さきごろ、ICCパートナーズは「ICCサミット KYOTO 2018」を開催した。経営者や経営幹部が議論したり学びを深めたりするビジネスカンファレンスだ。

今回はプログラム「注目 フィンテックの最新事情」を紹介したい。

フィンテック業界のフロントランナー

本プログラムは、フィンテック業界で活躍する企業の代表4人が集合し、業界事情を語りつくす内容だ。

登壇したのはFOLIO 代表取締役CEO 甲斐真一郎氏、クラウドリアルティ 代表取締役 鬼頭武嗣氏、マネーフォワード 代表取締役社長CEO 辻庸介氏、ウェルスナビ 代表取締役CEO 柴山和久氏だ。司会・進行はUBS証券 武田純人氏が務めた。

前半では登壇者が自身の経歴と自社の最新トピックスを紹介し、後半はフリーセッションが行われた。

テーマを選ぶ株式投資 - FOLIO

甲斐氏:私はゴールドマン・サックス証券、バークレイズ証券で働いたあと、2015年にFOLIOを設立しました。会社を辞めた理由はいろいろありますが、業界が縮小均衡へ向かっている感覚と海外ではフィンテックの大きな波がきていると感じたのが大きな理由ですね。もちろん業界に従事する身として、日本の資産運用の業界を活性化させて国を元気にしたいという大志も当然あります。

  • FOLIO 代表取締役CEO 甲斐真一郎氏

甲斐氏:FOLIOはテーマを選ぶだけで、オンラインの株式投資ができる証券会社です。例えば「VR」や「AI」などトレンドの強い金融系のテーマから、「コスプレ」「寿司」「カジノ解禁」という一見、金融商品とは思えないようなテーマもあります。

甲斐氏によると、同社のテーマ組成の考え方には二つのポイントがある。

・ショートターム、ミッドタームでトレンドにのりそうなテーマ
・生活圏に根付いたもの、趣味趣向に紐づくようなテーマで、マーケティングサイドからの定量的な熱量分析に基づくもの。ファンが多いもの

これらの両立により、金融知識の少ない人にも手触り感を持って投資を楽しんでもらいたいとしている。

甲斐氏:コスプレを例にすると、マーケティングという観点からは非常に「熱量(想い)」が高いですが、マーケット全体の規模はニッチです。そういったテーマは我々のような個別株のバスケットとしては組成できますが、投資信託という形ではなかなか作ることはできません。投資信託という形では組成できないような時機に応じたものや、ニッチなものを提供できるというところが、我々の特徴の一つです。

またLINEと協業して顧客獲得をしていきますが、近々LINE上に共同で作っているサービスが登場する予定です。一番興味がある話題を一つということなので、そうですね。マネーフォワードが銀行を作るのか? でしょうか(笑)

不動産の証券化を手軽に - クラウドリアルティ

鬼頭氏:大学で建築を学び、卒業してBoston Consulting Group、メリルリンチ日本証券の投資銀行部門で働いてきました。そして、2014年にクラウドリアルティを設立し、事業を立ち上げてきました。また、クラウドリアルティの事業とは別に、さきごろ内閣府の革新的事業活動評価委員会(プロジェクト型 規制のサンドボックス制度の第三者委員会)の委員にも選ばれました。これを機に、フィンテックだけでなく様々な領域の規制改革も支援していきたいと思っています。

規制のサンドボックス制度
AI、IoT、ブロックチェーン等の革新的な技術の実用化の可能性を検証し、実 証により得られたデータを用いて規制制度の見直しに繋げる制度。
出典元:規制のサンドボックス制度及び革新的事業 活動評価委員会の概要より

鬼頭氏によると、自社を不動産に特化した投資型クラウドファンディング・マーケットプレイスと説明することもあるが、実際は少しニュアンスが異なるそうだ。本質的には証券の発行・募集・流通などを担う、投資銀行機能のデジタル化を進めているという。

鬼頭氏:これまで、町家の再生プロジェクトの資金調達を、京都でいくつかおこなっています。こうしたプロジェクトは、これまでのキャピタルマーケット(長期金融市場)では資金調達できませんでした。J-REITや私募ファンドで資金調達してきた不動産は35兆円程度あるといわれますが、調達できていない不動産は2,400兆円もあり、非常に限定的でいびつなマーケットになっています。

  • クラウドリアルティ 代表取締役 鬼頭武嗣氏

このゆがみの原因となる壁(課題)を完全に無くし、1人の例外もなく全ての人がアクセスできるキャピタルマーケットを作ることが、クラウドリアルティの理念だとしている。

鬼頭氏:壁は二つあると思っていて、一つ目はコストの高さです。従来の投資銀行だと、証券化にかかる費用や、バンカーが業務する際に生じる人件費などが加算されて費用が高額です。もう一つが特定の硬直的なルール・規制に縛られていることで、不動産だと新耐震基準のクリアなどが挙げられます。

そのため、低コストで証券化できる新たなスキームを開発し、オンラインでの有価証券の発行・募集(クラウドファンディング)と組み合わせてソリューションとして提供している。

またルール・規制については、金融庁など特定の第三者的存在に依存しきらない世界を目指す必要があるという。

鬼頭氏:リノベーションした町家を宿泊施設として提供するスタートアップの事業者は、このソリューションで7,200万円の資金を調達することができ、これから事業収益を出資者に分配していきます。また海外でも、子会社を通して不動産担保ローンの証券化なども展開し、古い建物のリノベーションや開発プロジェクトの資金調達をサポートしています。

最後に今気になっているトピックスは規制関連ですね。みなさんとこの規制何とかならないの? など議論したいですね。