今年の新NISAの投資枠が100万円余っている場合、100万円を一括投資するか、数回に分けて投資するか、迷う人もいると思います。

株価が上がるなら、一括投資のほうが有利に思えますが、100万円を投資した直後に株価が大きく下がれば、「分けて投資すればよかった」と後悔することもあるでしょう。

そこで今回、全世界株式の代表的な指数「MSCI ACWI」の過去データを使って、100万円を一括投資した場合と積立投資した場合で、どちらが有利だったのかを検証してみます。

新NISAは年間で最大360万円まで投資できる

新NISAでは、18歳以上の場合、年間に投資できる金額は「つみたて投資枠」が120万円、「成長投資枠」が240万円で、合わせて最大360万円です。また、非課税保有限度額は生涯で1,800万円、そのうち成長投資枠で利用できるのは1,200万円までとなっています。

なお、その年に使い切れなかった年間投資枠を翌年に持ち越すことはできません。

SNSなどでは、「1,800万円の非課税枠をできるだけ早く埋めたほうが有利」といった話を目にすることがあります。年間360万円ずつ投資すれば、最短5年で1,800万円の非課税保有限度額に達します。

ただ、その最短5年にこだわり、無理に投資額を増やした結果、日々の生活費や急な出費に使えるお金が不足し、いわゆる「NISA貧乏」になってしまっては本末転倒です。

年間360万円という金額は、あくまで制度上の上限です。まずは家計の収支や今後必要になるお金を確認し、無理なく投資に回せる金額を決めることが優先です。

投資枠が余っていても、無理に使い切る必要はありません。そのうえで、すぐに使う予定のない余裕資金があるなら、次に考えたいのが「一括投資」と「積立投資」のどちらを選ぶかです。

一括投資と積立投資、どちらが有利?

たとえば、100万円を9月に一括投資した場合と、9月から12月まで25万円ずつ4回に分けて積立投資した場合で、12月末の資産額を比較してみましょう。

ここでは、投資した資産が年率5%で一定のペースで値上がりすると仮定して試算します。

<一括投資>
9月に100万円を投資
12月末の資産額: 約101万6,800円

<積立投資>
9~12月に25万円ずつ4回投資
12月末の資産額: 約101万500円

差: 約6,300円

このケースでは一括投資のほうが有利になります。その理由は100万円全額を早い段階から運用できるためです。株価が一定のペースで上昇するのであれば、早く資金を市場に投入するほど、運用期間が長くなり、その分リターンも大きくなります。

しかし、実際の相場は一定ではありません。大きく上昇することもあれば、投資した直後に大きく下落することもあります。

たとえば、100万円を一括投資した直後に株価が20%下落すれば、評価額は80万円になります。一方、25万円ずつ投資している途中で株価が下落した場合、その後の投資分は値下がりした価格で購入できます。そのため、値下がりのタイミングによっては積立投資のほうが有利になることもあります。つまり、どちらが有利になるかは、その後の相場の動きによって変わります。

整理すると、一括投資は「期待できるリターンを高める方法」、積立投資は「投資するタイミングによるリスクを抑える方法」と考えるとわかりやすいでしょう。

全世界株式の過去10年ではどちらが有利だった?

では、実際の相場では、一括投資と積立投資のどちらが有利だったのでしょうか。全世界株式の値動きを示す「MSCI ACWI」の過去10年間(2016~2025年)の円ベース・配当込み指数を使って試算してみましょう。 比較するのは次の2つです。

  • 一括投資: 年初に100万円をまとめて投資
  • 積立投資: 100万円を12等分し、毎月約8万3,333円ずつ投資

それぞれ12月末時点の評価額を比較しました。

一括投資と積立投資の12月末時点の評価額を比較

  • 一括投資と積立投資の12月末時点の評価額を比較 出所: MSCI ACWI(円ベース・グロスリターン)の月末指数値をもとに筆者試算。手数料等は考慮していません。

    一括投資と積立投資の12月末時点の評価額を比較 出所: MSCI ACWI(円ベース・グロスリターン)の月末指数値をもとに筆者試算。手数料等は考慮していません。

結果は、一括投資6勝、積立投資4勝です。

2016~2025年の10年間では、10年のうち6年で一括投資のほうが年末時点の評価額が高くなっています。

なぜ一括投資のほうが有利になりやすい?

米運用大手Vanguardの研究では、一括投資は、資金を数回に分けて投資する方法と比べて、歴史的におよそ3分の2のケースで上回ったとされています。

その理由はシンプルです。株式市場は短期的には上昇と下落を繰り返しますが、長期的には上昇してきたため、より早く資金を市場に投入する一括投資のほうが、値上がりの恩恵を受けやすくなります。

反対に、資金を数回に分けて投資すると、まだ投資していない資金は現金のまま待機することになります。その間に株価が上昇すれば、その値上がり分を取り逃すことになります。

ただし、一括投資には、投資した直後に相場が大きく下落するリスクもあります。損をすることへの不安が強い人にとっては、数回に分けて投資する方法が心理的に有効な場合もあります。

積立投資が勝つ年の相場の動きは?

MSCI ACWIの過去10年間では、10年のうち4年で積立投資のほうが有利になりました。

たとえば2020年は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、3月に世界の株式市場が急落しました。1月から毎月一定額を積み立てていた場合、株価が下落した局面でも投資を続けるため、安くなったところでより多く買うことができます。その後、株価が大きく回復したことで、年末時点では積立投資の評価額が一括投資を上回りました。

このように、投資期間の途中で株価が大きく下落し、その後回復するような相場では、積立投資が有利になることがあります。

そのため、単純に「上昇した年なら一括投資、下落した年なら積立投資」とはなりません。投資した後に株価がどのような経路をたどったかによって、一括投資と積立投資のどちらが有利になるかは変わります。

100万円あるなら一括投資が正解?

今回の結果だけを見れば、一括投資のほうが有利だった年が多く、期待できるリターンを重視するなら、すでに投資に回せる100万円がある場合は、早めに投資するほうが合理的といえます。

ただし、投資スタイルは人それぞれです。投資するタイミングを分散し、値下がりしたときの心理的な負担を抑えたい人にとっては積立投資が向いているでしょう。

今回の試算でも、一括投資が有利だったのは10年のうち6年で、残りの4年は積立投資が上回っています。一括投資のほうが有利になりやすい傾向はあるものの、いつでも一括投資が正解というわけではありません。

一括投資と積立投資のどちらを選ぶか以上に重要なのは、相場が下落しても投資をやめず、長期で運用を続けることです。Vanguardの研究でも、長期の運用期間全体で見れば、一括投資と積立投資による結果の差は相対的に小さくなるとしています。

期待できるリターンを重視するのか、投資直後の値下がりによる心理的な負担を抑えたいのかを考え、自分が無理なく続けられる方法を選ぶとよいでしょう。