東京2020はさまざまなスポーツをお子さんとともに楽しめるまたとないチャンスです。そこで、子どもの運動能力向上に詳しいスポーツトレーナー・遠山健太が各競技に精通した専門家とともにナビゲート! 全33競技の特徴や魅力を知って、今から東京2020を楽しみましょう。今回は「ハンマー投」! 競技解説は、競技解説はハンマー投経験者の樋口清流(きよら)さんです。

  • 「ハンマー投」の魅力とは?

ハンマー投の特徴

ハンマー投はアイルランド発祥の投てき競技で、金槌に鎖をつけて投げていたのが始まりとされています。近代オリンピックでは、男子は1900年のパリ大会、女子は2000年のシドニー大会から正式種目となりました。

ハンマーは、長さが男子で1.175~1.215m、女子で1.160~1.195mのワイヤーの先に鉄球がついています。全体の重さの合計は、男子が7.260kg(16ポンド)、女子が4.000kg(8.82ポンド)です。競技者は直径2.135mのサークルと呼ばれる円形の投げる場所で、ターンしながらハンマーを投げて飛距離を競いますが、角度34.92度のラインの内側に入ったもののみ有効試技となります。ターン回数は選手によって異なりますが、男女ともに3回転~4回転で投げます。

現在の世界記録はロシア共和国出身、ソビエト連邦(現ウクライナ)のユーリ・セディフ選手が、1986年に記録した86m74です。彼は多くの選手が4回転ターンで行っているなか、3回転ターンで世界記録を樹立しました。女子の世界記録は、ポーランドのアニタ・ヴォタルチク選手が2016年に記録した82m98です。

東京2020の参加標準記録は、男子77m50、女子72m50ですが、現在日本で参加標準記録を突破している選手はいません。日本人のハンマー投の選手で有名な人物といえば、世界を制した室伏広治選手と、67m77の日本記録を持つ室伏由佳選手ですが、日本勢はこの室伏兄妹を超える選手の登場が待たれます。

ハンマー投を観戦するときのポイント

ハンマー投を観戦するときの3つのポイントを紹介します。

①小さな円の中で投げる大柄な男子選手
世界の舞台で大柄な選手たちが7.260㎏のハンマーを投げる姿は圧巻です。円の大きさは直径2.135mと小さいうえ、動きは大きく細かいため、高度な技術が必要です。そして投てき者は体が大きく体重は100㎏をゆうに超える選手ばかりです。一見、力任せで投げているように見えますが、あの小さな円の中であれだけダイナミックなパフォーマンスができるという、選手たちの高い技術力も見どころです。

②選手それぞれの投げ方
ハンマーの投げ方は、まずスイングという準備動作を行い、ターンに入ります。ハンマーにかかる遠心力も使い、スピードをつけ4回転したのち振り切り、ハンマーを前へ飛ばします。一連の流れはどの選手も同じです。しかし、スイングの回数や回転中のハンマーの軌道など、選手それぞれ投げ方に違いがあり、それも見どころです。

③ポーランド勢
東京2020で金メダル候補といわれているのは男女ともにポーランドの選手です。男子選手は2人います。

1人目はパウエル・ファイデク選手です。彼が持つ記録は83m93で2013年から世界ランキングトップを守り続けています。さらに、2019年世界陸上選手権大会でも優勝し、2連覇を果たしています。しかし、五輪でのメダル獲得は1度もなく、31歳で迎える3度目の五輪、東京の舞台でタイトル獲得に期待です。

2人目はヴォイチェフ・ノビキ選手です。ファイデク選手と同い年で。2017年に初めて80mスロワーとなりました。2017年、2018年とポーランド選手権では、ファイデク選手を破り、2連覇しています。この同い年対決も見どころです。

女子は、アニタ・ヴォタルチク選手に注目です。現在の世界記録保持者で、彼女の持つ世界記録は82m98です。女子選手として初の80mスロワーです。2014年以降続いている世界リストで1位の座をキープしています。このヴォタルチク選手に迫るのが、2018年に3m21も自己記録を伸ばし、78m12を投げたアメリカのディアナ・プライス選手です。この対決も見どころです。

最後に、フィールド競技は選手が手拍子を求める場面が多く見られます。ハンマー投でもそのようなシーンがあると思うので、そのときは手拍子をして、観戦をより楽しんでもらいたいです。

東京2020でのチームジャパンの展望

参加標準記録には満たないものの、女子では室伏由佳選手の日本記録に迫る渡邊茜選手(丸和運輸機関)と勝山眸美選手(オリコ)が、東京2020までに記録をどこまで伸ばせるかに注目です。渡邊茜選手の自己記録は2016年に記録した66m79で、2019年の第103回日本選手権で優勝しています。一方、勝山眸美選手の自己記録は2018年に記録した65m32です。

男子では、昨年の日本選手権を制した、自己記録69m10を持つ赤穂弘樹選手(まなびや園)と、自己記録71m36で現在日本ランキングトップの柏村亮太選手(ヤマダ電機)に期待しています。

遠山健太からの運動子育てアドバイス 「ハンマー投」を始めるタイミング

ハンマー投の第一人者である室伏広治氏の講演会を聴きに行ったことがあります。当時、まだ現役でしたが、シーズン前は山で大きな岩を投げたり切り株を抜いたりと、「非人工物」と触れる時間を作っていたと聞いて衝撃を受けました。ハンマー投は動画で閲覧するぐらいで、幼少期には体験できない競技だと思います。重いものを遠くに投げることは危険が伴うので、公園で実施するのも難しいですが、室伏氏のように自然が多いところで重いものを投げたり持ち上げようとする行為は、小さいころから体験したほうがよいでしょう。たとえそれが持てなくても持ち上げようとしたその体験こそが重要なんです。

競技解説:樋口清流(ひぐちきよら)

中学、高校で陸上部に所属。高校からハンマー投げを始める。高校卒業後の現在はトレーナーを目指すべく「名古屋リゾート&スポーツ専門学校」在学中

ナビゲーター:遠山 健太

リトルアスリートクラブ代表。トップアスリートのトレーニングに携わる一方で、ジュニアアスリートの発掘・育成や、子どもの運動教室「リトルアスリートクラブ」のプログラム開発・運営など、子どもの運動能力を育むことに熱心に取り組む。自身、2児の父であり、子どもとともにめぐった公園での運動や子育て経験を生かし、パークマイスター(公園遊びに詳しく、子どもの発育を考えて指導ができるスポーツトレーナー)としても活動している。著書は『スポーツ子育て論』(アスキー新書)、『運動できる子、できない子は6歳までに決まる!』(PHP研究所)、『ママだからできる運動神経がどんどんよくなる子育ての本』(学研プラス)など多数