元国税局職員 さんきゅう倉田です。将来やりたいことは「最高裁判所長官の任命」です。敷金返還請求の裁判をしました。裁判の内容はこちら

最終回の今回は、裁判の手続きについて解説します。一人で裁判を行うに当たって、訴訟手続きに関する本を5冊読みました。しかし、実際に役立ったのはそのうちの20%程度。どのような流れで手続きをして何に注意すべきなのかは、どの本にも載っていませんでした。

この記事では、ぼくの体験談に基づいて、裁判と縁のない一般の方でも容易にできる手続きの方法を紹介します。

少額裁判の具体的な手続方法を紹介

6月にマンションを退去し、7月末に、ルームクリーニング費用の見積書と敷金返還の書類が大家さんから届きました。大家さんに電話をし、ルームクリーニング費用の金額の根拠を尋ねましたが、あらかじめ定められた恣意的な金額だったので、裁判所の判断を仰ぐことにしました。60万円以下の金額を争う場合は、『少額訴訟』という一日で裁判が終わる制度があります。手続きと裁判当日の2回裁判所に行けば終了するお手軽裁判です。

8月上旬、東京簡易裁判所(民事)に行きました。入り口で空港のような手荷物検査を受けて中に入り、受付で少額訴訟をしたい旨を伝えます。1階に無料の相談所があり、そこに行くように促されました。30メートルほど移動し、相談所で受付用紙を記入、1分も待たずに番号を呼ばれます。60歳くらいのよくしゃべるおじさんが対応してくれました。ここでは、訴状と証拠書類(賃貸借契約書など)を確認してもらうようです。ぼくは裁判所のホームページで調べて訴状は用意していましたが、通常はここで書き方を教えてもらえます。

訴状には、裁判の理由や住所、利息などを書きます。裁判でお金の請求をして判決が出ると、利息がもらえます。その利息を年利何%にするかは原告が決められるので、ぼくは法定金利の上限20%に設定しました。しかし、利息は5%にするように指示されます。20%の利息は貸付金の場合であって、敷金の返還請求では、5%が上限になるそうです。

訴状の確認が終わると、被告の不動産会社は法人なので、法務局に行って「登記簿謄本」を取ってくるようにいわれます。書類名でいうと、「履歴事項全部証明所」、登記簿謄本は通称です。霞が関から九段下へ移動して、九段下の駅から5分ほど歩き、端末で頂戴したい書類を選び、横のパチンコ屋の交換所みたいな窓口で600円の印紙を買って受付に持っていくと、10分ほどで発行してくれます。法務局には、スタッフの女性がノコノコのようにうろうろしていて、分からなければ無限に尋ねることができます。

履歴事項全部証明所をもらったら、2枚コピーし、霞が関へ戻ります。もう一度、1階の相談所に行き、さっきのおじさんに書き直した訴状と履歴事項全部証明所を見せて、書類を整理します。郵便切手が必要とのことなので、裁判所の地下のファミリーマートに行き、5,800円分の切手のセットを買います。そのあと、いよいよ訴状の提出のために6階に行きます。

6階には少額訴訟の部屋があり、訴訟をする理由を確認され、被告に間違いがないかも尋ねられます。訴状や証拠書類の確認が終わり、足りなかった証拠書類の提出を郵送で行うよう指示され、和解をする意思を確認されると、帰ることができます。法務局に行っていた時間を含めると、所要時間は3時間でした。

2週間後、裁判所から電話がありました。訴状の提出のときに聞かれたことを再び聞かれ、和解を勧められます。和解にした場合の、デメリットは何も説明してくれません。信義則に反しています。そして、裁判の日をすり合わせます。この日は8月末でしたが、敷金返還請求は人気なので、最短でも10月の2週目の金曜日しか空いていないといわれました。担当の人の裁判の日は、隔週の火曜と毎週金曜日と決まっていて、裁判の日は限られてしまうそうです。

後日郵送で『期日呼出状』が届きます。「この日に裁判に来なさい」の書類です。さらに、裁判前日に、被告の書いた『答弁書』が届きました。「原告の主張に納得がいきません。理由は○○です」の書類です。本来であれば、もっと早く届くはずですが、被告がぎりぎりまで提出しなかったようです。ぼくは、前日にポストを見ていなかったので、被告の言い分が分からないまま裁判に臨むことになってしまいました。

裁判の内容は、前回までの記事を見ていただいて、判決をもらったあとにやるべきことについて。

裁判が終わって、10日ほどたっても、被告から敷金返還についての連絡はありませんでした。連絡をもらってから、掛かった訴訟費用と振り込み用の銀行口座を伝えると、お金をもらえるのがどんどん遅くなってしまいます。そこで、こちらから郵便を送りました。そこには、「判決で出た返還されるべき敷金の金額3万5,000円、訴訟費用(切手代と印紙代)の10分の7、利息を10月31日までに振り込むこと。振り込まない場合は、法律に反しないことを確認した上で社名をSNSに公表します」と記載しました。2日後、すぐに電話があり、10月31日に振り込むと連絡がありました。

法人なので、振り込むには社内の稟議や決裁があると思うのですが、あっという間に手続きをしてくれたようです。相手の行動を待たず、自分から動くことが大事です。被告は、ビジネス上のパートナーでも、友達でもありません。不当なルームクリーニング費用を請求してくる敵です。断固たる決意で、行動しましょう。

裁判当日は、1時間ほどで終わりましたので、手続きを含めて所要時間は4時間です。みなさんも、敷金から差し引かれる金額と4時間を天秤にかけて、裁判をしてみてはいかがでしょうか。

執筆者プロフィール : さんきゅう倉田

芸人、ファイナンシャルプランナー。2007年、国税専門官試験に合格し東京国税局に入庁。100社以上の法人の税務調査を行ったのち、よしもとクリエイティブ・エージェンシーに。ツイッターは こちら