1月とは思えない突然の陽気で、日課にしている夜のウォーキングも大変心地よい。自宅から大きく四角形を描くようにして、一辺2km、合計8kmの道のりだ。かれこれ一年ほど続けており、もう見慣れた景色なのだが、途中に未知の立ち食いそば屋を発見したのは今年に入ってからだった。表参道の「亜我栄ム庵」である。東京メトロ銀座線「表参道」駅B2出口が最寄り。店名は「あんがえむあん」と読む。洒落た青いのれんが掛かっているだけの小さな間口は、いかにもこだわりが強そうな日本蕎麦屋のように見える。平日の12時前に到着。少し緊張しつつも、のれんをくぐる。

  • 「ざるそば(大)」(300円)に、天ぷらの「舞茸」(100円)と「ピーマン」(100円)を追加(写真:マイナビニュース)

    「ざるそば(大)」(300円)に、天ぷらの「舞茸」(100円)と「ピーマン」(100円)を追加

興味がそそられる個性的なメニューたち

入ると、賽銭箱付きの小さな神棚が出入口に。店内は薄暗く、昭和歌謡が流れる。立ち食いのカウンターのみが奥に伸びる。5~6人並べばいっぱいか。幸い、先客は若い男性1人のみだった。本業は立ち飲みがメインか、食券機のようなものはなく、かわりに卓上に注文用紙と鉛筆が置かれている。店は女性が1人で切り盛りされており、用紙を確認するやいなや「はじめてですか?」と声をかけられる。その旨伝えると、そばは量に関わらず料金固定であることを教えて頂く。

さて、メニューを見ると、用紙の上半分はドリンクメニュー。下半分がなかなか突っ込みどころ満載だったので、いくつか紹介する。「そば屋キャスト体験コース※35歳以上」「そば屋店長体験コース※40歳以上」「若者限定おつまみ五点盛り」「シニア向けおつまみ三点盛り」「イケメンひらひら」「どん兵衛※高級天かす有料」「キャビア蕎麦(1万円)」「世界三大珍味そば(10万円)」…10万円…? ぜひユーチューバーの皆さんの出番かと思います。

ここは無難に「ざるそば(大)」(300円)に天ぷらの「舞茸」(100円)と「ピーマン」(100円)を追加で。ざるそばのサイズは、小・並・大・メガがあった。ここだけ見れば、下町の激安店なのだが……。

専門店の味に引けを取らない"揚げたて天ぷら"

天ぷらは衣をつけるところからスタートなので、本当の揚げたて。そのため、卓に並ぶのは5分くらいかかった。店内照明の都合上、写真が暗くて申し訳ない。天ぷらは別皿で、塩付き。サイズはどれも小ぶりだがサクサクで、天ぷら専門店の味に引けを取らない。麺は細いながらもコシがあり、濃いめのつけツユでズズッとすする。シャリシャリのネギとワサビも相まって、今日の陽気にぴったりの、清涼感あふれる味わいだ。代金は食後、支払う。「またおいでやす」の声を背中で聞く。

  • 東京メトロ銀座線「表参道」駅B2出口から近い「亜我栄ム庵」

とても一度二度通っただけでは全貌をつかめない店であることは確かだ。ざるそばと天ぷらだけで考えれば、立地からは考えられないハイコストパフォーマンス店。立派な「立ち食いそば」である。また、昼時間から喫煙可なのでその点はご留意いただきたい。

著者:高山洋介

1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に銭湯を紹介する同人誌『東京銭湯』『三重銭湯』『尼崎銭湯』などをこれまでに制作