海外にいると、日本の姿が違って見えてくる。日本食、カルチャー、トレンド、価値観……世界各地の目線から見える“ニッポンの今”とは? 現地在住ライターが、海外から“逆照射”される日本の面白さをお届けする連載、第21回のテーマは、「台湾でのちいかわ人気」。
『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』が、台湾でも大ヒットを記録している。映画の興行収入情報を公開している「台北票房觀測站」によると、9月27日までの台湾累計興行収入は約1億6494万台湾元(約8億2470万円)。台湾の今年の映画年間興行成績ランキングで、興収・動員数ともにトップ10入りを果たしている。
映画だけではない。回転寿司チェーンの景品として社会現象を巻き起こし、地方都市の観光振興の起爆剤として600万人以上を集客し、台湾を代表するイベントの目玉キャラクターになっている。台湾でのちいかわの愛されっぷりは、本家日本に勝るとも劣らない。台湾でのちいかわ現象をレポートする。
■ちいかわ、台湾での認知は2022年頃から
ちいかわは台湾では「吉伊卡哇(ji yi ka wa)」と訳されている。ちいかわが台湾のファンに認知されはじめたのは、2022年頃だった。
2022年1月、台湾のウェブメディア「NIUSNEWS」が「日本で人気の新キャラクター」としてちいかわを取り上げ、台湾公式Instagramと台北市内のPOPUPショップを紹介した。この時点では台湾での認知はまだ「一部のファンに知られている」程度だった。
その後、2022年4月に日本でアニメ放送が始まったことをきっかけに、台湾でもちいかわへの注目度が高まっていく。2023年7月27日、台湾角川からちいかわの繁体字中国語版コミックスが発売された。同日から7月31日まで台湾最大級の漫画・アニメの祭典である「漫画博覧会」が開催されており、博覧会会場でも販売されたため、台湾のウェブメディア「GNN新聞網」は「日本の人気キャラクター『ちいかわ』、漫画博覧会に登場」と報道。既存ファンからの歓迎の声が相次いだ。
台湾でも動画配信サービスなどを通じてアニメを見ることができるようになり、現在ではLINE TVなど複数のプラットフォームでアニメが配信されている。
2024年からの人気の伸びはさらに著しい。2024年6月14日からの約2か月間、台北市の人気観光スポットである「華山1914文化創意産業園区」で、「Chiikawa POP UP STORE 台北」が開催された。「GNN新聞網」ではこのイベントの告知記事において「泣き虫だが友達想いのちいかわと、その仲間たちが繰り広げる物語。キャラクターはかわいらしいが、描かれているのは現実社会の厳しさ。そのギャップが多くの人から愛されている」と、ちいかわの人気の秘訣を解説している。
■くら寿司や各地の観光振興イベントで社会現象に
台湾でのちいかわ人気を一気に可視化した出来事のひとつが、2024年のくら寿司コラボだ。2024年8月23日に始まった台湾くら寿司とちいかわとのコラボは、当初9月22日まで開催される予定だった。だが、想像を上回る人気によりガチャの景品が不足し、前倒しで9月2日に終了することとなった。店舗にはコラボアイテムのガチャを目当てに長蛇の列ができ、代わりに寿司を食べてくれる人を募集する人まで現れた。
このコラボも、台湾におけるちいかわ人気の広がりを物語る出来事のひとつといえるだろう。
ちいかわを大規模イベントの目玉に据え、より多くの人がちいかわを認知するきっかけを作ったのが、台湾南部の中核都市である高雄市だ。高雄市では毎年冬に「Kaohsiung Wonderland 冬日遊楽園」という観光振興イベントを開催している。観光地である愛河湾に旬のキャラクターの巨大バルーンを浮かべ、高雄市の観光振興につなげている。
2025年、このイベントのキャラクターとして白羽の矢が立ったのがちいかわだった。イベント初日、ちいかわの巨大バルーンは、タグボートに引かれて愛河湾に到着した。ハチワレとうさぎもいる。
このときの空撮映像には「AIかと思ったら本物?!」「もはやちいかわじゃなくて『デカかわ』」などとのコメントがつき、大いに盛り上がった。1月25日から2月16日の約3週間にわたって行われたイベントは大盛況で、600万人を超える来場者を記録した。
イベント期間中の経済効果は数百億元といわれている。
■ボンドロでの人気も健在
現在も高い人気を誇る「ボンボンドロップシール(ボンドロ)」でも、台湾ではちいかわが人気だ。
ボンボンドロップシールは台湾にも飛び火し、シールを求めて日本から台湾に渡航する人も現れるほどの社会現象となった。ボンボンドロップシールを多数販売している台北市の文林百貨の陳氏によると、日本では様々なデザインが販売されているが、台湾ではちいかわシリーズのものが多いとのこと。確かに、筆者が台湾で見かけた際には、圧倒的にちいかわ率が高かった。ちいかわが多いのは、そこに需要があるから。ボンボンドロップシールのラインナップからも、台湾でのちいかわ人気を垣間見ることができる。
■なぜここまで愛される?台湾のちいかわ人気の背景にあるもの
ちいかわたちは、草むしりや討伐で収入を得て、資格試験を受け、欲しいもののために働く。かわいい外見に癒やされながら、その苦労に自分自身を重ねられることが、多くの大人たちの心をつかんだ。これは日本も台湾も共通だ。
台湾でのちいかわ人気がここまで広がったのは、「かわいらしいキャラクターと、大人も共感できる現実味のある内容」という作品自体の魅力に加えて、SNS・飲食店・観光イベントという身近な場所で、キャラクターに触れる機会が再生産され続けたことにある。特に上述の高雄市のコラボでは、巨大バルーンに加えて、ランタンフェスティバルのランタンとしてもちいかわが採用され、MRT(地下鉄)の入場時に改札でICカードをタッチすると「ちいかわ!」という音声が流れるなど、ちいかわをテーマとしたイベントが短期間に複数開催され、街全体がちいかわに包まれていた。
ちいかわと大型イベントとのコラボは、今年に入ってからも続いている。2026年7月4日から8月20日まで台湾東部の台東県で開催された「台湾国際バルーンフェスティバル」では、世界初の「ちいかわ熱気球」が登場した。2025年12月27日には台北市内に台湾初のちいかわ公式店舗「CHIIKAWA SHOP in TAIPEI」がオープンし、連日多くのファンで賑わっている。
台湾ではちいかわ関連イベントやPOP UP STOREが相次いで発表されており、人気はまだまだ衰える気配がない。次はどんなコラボが発表されるのか、今後の展開からも目が離せない。








