今朝もそばを食べに出かけるぞと意気込んだ日に限って、寒い。しかも今日はちょっと考えられないくらい寒かった。風がゴウゴウと吹き、体感温度をどんどん下げていく。幼少の頃から寒い冬が苦手で、大人になってからはこの季節になると沖縄の物件情報を見て、叶わぬ移住計画に思いを馳せる。東京の最高気温が7度の今日、那覇では20度らしい。

  • 志村坂上「さかうえ」で注文したのは、おぼろ昆布がのった「おぼろそば」(写真:マイナビニュース)

    「おぼろそば」(360円)

向かったのは志村坂上駅。JR埼京線で板橋駅で下車、新板橋駅まで歩き、都営三田線に乗り換えて向かう。この地上移動も寒い。この付近の三田線は中山道の下を通っていて、A4番出口から出ると「城山通り」という道が交差している。今回の「さかうえ」はこの通り沿いにあり、徒歩3分程の距離である。

お品書きは王道からオリジナルメニューまで

扉のない、吹きさらしの立ち食いそば屋。短いのれんは店内外を概念として区切るだけの役割で、何からも守ってくれない。朝9時過ぎ、先客は1名。L字で5~6名がキャパの小さな店だ。ボウっと幽霊のようにのれんをくぐったからか、店主にすぐに気づかれないのはいつものことである。

注文は口頭にて。壁に短冊が並んでおり、たぬき、きつね、わかめ、天ぷら、コロッケなどのいつもの面々から、山菜や紅生姜、納豆、もずくといったスーパーサブのタネも並ぶ。「ひっぱり風つけうどん・そば」なるオリジナルメニューもあり、こちらは納豆・生卵・さば缶が入っているということだ。注文したのは「おぼろそば」(360円)。いわゆるかけそばにおぼろ昆布をのせたそばなのだが、これもあまり置いている店は少ない。ちなみにおぼろ昆布ととろろ昆布は削り方に違いがあるとか。

冷え切った体を温めてくれる一杯

30秒ほどで完成、代金引き換え式。なみなみと注がれたツユからモウモウと湯気が立ち上る。まずはツユを一口。鰹だしがしっかり効いていながらも、おぼろ昆布のグルタミン酸で旨味の相乗効果。しみじみ美味い。そば麺はもっちりやわらかい。こういうシンプルなそばでは、わずかなネギでさえ主役になる瞬間がある。シャキッとした歯ざわりは丼の中で唯一無二だ。これと麺を昆布で絡めながらさらにすする。背中は寒いが、顔と手、そして体の中からどんどん体温を取り戻していくのがわかる。

  • 志村坂上駅から徒歩3分ほどの「さかうえ」

食べているうちに、一人また一人と客が増えていく。みな、この寒さの乗り越え方を知っている。ボリュームも値段も朝食に最適。心挫けそうな冬は、まず温かいそばを一杯。

著者:高山洋介

1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に銭湯を紹介する同人誌『東京銭湯』『三重銭湯』『尼崎銭湯』などをこれまでに制作