元国税局職員 さんきゅう倉田です。好きな自治体は「村」です。

新社会人の方も、そろそろ仕事が落ち着いてきて、副業をする余裕ができたのではないでしょうか。

政府は、副業・兼業を勧めています。働き方改革によって、より多様な方法で収入を得られるようになりました。また、知人の国立大学の系列病院では、ことし4月から前残業が禁止になったそうです。

その病院に勤務する看護師さんたちは、毎日勤務時間より1時間早く来ていました。早く出勤し、その日に担当する患者の容態をチェックしていましたが、すべて勤務時間中に行うように変更され、サービス残業は撲滅されました。

本来であれば、勤務時間中に行って当然の作業ですが、悪しき伝統として無給で働くことが一般化されていたのです。しかし、行政の指導により、労働環境が改善され、より働きやすくなりました。自分の時間も増えるので、副業しやすい環境に近づいたといえます(残念なことに、彼らは公務員なので、副業は禁止されていますが)。

副業バレるかバレないか問題

ぼくは、催している税金教室などで、“副業がバレるかバレないか”について話すことがあります。以前にもこの連載で書きましたが、副業がバレるのは、ほとんどの場合、タレコミか住民税の金額が変わったためです。タレコミであれば、通報者に証拠を示されると言い逃れができないかもしれません。あとは、あなたの口八丁手八丁でなんとかしていただくしかない。

では、住民税の金額が変わった場合は、どうでしょう。まず、新社会人は、その多くが給与から住民税が天引きされていません。だから、そもそも何のことかわからないと思います。ただ、所得税は天引きされていますよね。所得税も住民税も、あなたの所得(平たくいうと、給与から控除などを引いたもの)にかかる税金です。

所得税は国、住民税は地方自治体からかけられているという違いがあります。さらに、所得税はその月のお給料の金額によって決まりますが、住民税は前の年の所得によって決定されます。だから、前の年の所得が少ない場合、住民税がかかりません。

いままで、月数万円のアルバイトしかしていなかった新社会人は、住民税がお給料から天引きされないのです。

そして、来年になると、地方自治体からあなたの勤務先に住民税の“決定通知書”が届き、給与から天引きすべき住民税が通知されます。すると、毎月のお給料か住民税から天引きされるようになります。

このとき、副業をしている人は、同じ給料の同僚と比べて住民税が多かったり、少なかったりします。すると、勤務先は、「あれ?他にも収入があるな」と気づきます。これがいわゆる、“副業がバレる”理由です。

副業がバレたときに言い訳

そこで、ぼくは考えました。副業以外で、勤務先から禁止されていない収入があると主張すれば良いのではないか。

例えば、競馬や競輪で大きく利益を出したとか、仮想通貨で利益を出したとか、クイズの大会で優勝して賞金をもらったとか、親から相続した不動産を賃貸していて収入があるとか、勤務先の上司や総務が禁止できない、あるいは、禁止しづらい収入です。

ずっとそのように、思っていました。税理士の先生にも何度もこの話をして、とくに問題ないと考えていました。しかし、Twitterで新たな情報をいただき、場合によっては、この方法が使えないことがわかりました。

というのは、自治体から送られる住民税の“決定通知書”(特別徴収税額の決定・変更通知書という名称です)には、所得区分が書かれていて、それを勤務先が確認できる場合とできない場合があるようなのです。

次回は、勤務先が確認できる場合とできない場合、副業に関する所得区分と住民税の決定通知書、自治体の秘匿措置と普通徴収・特別徴収について解説します。

さんきゅう倉田

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さんきゅう倉田

さんきゅう倉田

芸人、ファイナンシャルプランナー。2007年、国税専門官試験に合格し東京国税局に入庁。100社以上の法人の税務調査を行ったのち、よしもとクリエイティブ・エージェンシーに。ツイッターは こちら