大阪人が教えるホンマにええ店(10) 天満宮近くのカフェで愉しむ、けしからん夜

今や全国でも食べられるようになったスパイスカレー。ご存知の通り大阪がブームの火付け役として知られ、出張に来ると目に入ると思うが、大阪には多くのスパイスカレーの店がしのぎを削っている。そんななかでもいち早くカレーイベントを主催するなど、大阪スパイスカレーを知らしめるべく尽力して来た三嶋達也さんが、週に1度だけ腕をふるうカレーが食べられる店が「ニッポンカリーオルタナ」だ。

オルタナカリーと週替わりカリーのあいがけ

毎週水曜日に「ニッポンカリーオルタナ」として営業

カレー好きだった三嶋さんは自らもカレー作りに没頭し、縁あってカフェなどを手がけるBATONグループのオーナーとタッグを組むことに。BATONグループが運営する天満橋の「カフェトキオナ」の定休日だった水曜日を利用し、「水曜日のオルタナ」と銘打ってシェア営業していたが、2019年6月に、カフェともども大阪天満宮の近くに移転。日本一長～い商店街として有名な天神橋筋商店街の一番南側、天神橋筋一丁目商店街のアーケードを抜けたところに「カフェトキオナ＆ニッポンカリーオルタナ」としてオープンした。新たな店でも水曜日にカレーが楽しめる。

ヨーロッパの街角にあるカフェのような外観

レトロモダンな雰囲気が漂う店内は、タイムスリップしたよう

店内に入るとレトロモダンなオシャレな雰囲気。そう、ここはカフェだった。１階は2名用のテーブルが中心、2階は4人がけテーブルなどもあり、ひと昔前の純喫茶のような重厚感に、昭和にタイムスリップしたような感覚になる。筆者は奥のシネマシートに案内してもらったが、懐かしい映画館の椅子が並んでいて雰囲気は抜群！　女性をエスコートすれば少しくらいは男前に見られたかもしれないが、残念ながら一人での訪問だ…。

1階は2名用のテーブル席、奥にはテラス席もある

2階席は、レトロながら重厚感ある雰囲気

カウンタースタイルのシネマシート

水曜日のメニューはカレーとトッピング、ドリンクのみ。カレーは、オルタナカリーと週替わりカリーの２種類と、両方が楽しめる“あいがけ”があるので、あいがけ（1人前税抜1250円）を注文。これだけでもお腹いっぱいになりそうだが、どんな“けしからん”ことが起こるのか？と名前にひかれて、けしからんメンチカツを注文。さらに卵に目がない私は、うずら（くんせい風）（1人前税抜100円）も追加した。

イラストが描かれたわかりやすいメニュー

彩も美しいニッポンカリーはスパイシーながら優しい味わい

コロナによる緊急事態宣言開け、しかも夜の営業が始まる18:00ジャストに訪れたので、入った時は筆者とあと1人程度だったが、待っている間にアレヨアレヨと席は埋まり、なんと満席に。「一歩間違えると入れなかったかも」と胸をなでおろしたところに、ベルギービール（１杯税抜600円）がやってきた。夏の始まりで暑かったので冷たい一杯は最高だ。ビールで喉を潤していると、あらかじめ“別盛りで”とお願いしていた、けしからんメンチカツ（一人前税抜480円）が登場。タルタルソースたっぷりで見るからに「けしからん！」と騒ぎそうになるが、一口食べるとじゅわっと溢れる肉汁、その肉汁をビールで流し込めば「本当にけしからん！」とさらに追い討ちをかけられた。

ベルギービール

タルタルソースたっぷりの、けしからんメンチカツ

2階のシアターシートで一人こっそりと「けしからん」行為をしていると、真打のカレーが登場! さっそく、こちらのスペシャリテとも言えるオルタナカリー（お出汁ベースのキーマカリー）を口に運ぶ。優しいダシの味がふわりと広がり、後からスパイスが追いかけてくる。高野豆腐も入ってさらに和の妙味が広がる。そしてもう一つの和牛スキヤキカリーを一口。こちらも最初はスパイスの味が広がるが、すき焼きの特有の甘さが押し寄せ、まさに「ニッポンカリー」と呼ぶにふさわしい完成度だ。

お出汁ベースのキーマカリー

和牛スキヤキカリー

その後も、残りのメンチカツをプレートにのせたり、香ばしいうずらと一緒に食べたり、レモンを絞って味変したりと「けしからん」行為はさらにエスカレート。今日はもう逮捕されても仕方ないと思うくらい「けしからん」行為を満喫して店を退散した。ちなみに三嶋さんは「口癖はカレー」というカレー愛好家グループを作り、過去にはカレーイベントなども手掛けてきたひとり。さまざまな活動で大阪のスパイスカレー文化を発信し続けており、大阪のカレー事情にも精通しているので、時間があればカレー談義に花を咲かせるのも楽しい。