元国税局職員 さんきゅう倉田です。好きな観光地は「タックス・ヘイブン」です。

京都市で宿泊税が導入されるという報道がありました。ホテルや旅館に泊まると、税金が徴収されることになります。外国人観光客が増えたため、観光案内や観光地トイレの整備に充てたり、文化財保護や歴史的景観の保全、快適な歩行空間の創出に使ったりするようです。

実は、京都市で宿泊税の導入が決まる前から、東京と大阪では宿泊税が導入されていました。

東京の宿泊税

大阪の宿泊税

主に宿泊料金に含まれるものは、

・素泊まりの料金
・素泊まりの料金にかかるサービス料

主に宿泊料金に含まれないものは、

・消費税
・食事、会議室の利用、電話代といったサービス料金

となっています。このような、宿泊税が京都市でも、来年10月から導入されます。

京都の宿泊税

もちろん、ラブホテルにも課税されますので、2人で2万円以上の部屋に宿泊すると、200円徴収されます。休憩の場合は、徴収されません。あなたが利用したラブホテルがいいかげんなラブホテルなら、宿泊しても徴収されないかもしれません。

ラブホテルと税務調査

ラブホテルといえば、脱税の多い業種とされています。方法としては、日常的に売上を除外することが多いように思います。

例えば、1日の売上の半分を隠すとします。ラブホテルは、レシートを出すことが少ないので証拠書類が残らず(個人的に行ったことがないので、レシートを確認したことがありませんが、発行されないと聞いています。正否は読者の経験に委ねます)、容易に売上を除外することができます。

しかし、売上を除外すると、売上に対する経費の割合が増えてしまいます。売上に対して2割の経費だったのが、4割とか5割になります。こうなると、毎年税務署や国税局に提出される確定申告書を見るだけで、売上を除外していることが分かるわけです。

なぜかというと、同業他社と比べて、圧倒的に経費が多いからです。日本中のラブホテルが売上を抜いていれば、同業他社と同じ基準になるので、確定申告書を見ても違和感はありません。

しかし、自分が経営する以外のラブホテルが、売上を除外しているか分かりません。売上は隠したいが、目立ちたくない。そう考えた経営者は、どうするか。経費も除外します。そうすると、利益率が極端に悪くなることがありません。単純に、客があまり入っていないように偽装するのです。脱税する人たちも、いろいろと考えているわけです。

そうなると、税務調査によって帳簿書類を確認するだけでは、正しい売上が分かりません。そこで、「内観調査」や「反面調査」というものを行います。内観調査は、事前にこっそりラブホテルを利用して、会計方法や従業員の数、出入り業者、空室率など可能な限り情報を集める調査です。

部屋の中に、アダルトグッズの自動販売機(そういうものがあると聞いていますが、行ったことがないので伝聞です)があれば、購入します。もちろん、個人的に楽しむためではなく、グッズの売上だけを除外する可能性があるので、その確認のために購入します。

反面調査は、ラブホテルの取引先に調査を行うことです。売上とともに除外された経費を、取引先の記録と照合して、正しいか否かを判断します。ラブホテルの取引先といえば、リネンのクリーニングを行う業者でしょうか。クリーニングしたシーツの枚数から、おおよその客数を割り出すことができます。このように、どんなに仮装・隠匿を行っても、国税局の台所の汚れよりしつこい調査で、不正は明らかになります。

まだマイナーな税金である「宿泊税」。もし、あなたがラブホテルを利用したときに徴収されていなかったら、そのラブホテルは、税に関してイージーに考えている業者が運営しているのかもしれません。

執筆者プロフィール : さんきゅう倉田

芸人、ファイナンシャルプランナー。2007年、国税専門官試験に合格し東京国税局に入庁。100社以上の法人の税務調査を行ったのち、よしもとクリエイティブ・エージェンシーに。ツイッターは こちら