優軍団」と掲げた石田ひかり、星野真里、ギャル曽根の3人。菅野は4歳の息子と1歳の娘の子育てしているだけに、仕事の受け方、毎日の弁当作り、子育てで後悔していることを尋ねる真剣なお悩み相談コーナーとなった。

そんな流れを受けてか、ここで「滝沢カレンの人生相談どうですか?」というコーナーを挿入。カレンは現役東大生の男女各1人と相席し、「恋愛をこじらせてしまう」「気になる年下とつき合うべきか」という悩みに見事なアドバイスを見せた。「言葉のチョイスはおかしいが、言っていることは正しい」というカレンの本質をとらえた制作サイドのファインプレーではないか。

あまりバラエティに出ない菅野美穂の特別感をベースに、叶姉妹のインパクト、ママタレントのほっこりトーク、カレンの爆笑人生相談を見せた序盤は、「香取慎吾という目玉をおあずけしながらも、幅広い視聴者の獲得を狙う」作為的な構成に見えた。

■久しぶりにスイッチが入った香取慎吾

映像は再びスタジオに戻り、三浦翔平が登場。案の定、「香取はまだか」の声がネット上に飛んでいた。相席相手は三浦が「一度会ってみたかった憧れの声優」であり、ルフィやクリリンなどの声で知られる田中真弓。三浦は田中とともにアニメ『ワンピース』の名シーンを一発勝負のアフレコで成功させ、「相席の結果 大好きな名シーンに声を吹き込めた」というテロップで終了した。

そして、スタートから55分が経過したころ、ようやく香取が登場。スタジオから悲鳴のような歓声があがり、カレンも「はあ…」と思わず息を吐く。香取はドラマ『西遊記』(フジ系)で共演した内村のことを「いつも(どの番組でも)何かしら棒を持ってる」と評して内村の「『アイツ(棒を)持たせておけばいいだろ』って思われてる」というツッコミを引き出し、いきなり笑わせた。

相席の1組目は、香取が「昨年末、人生で初めて『M-1グランプリ』を見た」ことから、ミルクボーイ、ぺこぱ、さらに番組側が呼んだフワちゃん。香取は「ぺこぱが優勝するかと思っていたけど、(最終決戦の投票が)1つも入らなくて、自分のセンスが全然違うんだな…」と再び笑わせた。

さらに、ぺこぱ・松陰寺太勇の自己紹介をマネすることになった香取は、「ちょっと待ってください。スイッチを入れますね。これは入れないでやると、本当にすごい中途半端なことに…」と間を取る。ほどなく香取は全力で自己紹介をやり切り、「年齢重ねていくとあんまり頑張ることないじゃないですか…。あのときに『ぺこぱ優勝だと思った』って話をしなければよかったなって」とボヤいた。

続いて香取はフワちゃんとYouTube用の動画撮影に挑戦。ノリに合わせているうちにキャラが壊れて再びぺこぱ・松陰寺太勇になるなど、しばらく地上波から遠ざかっていたが、トークスキルはまったくさびついておらず、「相席の結果 久しぶりにいいスイッチが入りました!」というテロップで相席は終了した。

相席の2組目は、香取の主演ドラマ『薔薇のない花屋』(フジ系)で娘役を務めた八木優希。毎年手紙を送りながら10年ぶりの再会となり、涙を流す八木を見た内村は「こういう(いい)番組なんだよ!」とアピールして笑わせた。

八木は、香取からもらった手紙を紹介したほか、この日のために書いてきた手紙を読みながら「もう一度共演するために頑張りたい」と語り、香取は「僕も『いつの日かまたお芝居でご一緒できるように頑張らないとな』と思いますね。うれしいですよ」と返事。「相席の結果 父ちゃんと雫の絆がより深まりました」というテロップで相席は終了した。

■トーク番組における“じらし”の演出

3組目は香取が「内村さんともこうやってひさしぶりに会えますし、そうなるとあのブタ(猪八戒)にも…」と語る『西遊記』で共演した伊藤淳史。伊藤は、香取のプライベートに興味津々で、「派手な家と黒っぽい家(を複数持っている)…。いろんな照明がついていて、椅子は30~40ある。休みの日はいろいろな人が集まってくる」と謎に包まれたプライベートを引き出した。

番組は最後に、「Mattが銀座のワイン通に人気の店で人生初相席」というコーナーをはさんでスタジオに戻り、伊藤が香取に「1回のご飯のために連絡先交換するの?」と断られ、「相席の結果 14年越しの連絡先交換は出来ず!」というテロップで終了した。

「香取慎吾」「雫ちゃん」「八木優希」「内村カレン相席どうですか」の4語がツイッターの日本トレンド入りしたことが、香取のタレントバリューやネットとの親和性を物語っている。番組の世帯視聴率は7.8%(ビデオリサーチ調べ・関東地区)と厳しい結果に終わったものの、コンテンツの質や購買につながる思い入れの深さが問われはじめている昨今、テレビマンたちはこの事実を無視できないだろう。

もう1点、象徴的だったのは、笑いを詰め込んだ番組の中で、感動的なパートの反響が大きかったこと。昨年バズッたテレビ番組と言えば、ラグビー日本代表の試合中継や、アンタッチャブルが電撃復活した『全力!脱力タイムズ』(フジ系)が思い浮かぶが、どちらもドラマティックな感動物語だった。

その意味では、この番組も笑いを詰め込もうとしすぎず、感動物語がメインでいいのかもしれない。そもそもカレンを進行役に据え、内村が「お前たいがいにしろ。オレ、変な汗出てくる…」とボヤくほどツッコミをさせている時点で、十分な笑いは確保できている。

香取の出演もあって盛り上がったからこそ1つ気になったのは、前述した“じらし”の演出。ネットの普及・浸透で好きなときに好きなものを見られるようになった今、“じらし”そのものが時代錯誤であり、「テレビの作り手に自分の貴重な時間を奪われたくない」と反発する人は少なくない。動きの少ないスタジオでのトーク番組は、なおのことその印象が強いのではないか。

CMをまたぐ際の「このあと〇〇〇〇さんが登場」という伏せ字や、顔だけを隠した映像なども含め、毎分視聴率やグラフのカーブを踏まえた演出は、視聴者の心境や印象で見たら、もはや「ガマンの限界」まで来ているのではないか。

この番組は視聴者から、半年に一度ではなく、レギュラー化を待望されるほどの熱を持っているだけに、視聴率に偏った現在の評価指標と、それに基づく演出が気になってしまった。

■次の“贔屓”は…大女優・市原悦子さんの真実に迫る『爆報! THE フライデー』

爆笑問題

今週後半放送の番組からピックアップする“贔屓”は、7日に放送されるTBS系バラエティ番組『爆報! THE フライデー』(毎週金曜19:00~)。

同番組は、有名人の知られざる一面を徹底的に掘り下げる“爆弾報道”バラエティ。MCの爆笑問題と、「フライデー」というフレーズのイメージ通り、他番組とは一線を画すスクープを前面に押し出した構成で視聴者を引きつけてきた。

今回のメインは市原悦子さんで、自宅へ潜入して遺品を発見するほか、あるミュージシャンに残した遺言など、知られざる晩年の真実に迫るという。さらにヨン様、中尾彬・池波志乃夫妻、山口いずみ、巻誠一郎などのコーナーも予定されている。

11年秋から放送されている金曜夜を象徴する番組であり、裏番組をことごとく蹴散らしてきたが、ここに来て「かげりが見られる」という声もあるだけに、現状確認したい。