海外にいると、日本の姿が違って見えてくる。日本食、カルチャー、トレンド、価値観……世界各地の目線から見える“ニッポンの今”とは? 現地在住ライターが、海外から“逆照射”される日本の面白さをお届けする連載、第20回のテーマは、「キルギスで広がるユニクロ人気」。


ユーラシア大陸のど真ん中、中央アジアに位置するキルギス共和国。実はこの国、ユニクロの店舗がひとつもない。ところが今、街ではユニクロを着る人が増え、首都ビシュケクには輸入品を扱う“ユニクロ専門店”まであるという。日本では「普段着」の代名詞ともいえるユニクロが、なぜ遠く離れたキルギスで人気を集めているのか――現地の人々に話を聞いた。

  • ユニクロが出店していないキルギスで今、ユニクロの服がこぞって着られているらしい‐その背景に迫る

    ウルトラライトダウンを着ているキルギス人の友人。ヨルト(キルギスの移動式住居) の前でパシャリ

■「そのジャケット、見たことある!」

きっかけは、キルギス人の友人が着ていたジャケットだった。どこからどう見てもユニクロの定番商品、ウルトラライトダウンだったのである。「ああ、いまキルギスでは、みんなこぞってユニクロを着てるんだよ」。日本では普段着の代名詞のようなユニクロだが、キルギスでは「ちょっといいブランド」として注目されているらしい。

しかしユニクロは2026年現在、中央アジアには進出していない。そのため、人々はわざわざ輸入代行業者を使ってアメリカや中国、日本から取り寄せているのだという。また、輸入したユニクロを販売する「ユニクロ専門店」も首都ビシュケク市内に存在するため、そこで購入することもあるようだ。 キルギスで白熱するユニクロブーム。しかし、そのきっかけはなんだったのだろうか。

  • 首都ビシュケクにあるユニクロ・GU専門の輸入・販売店。店内には「リラックステーラードジャケット」などがずらり揃う

    首都ビシュケクにあるユニクロ、GUの専門店「Kawaii JAPAN STORE」。(以下、写真は店舗より提供)

■ユニクロ人気は“オフィス”から始まった?

「オフィスカジュアルな服装で働く人が増えたから、ユニクロが人気になったんだと思います」。そう語るのは、ユニクロの輸入・販売店「Kawaii JAPAN STORE」のオーナー、サーシャさんだ。彼女によれば、日本同様キルギスでも、スーツではなくよりリラックスした服装で働くことが増えているのだという。

「ただ、キルギスではまだビジネスライクで着心地のいい服を売る店は、そう多くはないんです。オフィス用の服の選択肢が限られていることが、ユニクロブームのいちばんの理由でしょうね」。

私の友人も、オフィスで働いていたときのことを話してくれた。「義姉がユニクロのパフテックコンパクトベストをプレゼントしてくれたの。それを職場に着ていったら、同僚から『それどこのブランド?』って口々に聞かれたよ。それからは、みんな色違いで買って着てくるようになった。ユニクロはそんな風に口コミで広がっていったんじゃないかな」。

  • 店内には、ユニクロの「リラックステーラードジャケット」も

    店内には、ユニクロの「リラックステーラードジャケット」も

■1位は「Uniqlo U」! キルギスで売れているアイテムたち

オフィスからじわじわと広がったユニクロブーム。現在では、ユニクロは幅広い年代、性別から受け入れられているようだ。「ティーンエイジャーから70代くらいまで、いろんな人が高品質な服を求めてやってきますよ」とサーシャさん。売上のトップ6も教えてくれた。その結果がこちら。

1位 Uniqlo U クルーネックTシャツ
2位 エアリズム ブラトップ
3位 プレミアムリネンシャツとリネンブレンドイージーパンツのセット
4位 ラウンドショルダーバッグ
5位 スマートアンクルパンツ
6位 パウダーソフトダウンジャケット

  • 売れ筋のTシャツを紹介しているショップの店員さん

    売れ筋のTシャツを紹介しているショップの店員さん

日本でも人気の商品ばかりで、「私も持ってる!」という方も多いのではないだろうか。ここで気になるのは、エアリズムやダウンジャケットがランクインしていることだ。ユニクロのデザインだけではなく、その機能性にも注目が集まっていることがうかがえる。

■夏は40℃超、冬はマイナス15℃…機能服がキルギスにハマる理由

キルギスの人々が、エアリズムやパフテックなどの機能性に注目する理由。それは中央アジアの気候の特徴にある。中央アジアは「大陸性気候」の影響を受ける地域であり、昼と夜、夏と冬の寒暖差が非常に激しいのだ。

例えば首都ビシュケクでは、8月の昼間の気温は40度以上にまで達するのに対し、冬の昼間の平均気温はマイナス15度程度である。「だからキルギスでの服装は、レイヤリングが鍵。温度調整できるように、パフテックみたいな服を重ね着しておくと便利なの」と友人はいう。

  • 首都ビシュケクの街並み。8月中旬のこの日、昼の気温は43度だった

    首都ビシュケクの街並み。8月中旬のこの日、昼の気温は43度だった

また、キルギスは国土のおよそ80%が山岳地帯である。気温の低い山岳地帯でのアクティビティでも、ユニクロは活躍しているらしい。「キルギスの人たちは自然が大好き。ハイキングに行ったり、湖のそばで馬に乗ったり……。アウトドアを楽しみたい時、軽くて保温性の高いウルトラライトダウンが便利だよね」。

■「お土産に買ってきて!」ユニクロが喜ばれるギフトに

オフィスカジュアルなデザインと機能面で、キルギスの人々から評価されているユニクロ。友人によれば、親戚や友人などへのプレゼントとしてもよく贈られているのだという。

キルギスでは、特に親戚同士のつながりが非常に強く、最優先事項と言えるほどである。そのため、ことあるごとに家へ親戚を招いてパーティーを開き、ギフトを贈り合う。「ユニクロの店舗がある国に旅行に行くときには、いつも親戚から『お土産に買ってきて!』と頼まれるよ。ユニクロはシンプルでロゴがないから、誰にでも贈りやすいんだよね」。

■もしユニクロがキルギスに進出したら……?

さまざまなニーズによって、キルギスで着実に市民権を得つつあるユニクロ。今後もしキルギスに、ユニクロの店舗ができたらどうなるだろうか。友人はこう言う。

「高級ブランド服のコピーが大量に市場に出回っているなかで、ユニクロを着ている人を見ると、『この人、わかっているな』と思う。もしユニクロの店舗ができたら、そういうトレンドに敏感な人が、カザフスタンやロシアのような近隣の国からも買いに来るんじゃないかな」。

  • イシククル湖のビーチを歩いているキルギスの友人。着ているのはユニクロのサマードレス

    イシククル湖のビーチを歩いているキルギスの友人。着ているのはユニクロのサマードレス

直営店のない遠いキルギスで、わざわざ取り寄せたい「ちょっといい服」、「海外土産で頼まれる服」、「わかってる人が着ている服」となっていたユニクロ。中央アジアでユニクロがどう浸透していくか、今後の展開に期待したい。