「1億円なんて、どこかの富裕層の話」「普通のサラリーマンが1億円貯めるなんて無理……」

そんなふうに思っていませんか?

しかし、時間をかけてコツコツと積み立て、運用を続ければ、1億円は必ずしも手の届かない金額ではありません。

そこで今回は、新NISAを活用して毎月10万円を積み立てた場合、資産1億円に到達するまでに何年かかるのかを試算してみました。

月10万円なら15年で非課税保有限度額を使い切る

新NISAでは、年間に投資できる金額は「つみたて投資枠」が120万円、「成長投資枠」が240万円で、合わせて360万円です。月10万円を積み立てる場合、年間120万円となるため、ちょうど「つみたて投資枠」を使い切ることになります。

このペースで積み立てを続けると、生涯の非課税保有限度額である1,800万円には15年で達します。

ここで注意したいのは、1,800万円という上限は、時価ではなく「取得価額(簿価)」で管理されることです。そのため、1,800万円で購入した資産が運用によって3,000万円に増えたとしても、保有している資産を売却しない限り、増えた部分も非課税のまま運用を続けられます。

一方、1,800万円の非課税保有限度額を使い切った後も、新たに月10万円の積み立てを続けるのであれば、その後は課税口座を利用することになります。

今回の目標は「資産1億円」です。そこで、新NISAの非課税保有限度額を使い切った後も、課税口座で月10万円の積み立てを続けた場合、1億円に到達するまでにどのくらいかかるのかを見てみましょう。

月10万円で1億円まで何年かかる?

では、月10万円の積み立てを続けた場合、資産1億円に到達するまでに何年かかるのか試算してみましょう。

<試算条件>

  • 毎月10万円を積み立て
  • 最初の15年間: NISAで積み立て(元本1,800万円)
  • 16年目以降: NISAの資産はそのまま運用し、月10万円を課税口座で積み立て
  • 課税口座: 運用益に20.315%課税
  • 「資産1億円」は、課税口座をすべて売却し、税金を差し引いた後の手取り資産額で判定

<想定利回りごとの1億円に達するまでの期間>

年率3%: 約43年0カ月
年率5%: 約33年10カ月
年率7%: 約28年4カ月

※毎月末に10万円を積み立て、一定の利回りで複利運用できたものとして試算。

年率5%で運用できた場合、1億円に到達するまでにかかる期間は約33年10カ月です。30歳から積み立てを始めたとすれば、64歳ごろには資産が1億円に達する計算になります。

月10万円の積み立てを長期間続けることができれば、1億円は必ずしも一部の富裕層だけが目指せる金額ではないことがわかります。

ここで注目したいのが、積み立てた元本と運用によって増えた金額の違いです。

月10万円積立・年率5%のケース

  • 月10万円積立・年率5%のケース(筆者試算)

    月10万円積立・年率5%のケース(筆者試算)

年率5%のケースでは、33年10カ月で積み立てる元本は4,060万円です。それに対して、NISAと課税口座を合わせた資産は税引前で約1億336万円まで増えます。

そのうち課税口座の運用益にかかる税金約292万円を差し引いても、手元に残る資産は約1億43万円です。

つまり、自分で積み立てたお金は4,060万円ですが、運用によって実質的に増えた金額は、税引後でも約5,983万円。1億円の資産のうち、およそ6割は長期間の運用によって増えた部分ということになります。

もちろん、実際の運用では毎年5%ずつ順調に資産が増えていくわけではありません。大きく上昇する年もあれば、20%、30%と下落する局面もあり、将来の運用成果が保証されているわけでもありません。

それでも、この試算からは、長期間にわたって積み立てと運用を続けることで、運用で増えたお金がさらに利益を生む「複利効果」が、資産形成に大きく影響することがわかります。

1億円あれば、運用益だけで生活できる?

資産が1億円に達すれば、年率5%で運用した場合、単純計算では年間500万円の運用益が期待できます。「年500万円あれば、元本を減らさずに生活できるのでは?」と思うかもしれません。

しかし、年率5%は毎年500万円を受け取れるという意味ではありません。株式市場は上昇と下落を繰り返すため、資産が大きく値下がりする年もあります。そのような年にも生活費が必要であれば、値下がりした資産を売却して取り崩さなければなりません。

そこで、資産の取り崩し方としてよく知られているのが「4%ルール」です。早期退職を目指す「FIRE」とともに紹介されることも多い考え方です。

4%ルールとは、退職した最初の年に資産の4%を取り崩し、翌年以降はその金額を物価上昇率に合わせて調整しながら取り崩していく方法です。

たとえば、1億円の資産があれば、初年度の取り崩し額は400万円です。翌年以降は基本的に400万円を基準として、物価の変化に合わせて取り崩し額を調整していきます。

ただし、4%ルールは「毎年4%の運用益で生活すれば元本が減らない」という考え方ではありません。米国の過去の株式・債券市場をもとに、一定の資産配分で取り崩した場合に、30年間にわたって資産を維持できる可能性を検証した研究をもとに広まった考え方です。

そのため、米国とは市場環境や税制、物価上昇率などが異なる日本で、そのまま当てはめられるとは限りません。また、もともと30年間の退職期間を想定した研究である点にも注意が必要です。

特に40代や50代でFIREする場合は、資産から生活費を取り崩す期間が30年を超える可能性があるので、「4%ルール」に従っていれば安全とはなりません。退職直後に大きな相場下落が起こるリスクや、想定以上のインフレ、医療・介護費などの支出も考えておく必要があります。

「1億円あればFIREできる」と金額だけで判断するのではなく、年間の生活費はいくらなのか、公的年金を受け取るまで何年あるのか、相場が大きく下落したときにも生活を維持できる余裕があるのかまで含めて考える必要があるでしょう。

1億円を「減らさない」ことにこだわる必要はない

「4%ルール」は、FIRE後の長い生活を資産で支える際の目安としてよく知られています。一方、今回の試算のように、30年、40年と時間をかけ、老後を迎えるころに1億円の資産を築いた場合は、4%ルールのような数字に縛られる必要はないでしょう。

老後には年金収入もあります。現役時代と比べて生活費が減る人もいるでしょう。一方、医療費や介護費などが増える可能性もあります。大切なのは、資産を減らさないことではなく、自分が残したいお金と、生きているうちに使いたいお金のバランスを考えることです。

せっかく1億円を築いても、ほとんど使わず、そのまま多額の資産を残すことになれば、「何のために資産を築いたのか」という話になります。旅行や趣味を楽しむ、住まいを快適にする、家族のために使うなど、1億円という資産は老後の選択肢を大きく広げてくれます。

そして今回の試算からわかるのは、1億円は必ずしも最初から多額の資産を持っている人だけが目指せる金額ではないということです。

月10万円でも、30年、40年という長い時間を味方につけて積み立てと運用を続ければ、複利の効果によって1億円に到達する可能性があります。

「1億円なんて自分には関係ない」と思っていた人にとって、時間をかければ手が届く可能性があると知ることは、これから資産形成を始める人の希望になるのではないでしょうか。