元国税局職員 さんきゅう倉田です。好きな日曜日の過ごし方は、「領収証の整理」です。

会社員やパート・アルバイトの方は、ほとんど確定申告をしないと思います。しかし、出産のときや家を買ったときには確定申告をしなければいけない、と聞いたことがあるのではないでしょうか。今回は、なぜ、出産や家の購入で確定申告をしなければいけないのか、他には、どんなときに確定申告が必要なのかを解説します。

  • 「確定申告が必要なとき~」「確定申告が必要なとき~」

なぜ確定申告が必要なのか

そもそも、日本は「申告納税制度」を採用しています。「国民が自分で、自分の収入と経費を差し引きして、納税額を計算してね」という制度です。でも、ほとんどの方が収入と経費を差し引きして納税額を計算する作業、つまり、確定申告をしていません。それはなぜかというと、あなたの勤務先があなたの代わりに、納税額を国や地方自治体に申告してくれているのです。

他人の確定申告を代わりにやることはできませんので、勤務先はあなたの確定申告をしているわけではありませんが、収入を申告して、所得税の納付までやってくれています。だから、あなたは煩わしい確定申告をする必要がない。それでも、会社員が確定申告をしなければいけない場合がいくつかあって、それが出産とか家の購入とかそれ以外の何かなのです。

では、確定申告が必要なのはどんな場合なのかというと、こんな場合。 (※会社員の方やパート・アルバイト向けに書いています。個人事業者の方は条件が異なる場合があります。また、退職金については割愛しています)

1. 年収が2,000万円を超えた

お金持ちは確定申告が必要です。あなたの上司が毎年確定申告をしているのなら、年収が2,000万円を超えている可能性があります。

2. 1カ所から給与をもらっていて、それ以外の所得が20万円を超えた

勤務先からもらう給与以外に所得があって、それが年間で20万円を超えると確定申告が必要です。所得は、会社員の方にはなじみがないかもしれませんが、収入から経費を引いたものです。

給与以外の所得は、経費が認められる場合があるので、年間で20万円以上の収入があっても、経費があるなら、所得は20万円を超えないかもしれません。年末に勤務先からもらう給与以外の収入とその経費を合計してみましょう。

3. 2カ所以上から給与をもらっていて、メインの勤務先以外からもらっている給与+それ以外の所得が20万円を超えた

例外的に、2つ以上の勤務先の給与の合計から、社会保険料控除や生命保険料控除、扶養控除、配偶者控除などを引いた残りが150万円以下で、それ以外の所得も20万円以下の人は、確定申告の必要はありません。

4. 勤務先が年末調整をしてくれたあとで、12月31日までに結婚した

勤務先は、11月、遅くても12月中に年末調整をします。そのあとで、結婚すると、配偶者控除が間に合わない。その場合、確定申告をすると、所得税が還付になります。

5. 勤務先が年末調整をしてくれたあとで、12月31日までに生命保険料を支払った

勤務先は、11月、遅くても12月中に年末調整をします。そのあとで、生命保険に入ると、生命保険料控除が間に合わない。その場合、確定申告をすると、所得税が還付になります。

6. 家族の医療費が、年間で10万円以上になった

1月から12月までの医療費が10万円以上になると、所得税が還付になります。出産をすると、出産育児一時金42万円を差し引いても10万円以上の支払いがあるので、確定申告をすることで所得税が還付になります。といっても、医療費がそのまま還付になるわけではありません。5%とか10%とか23%とか、あなたの所得税率によって還付額は異なります。

他にも、出産に伴う費用で、妊娠と診断されてからの定期検診や検査費用、通院費用も医療費控除の対象になります。

  • 出産に伴う費用も一部対象に

7. ふるさと納税を大量にした

2,000円を負担すれば、ふるさと納税をした金額がほぼ返ってきて、御礼の品ももらえる素敵な制度。6カ所以上の自治体に行った場合は、確定申告が必要です。5カ所までなら確定申告不要です。

8. 家を買い、住宅ローンを組んで、「住宅借入金等特別控除」を受けたい

住宅ローン残高の1%が還付になる悪魔的還付制度です。一度確定申告をすると、10年くらい適用されます。

これ以外にもありますが、主なものは以上です。該当したら、確定申告をしてください。「確定申告」と検索して国税庁のホームページから行うか、税務署に行きましょう。2月16日~3月15日が確定申告期間です。

さんきゅう倉田

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さんきゅう倉田

さんきゅう倉田

芸人、ファイナンシャルプランナー。2007年、国税専門官試験に合格し東京国税局に入庁。100社以上の法人の税務調査を行ったのち、よしもとクリエイティブ・エージェンシーに。ツイッターは こちら