お金の課題をテクノロジーで解決 - マネーフォワード

辻氏:マネックス証券で勤務したあと、2012年にマネーフォワードを設立しました。起業のきっかけは「お金の課題をテクノロジーで解決したい」と思ったからですね。ですから弊社サービスもBtoBからBtoCまで網羅しています。変わったサービスだと、人手不足が課題の中小企業にむけて、取引先への請求・入金確認作業をまるっと代行するサービスなどもやっています。

直近では、クラウドの会計や給与計算サービスを利用した生産性向上だけでなく、収益面も改善したいというニーズのため、将来のキャッシュフロー予測や予実管理ができるクラウド経営分析サービスもナレッジラボというグループ会社より提供していると辻氏は話す。

  • マネーフォワード 代表取締役社長CEO 辻庸介氏

辻氏:日本企業のおよそ7割は赤字ですが、予実管理をきっちり行っている企業の9割は黒字だといわれてます。つまり、予実管理をしっかり行うことが経営を良くすること。しかし中小企業の場合、管理部門の人材を採用することは大変です。ツール利用することでその課題を解決できると思っています。

なお中小企業の場合、ITリテラシーが高い人材が多くはない。そのためグループ会社を通して、サービス提供だけでなく、クラウド導入サポートも行う体制にしているという。

辻氏:そのほか、地方銀行の従来の審査基準では融資できない案件でもデータ活用により融資できるのでは? と考え、AI融資審査モデルを実現するマネーフォワードファイン(ファインはFinance + Engineeringの略)を設立しました。

ちなみに、米国の会計・税務ソフトウェア・クラウドサービス企業のインテュイットも銀行では融資できない案件に融資し、収益を上げているそうだ。

日本は低金利など米国と経済環境は異なるが、社会的意義が大きいのでチャレンジしたいと辻氏は話す。

それ以外にも、インドのフィンテック企業「Alpha Fintech Pvt Limited」に出資したり、「GMO Global Fintech Fund」に戦略パートナーとして参画したりするなど、国内だけでなく海外でも存在感を出したいとしている。

辻氏:フィンテックはこれからだと思ってます。リアルなお金の流れとデジタルでのお金の流れが、全ての産業に融合していきます。今日の議題にしたいのは仮想通貨、トークンです。

働く世代向けの資産運用サービス - ウェルスナビ

柴山氏:財務省で勤務後、マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て2015年にウェルスナビを設立しました。モノづくりをする金融機関として、ロボアドバイザーによる全自動の資産運用サービスを提供しています。

  • ウェルスナビ 代表取締役CEO 柴山和久氏

アメリカでは急成長しているロボアドバイザーサービスだが、日本では未だ懐疑的な声もある。

しかし、アメリカでの最大手のスタートアップ2社は1兆円を超える預かり資産をもち、その2社のスタート時期と比較するとウェルスナビの方が預かり資産の成長スピードが速いと柴山氏はいう。

柴山氏:サービス利用者は9万人で平均預かり額が100万円強、総預かり資産が1,000億円となっています。そしてユーザーの半数以上が積み立てをしていて、まさに「長期・積立・分散」による資産運用サポートをしています。

従来は60代・70代が中心だった日本の資産運用マーケット。だがウェルスナビは働く世代にフォーカスし、利用者の94%が20~50代だという。

また資産運用ビギナーも急速に増えているそうだ。

柴山氏:「すきま時間にスマホで資産運用を行い、将来に備えたい」という利用者ニーズがあります。それに応えるため、つい先日も二段階認証を導入するなど、機能やサービスの強化を続けていきたいと考えています。

自動で行われるサービスは、仕組みがブラックボックス化するとユーザーの信頼を損なう場合もあるので、日本初のホワイトペーパーによる資産運用アルゴリズムを公開したり、手数料を判り易くしたりし、積極的に情報公開しているそうだ。

柴山氏:世界経済全体が成長し続けるなら、金融危機を乗り越えて資産を増やしていくことが可能です。世界は着実に経済成長しているのに、日本はほとんど成長していません。過去25年間、日本と同じ成長率の国を探すと、なんと、中央アフリカ共和国やコンゴなど内戦が起きていた国くらいしか見当たらないのです。

リーマンショックなど世界的な金融危機が起こると金融資産は減少するが、分散投資をすることで、リスクを和らげることができる。

もしくは円高になると、為替ベースで損失がでてくるが、積み立てによりリスクも緩和できるそうだ。

柴山氏:トマ・ピケティが『21世紀の資本』(みすず書房)で解説したように、資本のリターンは経済成長率を中長期で上回ります。世界経済全体に投資をして世界経済の成長率を上回るリターンを得ていこうというのが基本的な考え方です。

そんな柴山氏が一番関心をもつのはAIだといい、あるエピソードを紹介した。

柴山氏:例えば、年始に1万円の株価が4月に6,500円に下がって、年末に1万1,000円になったとします。Aさんは年始から、Bさんは底を打ってから積み立てを開始します。AさんもBさんも元本は同じとして、どちらの資産が増えるでしょう? 多くの方は下がってからスタートした方が良いと直観的に判断します。

エクセルを使って計算してみると、実はAさんのほうが資産は増えるとすぐにわかりますが、現実にはほとんどの人は計算をしません。それは資産が下がるという恐怖が余りにも強いので、下がってからスタートした方が良いだろうと思考がスキップするからです。

「2017年のノーベル経済学賞で話題となった『行動経済学』でも明らかにされていますが、人間の脳は資産運用に向いていない」と柴山氏は言う。

柴山氏:人間の脳には他にもいろいろ問題があり、資産が元本に近いと一喜一憂しますが、一度上がってしまうと気にならなくなり、下がっても気にならなくなります。つまり、投資を始めたばかりの頃が一番心理的に大変なんです。そのため、長期投資を誰もやりたがらないのですね。こうした脳の欠点をカバーするために、AIを活用できたらいいなと思い、東京大学の松尾研究室と共同研究しています。

「資産運用のバリューチェーンを考えるときに、将来的には運用とアドバイス両方ともAIに置き換えていけないかなと予測しています。これを議論したいですね」と話し、柴山氏は自己紹介を終えた。

気になるキーワードを議論するフリーセッションについては、次回で紹介したい。