テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第104回は、10日に放送された日本テレビ系バラエティ番組『クイズ!あなたは小学5年生より賢いの?新春こそ最終問題突破!!SP』をピックアップする。

同番組は世界50カ国以上で放送された人気クイズ番組の日本版として2011年4月、18年11月、19年5月、8月に単発番組として放送されたあと、同年10月にレギュラー化。「小学生の問題を全問正解できたら300万円獲得」という単純明快なコンセプトで激戦区の金曜夜に放送されている。

このところ、『超逆境クイズバトル!! 99人の壁』(フジテレビ系)、『そんなコト考えた事なかったクイズ!トリニクって何の肉!?』(ABCテレビ・テレビ朝日系)と、子ども解答者を生かしたクイズ番組が増えているだけに、その狙いも含めてさまざまな角度から掘り下げていきたい。

  • 『クイズ!あなたは小学5年生より賢いの?』MCの劇団ひとり(左)と佐藤隆太

■1問目から小学生の見せ場が訪れる

番組内容の説明はなく、いきなりクイズに突入。つまり、「それくらい誰にでも分かりやすい番組」ということだろう。1組目のゲスト解答者はジャニーズWESTの重岡大毅。明らかに出演ドラマの番宣なのだが、「今、小学生女子に大人気」という理由付けでファン以外の視聴者をしらけさせないか心配になってしまった。

1万円を賭けた1問目の問題は小学生の慣用句。「目を白黒させるの意味はどれでしょう? A:疲れる B:驚く C:難しい」。重岡が「(目を白黒させるって)初めて聞いた。有名?」とつぶやいてスタジオをざわつかせたところで、ナレーションが入る。

「問題が分からないときは関東の小学校に通うクラスの優等生5人に助けてもらうことができる。ただし助けてもらうのは3回だけ」。画面には、指名した1人の解答をのぞくことができる“指名カンニング”。ルーレットで止まった小学生の解答になる“ルーレット”。小学生全員の解答を見ることができる“全員オープン”の3つが表示されていた。

重岡はいきなり“指名カンニング”を使って「B」を解答し、何とか正解。ところが続く2~4問目は、「勢いに乗り3問連続正解」というナレーションだけではしょってしまった。テンポこそいいものの、「本当に正解したのか?」というリアリティに欠け、賞金獲得のカタルシスも目減りしてしまう。できれば問題と解答を映したいところであり、せめてネットで完全版を配信するほうがファンサービスになるだけでなく信頼を得られるだろう。

重岡は順調に正解を重ねて、アッと言う間に100万円を賭けた10問目に挑戦。小学6年生の歴史「縄文時代より日本にあったものは? A:銅たく B:土偶 C:はにわ」という問題に「B:土偶」と答えて正解し、100万円獲得した。「300万円の最終問題に挑むか、100万円を持ち帰るか選ばせる」という儀式を経て、最終問題に突入。しかし、小学3年生の国語「1月から12月までを旧暦で全て答えなさい」に1つも書けず不正解となってしまった。

正解は「1月から順に、睦月、如月、弥生、卯月、皐月、水無月、文月、葉月、長月、神無月、霜月、師走」。小学生解答者は5人中4人が正解し、ツインテールの美少女・のんちゃんは「日本の伝統が好きで覚えていました」と余裕のコメントで“敗者の大人”とのコントラストを鮮明にした。

■最終問題にたどり着けなければ恥

2組目のゲスト解答者は、高橋メアリージュン・ユウ姉妹。9問目の小学6年生理科実験「二酸化炭素で満たしたペットボトルを振ると? A:へこむ B:ふくらむ C:変わらない」に「B」と解答したが、正解は「A」で失敗。一方、小学生は5人全員正解した。

3組目のゲスト解答者は、受験の難関校・暁星小学校と慶応大学を卒業した歌舞伎役者・市川猿之助。300万円を賭けた11問目の小学5年生社会「日本で標高の高い山トップ3全て答えなさい」に「1位富士山 2位槍ヶ岳 3位剣ヶ岳と八甲田山」と答えたが、正解は「1位富士山 2位北岳 3位間ノ岳と穂高岳」で不正解。一方、小学生は5人中2人正解した。

4組目のゲスト解答者は、『仮面ライダーエグゼイド』で“超天才外科医”を演じていたイケメン俳優・瀬戸利樹。しかし、10問目の小学3年生生き物「ダンゴムシの脚は何本? A:8本 B:14本 C:20本」に「A」と解答したが、正解は「B」で失敗。一方、小学生は5人全員正解した。

