有馬記念当日の中山競馬場内を歩き回っていると、「中山競馬場グルメグランプリ2019」の文字が目に飛び込んできた。これは見逃せない。期待と興奮を抑えつつ行列のできる和食屋に並ぶことにした。そのメニューとはなんと、刺身定食だった!

  • 中山競馬場

    白熱したレースが展開中の中山競馬場

行列ができていたお店は、和食「寿美家」。店頭のPOPによれば、同店の「刺身定食」(1,370円)が「中山競馬場グルメグランプリ2019」で総合1位を獲得したらしい。これこそ、まさにグランプリ当日に食すのにふさわしいグルメだ。

  • 和食「寿美家」

    行列ができていた和食「寿美家」

しばらくすると、自分の順番が回ってきた。このお店、入り口で事前に食券を購入するシステムのようだ。もちろん、オーダーは「刺身定食」一択である。席に通されると、テーブルの上に気になるPOPを発見した。

  • 和食「寿美家」

    バリキング? これはなんだろう?

「馬力」+「キング」(王)とはまたすごいネーミングだが、「馬力をつけてもう一勝負!」の文字にとてもひかれる。ということで、追加でオーダーしてみることにした。

待っている間に調べてみたところ、「バリキング」はサッポロが作っているリキュールで、生姜、高麗人参、山椒の植物エキス配合によるかすかな苦味が特徴らしい。そう聞くと、なんだか体にも良さそうな気がしてきた。

  • バリキング

    バリキングの文字と蹄鉄のイラストがいい感じのグラスで運ばれてきた「バリキング」(500円)。見た目はハイボールっぽいが…

運ばれてきた「バリキング」をすぐさま口に含んでみたが、苦味はあまり感じられない。もちろん、個人差はあるのだろうが、そんなにクセもなさそうなので、中山競馬場を訪れた際にはぜひ試してみてもらいたい。

そうこうしていると、「刺身定食」が到着した。

  • 「寿美家」の「刺身定食」

    新鮮な魚介をたっぷり使った「刺身定食」。まさか、競馬場でこんなグルメに出会えるとは思ってもみなかった

まるで宝石のように輝くマグロ、ホッキ貝、イカ、エビ、ホタテ、サーモンを前に、食欲を抑えることができない。さっそくいただくことにした。

  • 「寿美家」の「刺身定食」

    ホタテの刺身も、見るからに新鮮でプリプリとしている。食べてみると甘くてとてもおいしい

  • 「寿美家」の「刺身定食」

    箸を持つ手が止まらず、あっという間に完食。ごちそうさまでした!

実食を終えたところで、寿美家の3代目店主である石井さんに話を聞いてみることにした。

――中山競馬場では、どれくらい営業されているんですか?

「80年以上は営業していると思いますよ。もともと、京成中山に本店(寿司屋)があって、船橋競馬場にも出店しています。ただ、船橋競馬場では生ものではなくて、焼き肉やトンカツなどの焼き物になっちゃいますけどね」

――なるほど。では、こちらで使われているのは、本店と同じものなんですか?

「そうですね。ネタは毎週、船橋市場から仕入れています」

――「刺身定食」で使われるネタは固定なんですか? それとも、季節や仕入れ状況によって、変化するんでしょうか?

「種類は臨機応変ですね。例えば、ホタテなんかは今日、たまたまいいのが手に入ったので使いましたが、ほかの貝類が入っている場合もあります。それと、お客様が食べられないものがある場合は、事前にお伝えいただければネタを変えて提供しています」

――そんな融通まで利かせてくれるんですね。お店の1番人気はやっぱり「刺身定食」なんですか?

「そんなこともないですね。値段的にも手ごろな『寿司・かき揚げ丼セット』(980円)の方が出ているんじゃないでしょうか。これもグルメグランプリで上位でしたし、『もつ煮込み定食』(900円)も2016年にグルメグランプリで1位になった人気メニューです」

――グルメグランプリ上位の常連店なんですね。あと、追加でオーダーした「バリキング」ですが、こちらはよく出るんですか?

「好きな方はずっと飲まれていますが、1杯飲んでビールに戻る方もいらっしゃいます。薬草的なものがあるので、これはもう好き好きですね」

――お忙しいところ、ありがとうございました。

アーモンドアイの参戦で、注目度も急上昇

そして、いよいよ本日のメインレース「第64回有馬記念」の発走時刻が近づいてきた。

主役は、本連載第10回でお届けした「第160回天皇賞・秋」を完勝し、現役最強馬と目されるアーモンドアイだ。当初は香港国際競走への出走を表明していたが、熱発によって回避。有馬記念に電撃参戦を果たした。G1馬がそろう豪華メンバーと競うことになった今回も、アーモンドアイは単勝1.5倍という圧倒的な支持を集めた。

  • 中山競馬場

    ファンファーレが鳴り響くと、観客が一体となって歓声を上げる姿はもはや風物詩だ

レースはというと、逃げると思われたキセキが出遅れる中、好スタートを決めたアエロリットが先頭を奪い、1周目のスタンド前へ。外めに付けたアーモンドアイは少し掛かり気味になるも、鞍上のルメールが上手くなだめて折り合いはついているように見えた。

  • 中山競馬場

    スワーヴリチャードを眺める形で、外めを追走するアーモンドアイ。その内側では2番人気のリスグラシューが脚を溜めている

1,000mを58秒5というハイペースでレースが進む中、2周目の3コーナーを過ぎて、一気に状況は動く。4コーナーを回るところで、2番手につけていたスティッフェリオが先頭を行くアエロリットをかわすと、後続各馬も進出を開始。アーモンドアイは3、4番手の好位で4コーナーを通過し、「さあ、ここから突き抜けるか!」と思われたが、伸び脚を欠く思わぬ姿に悲鳴にも似た歓声が響きわたる。

変わって先頭に立ったのは、3番人気のサートゥルナーリア。しかし、その背後からものすごい豪脚で前へと迫ったリスグラシューが、残り200mを切って先頭に躍り出る。あとは、突き放すだけの一方的な展開となった。ゴール直前では、勝利を確信したダミアン・レーンがガッツポーズ。最終的にリスグラシューは、2着のサートゥルナーリアに5馬身差を付ける圧勝劇を演じた。アーモンドアイはよもやの9着に敗れた。

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    圧勝で有馬記念を制し、有終の美を飾ったリスグラシュー

  • 中山競馬場

    口取りでリスグラシューをねぎらうレーン

人気上は2番人気、3番人気、4番人気で決着したにもかかわらず、圧倒的支持を集めたアーモンドアイが大敗したことで、3連単5万7,860円という思わぬ高配当がついた「第64回有馬記念」。あらためて、競馬に絶対はないと思い知らされる結果だった。

競馬場内でも新鮮な魚介を食べることができるという思わぬ収穫を得た今回。競馬場にはまだまだ、実力を備えるグルメが隠れているものとみて間違いない。週末は競馬場を訪れて、競馬場グルメ道を邁進してみるのもいいかもしれない。

著者情報:安藤康之(アンドウ・ヤスユキ)

フリーライター/フォトグラファー。編集プロダクション、出版社勤務を経て2018年よりフリーでの活動を開始。クルマやバイク、競馬やグルメなどジャンルを問わず活動中。twitter:@andYSYK。