元国税局職員 さんきゅう倉田です。好きな徴収方法は「特別徴収」です。

前回前々回では、副業がバレた時の言い訳や所得区分、住民税の決定通知書を自治体がどのように扱っているかを解説しました。今回は、住民税の納め方である、特別徴収・普通徴収とあまり知られてない給与所得に関する住民税の納め方について解説します。

住民税の納税には、特別徴収と普通徴収がある

普通徴収にすれば、勤務先の給与から天引きされる住民税の金額は変わりません。同僚と同じ、勤務先から得た前年の所得から計算された金額となります。よって、副業が上司や総務にバレることはありません。

しかし、確定申告書上の選択で普通徴収が選べるのは、給与以外の所得の場合です。アクセサリーを作って販売しているとか、マンションの賃貸をしている場合には、普通徴収を選択できますが、勤務先以外から“給与”としてもらっている場合は、この方法で普通徴収を選択することができません。

どういう場合に給与に該当するかは、難しい問題です。例えば、一般的なアルバイトや勤務先から空間的・時間的拘束を受けている場合は、給与になると考えて良いと思います。また、給与明細が発行されているのなら、概ね、給与に該当すると考えて良いかもしれません。

副業でお給料をもらっている場合は、普通徴収を選択できないので、勤務先の住民税が変わるのは避けられない、なにか嘘をついて誤魔化すしかない、その嘘も決定通知書が圧着や保護されていなければバレてしまう、と考えていました。

しかし、総務省の資料に次のような記述を見つけ、考えが変わります。

副業等により2カ所以上で給与の払いを受けている納税義務者については、主たる給与支払者以外の事業所に係る個人住民税について申出により普通徴収することを運用上認めている。

納税義務者が 2 以上の事業者から給与所得を得ている場合、市町村の条例により、 特別徴収義務者を2 以上指定し、それぞれ特別徴収させることができる。

つまり、みなさんからの申し出があれば、副業の給与も普通徴収で納めることができる、また、本業の勤務先と別に副業の勤務先でも住民税を給与から天引きすることができるということです。ただ、この手続きについては、現時点で、ぼく個人で調べることができませんでした。きっと自治体に電話で確認すれば分かるのだと思います。気になる方は、みなさんのお住まいの自治体に、ご確認いただければと思います。

ぼくの方でも、Twitterで情報を集めるつもりです。自治体への電話が面倒な方は、そちらをチェックしていると、詳らかにされた手続きを知ることができるかもしれません。

今後の行政の対応

現状、国から市町村に対して、住民税の決定通知書を圧着や保護シールを用いるような秘匿措置を求めることは考えていないようです。すると、自治体ごとのモラルの向上があるか、多くの住民が希望しない限り、自主的な秘匿は行われません。

副業や兼業は勧めておいて、決定通知書の秘匿は何の理由もなく放置しています。これは由々しきことです。国から自治体に、秘匿措置を求めた上で、予算のない自治体は実施しないことを選んだり、国に補助を求めたりすべきで、何もしないのは怠慢でしかありません。

有事の際に、何かを尋ねれば「個人情報なのでお答えできません」と返答するのに、実際に「知られたくないのでなんとかして欲しい」と国民から自治体にクレームがあることを把握していても、ルールを作らないし、指導もしないというバランス感覚とモラルを欠いた状態です。

あなたがもし、副業禁止の会社に勤めており、それでも副業をしたいのなら、バレない方法やバレたときにどうするかをよく考えて、自分で措置を講じなければいけません。

さんきゅう倉田

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さんきゅう倉田

さんきゅう倉田

芸人、ファイナンシャルプランナー。2007年、国税専門官試験に合格し東京国税局に入庁。100社以上の法人の税務調査を行ったのち、よしもとクリエイティブ・エージェンシーに。ツイッターは こちら