最後のゲストには、日本最高偏差値の東大医学部に在籍しながら司法試験に一発合格した河野玄斗が「番組史上最強の挑戦者」として登場。最強の頭脳日本一決定戦『頭脳王』(日テレ系)で2連覇を果たした異次元の天才であり、小学生解答者たちからも「どんなに勉強してもそこまではいけない」と憧れの眼差しを向けられていた。

順調に正解を重ねて迎えた最終問題は、『子ども年鑑2019』からの出題「JR東日本で1日の平均乗車人数が多い駅トップ3は?」に「1位新宿 2位池袋 3位東京」と答えて見事に正解。番組初の300万円獲得者となり、「私は小学5年生より賢いです」と宣言して番組は終了した。

小学生でも解ける簡単な問題ばかりであり、300万円を賭けた11問目だけ極端に難しい。小学生の力を借りる救済システムも含め、「ゲスト解答者に11問目まで進んでもらう」という前提の構成であり、裏を返せば「10問目までに失敗した芸能人はこの上なく恥ずかしい」というリスクを負うことになる。

■2011年の単発特番をなぜレギュラー化?

ゲストの人選に目を向けると、アイドル、美人姉妹、歌舞伎役者、イケメン俳優、東大生とバリエーションに富んでいた反面、「この人が出るなら見たい」という大物不在でインパクトの面で物足りない。芸人たちのようにトークが弾んだり、笑いを誘ったりすることもなかった。もともとクイズを前面に出して楽しませる番組であり、「ゲスト解答者は主役ではない」ということなのだろう。

実際この番組の主役は小学生解答者であり、5人とも賢いだけでなく、素直でかわいらしい。最も盛り上がるのが「素人の小学生が芸能人の大人を助ける」シーンであることがその裏付けとなっている。だからゲスト解答者は大物芸能人ではなく、ちょっとおバカな中堅くらいがちょうどいいのかもしれない。

演出面では「出題にほのぼのとしたイラストを多用している」「テロップの色がカラフルで、ポップな書体」「問題を画面下部に表示し続けている」など、子どもが見やすく親しみが持てるような配慮が見られる。

ゲスト解答者が小学生だったころの写真を紹介していることも含め、至るところが子ども対応であり、引いてはその親を絡めたファミリー仕様。ゴールデンタイムに『ドラえもん』『クレヨンしんちゃん』(テレ朝系)なき今、小学生の子どもがいる家庭が夜に最も見やすい番組となっている。

「子どもたちの賢さとかわいらしさ」「子どもが大人を負かし、大人が子どもに負ける痛快感」「親子一緒に楽しめるクイズ内容」という狙いは、冒頭に挙げた『99人の壁』『トリニクって何の肉!?』とほぼ同じ。子どもが大人顔負けの知識を披露する『サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん』(テレ朝系)も含めて、一般の子どもをどのように発掘し、どのように活用し、どのようにファミリー視聴へつなげていくのか。

『小学5年生より賢いの?』が「2011年4月に単発特番枠で放送された後、7年半後の2018年11月に突然再発掘され、2019年5月と8月のパイロット版で検証され、秋からレギュラー化した」という経緯からも、業界の傾向がうかがえる。テレビマンの思考は良くも悪くも横並びであり、子どもたちを一時的に持ち上げておきながら、ハシゴを外すようなことがないことを祈りたい。

■次の“贔屓”は…「クリエイターズ・ファイル」のテレビ版『ロバート秋山のウソ枠』

『ロバート秋山のウソ枠』に出演する山崎賢人(左)とロバートの秋山竜次=日本テレビ提供

今週後半放送の番組からピックアップする“贔屓”は、17日に放送される日本テレビのバラエティ番組『ロバート秋山のウソ枠』(24:30~24:59 ※関東ローカル)。

17年10月、18年2月、19年1月に放送されたロバート・秋山竜次の冠バラエティ第4弾。「秋山が架空の人物に扮してウソだけで構成された番組を作る」というコンセプトで、これまで歴史ドキュメンタリー、音楽番組、アニメのパロディを手がけてきた。言わば、『ロバート秋山のクリエイターズ・ファイル』のテレビ番組版であり、毎回コアなファンを喜ばせている。

今回の企画はスポーツ番組で、秋山が都内に存在する「アスリートCMアカデミー」の校長になり切るという。山崎賢人もゲスト出演するなど力が入っているだけに、どこまで作り込んでくるのか? ネット配信向けのコンテンツでもあり、さまざまな可能性を探っていきたい。

著者:木村隆志(きむら たかし)

コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月20~25本のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組にも出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』など。