元国税局職員 さんきゅう倉田です。好きな生き物は「高額納税者」です。

『シン・ゴジラ』(総監督・脚本:庵野秀明)が地上波で放送され、ツイッターでは放送前からトレンド入り。ジブリなどの話題の作品が放送中にトレンド入りすることはありますが、放送前にトレンド入りするのは珍しい。今回は、ゴジラの進攻によって被害に遭われた方のための税金の特例をお知らせします。

ゴジラの進攻によって被害に遭われた方のための税金の特例を紹介

確定申告で所得を控除する「雑損控除」

確定申告書に雑損控除に関する事項を記載し、ゴジラの被害に関連した支出の領収証を添付すると、所得税の還付を受けることができます。確定申告には勤務先の会社から発行された源泉徴収票も必要です。控除できる金額は、次のうち金額の大きい方です。

(ゴジラによる損失)-所得×10%
(ゴジラが壊した家の除去費用)-5万円

雑損控除は、生活に通常必要でない資産の被害には適用できません。別荘や競走馬、ミニラ、モスラ、メカゴジラ、キングギドラ、30万円を超える貴金属、書画、骨とう、美術品などのいわゆる贅沢品は、ゴジラに壊されても所得税の還付を受けることができないのです。保険金で補填された金額は、損失から除かれますので、被害額が全て保険金でまかなわれた場合も、還付を受けられません。

また、「災害減免法による所得税の免除」という制度もあります。ゴジラによって受けた住宅や家財の損害が、住宅や家財の時価の2分の1以上で、かつ、ゴジラが来た年の所得が1,000万円以下なら所得税が減額されます。所得が500万円以下なら免除されます。つまり、ゴジラに進攻されて被害がたくさんあれば、雑損控除と同じように所得税が還付になります。

適用には、確定申告書にゴジラによる被害の状況及び損害を記載します。なお、雑損控除との併用はできません。還付金額の大きい方を選んで使ってください。やり方が分からなければ、最寄りの税務署で教えてくれますし、電話で聞くこともできます。

災害時の税金特例

他にも、災害時には様々な税金の特例があります。

■申告などの期限の延長
所得税の確定申告、納税が期限までにできないときは、その期限を延長することができます。国税庁が猶予する地域を指定しますが、自分で猶予を申請することもできます。申告や納税の期限が過ぎると、延滞税という利息が発生してしまいます。期限を過ぎた後でも猶予を申請できますので、被害の状況が落ち着いてから、最寄りの税務署に行って相談してください。

■法人税の還付
法人税にも災害で損失があれば、還付を受けられる場合があります。災害のあった日から遡って、法人税の還付を請求できます。国に納める法人税だけでなく、地方自治体に納める地方法人税も還付が受けられる場合があるので、確認してみてください。

■印紙税の非課税
一般の方はなじみがないかもしれませんが、不動産の譲渡や建設工事の請負に関する契約書を書くと、印紙税がかかります。54,000円以上の飲食や物を買ったときに、レシートに貼られているのが印紙です。貼ることで印紙税の納付が完了するのですが、契約書を書いたときにも、印紙を貼る必要があります。災害に遭うと、土地や建物を売買し、新たに建物を建ててもらう契約を結ぶかもしれません。5,000万円の建物だと1万円の印紙税を契約書に貼らなければいけませんが、それが免除になります。

■自動車重量税の還付
車を所有している方向けの還付もあります。自然災害により被害を受けて廃車となった自動車は、運輸支局において手続きを行うと、自動車重量税の還付を受けることができます。

このように、一般的に知られていない税金の特例や制度はたくさんあります。雑損控除は、災害だけでなく盗難や横領にも適用できますので、該当しそうであれば、確定申告のときに税務署で確認してみてください。

災害への備えとして、防災グッズや避難経路、家族の集合場所などを準備している方は多いと思います。しかし、いざ生活が安定してくると、金銭的な負担に不安を感じるかもしれません。そんなときの備えに、災害に関する税金の制度を覚えておいて、ご家族や知人と共有していただきたいと思います。

執筆者プロフィール : さんきゅう倉田

芸人、ファイナンシャルプランナー。2007年、国税専門官試験に合格し東京国税局に入庁。100社以上の法人の税務調査を行ったのち、よしもとクリエイティブ・エージェンシーに。ツイッターは こちら