「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第80回のテーマは「伝えるのは最高だけど面倒くさいものである」です。

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長年一緒に暮らしていると、だんだん相手の行動パターンとか、わかってきますよね。

私も相手のことがわかってきますが、もちろんパートナーも私のことがどんどんわかってくるわけです……。というわけで、最近「わかられているなあ」と思うことがよくあります。

我が家では「察してチャンはダメ」だし、息子に対して「察しすぎるのもダメ」なんですが、大人同士なら「察しちゃう」のはアリです。ちなみに今回のマンガの場合は「察する」というよりは「経験則による予想」ですが……。

いつもこうだから、きっとこうだろう。そして、そうなると困るから最初からこうしてくれ、というやつ。これをパートナーが言えるようなったのは、とてもありがたいことだと思っています。

パートナーは元々「我慢が美徳」だと思っていて、我慢をして人に譲っては「予想通りの結果にならなかった(我慢が報われなかった)」ことに怒りを感じて「キレ」てしまう人でした。私は「我慢をして、最終的にキレて傷つけるのなら、その我慢はムダだ」と伝え、とにかく「キレ」ない結果になるように、あらかじめ行動してほしいという話をしました。

つまり、以前だったら私が「思った時間に帰ってこない」のを我慢して、その結果イライラしたりキレたりしていたパターンのところを、ちゃんと事前に予想して事態を想定し「息子が文句を言わないように説得してから出かけてくれ」と、私に要望をしてくれたわけです。

素晴らしい……! ちなみに「キレない思考」をテーマにして、ここにいたるまでに3年くらいかかっています。

そして、素晴らしいのですが、同時に「やっぱり事前に揉めごとを回避するって、面倒くさいな~」とも思いました。

私が「買い物に行ったついでに別のタスクを思い出し、ついでだからとそれを追加する」ことを気にしないのは、パートナーがそれをやっても気にならないからです。気にならないのは、私のほうが時間にルーズなのと家に息子と2人でいても、息子が「お父さんは、まだ帰って来ないのか」と文句を言ったりしないから……です。

かたや、パートナーはまず自分が「ついでのタスク」を追加したところで、買い物時間が延びても家族は文句を言わないので、自分がやっても気にならないはずです(やってもやらなくても問題にならない)。ただ、自分は「母親が帰ってこない」と文句を言う息子と留守番するのはストレスなので「何時に帰ってくるか」は重要な問題となります。

お互いの条件が違うので「ここがストレスである」ということを「察して」理解するのは難しい。なにせ、私は父親が帰って来なくても息子から文句を言われないので、「相手の帰宅時間を気にする」必要がない。自分がやらないことは自分で予想して気が付くのは難しい。

この同じ家に暮らしていても「条件が違う」人間が、その差について不満や行き違いの原因になる場合は「問題が見えるほう、気が付くほう」が相手に声かけして伝える。これが我が家の実践的な「察してチャン禁止」の運用です。「察するのも、伝えるのも思いやり」です。

我が家の場合はパートナーが我慢してはキレ、夫婦ゲンカに発展し、それを話し合い……と散々言語化することに取り組んで、やっと「先回りして伝える」という難易度の高い、そして面倒なことができるようになりました。伝えられた私のほうは、さらに伝えてもらったことを踏まえて問題にならないように行動する(今回の場合は息子に全部行程を伝えて、説得する)。

結果としてできるようになって「素晴らしいな」とは思うのですが、やっぱり「面倒くさいな~」とも思う。それでも我が家はお互いが離婚を経験しているので、「こういうことを面倒だと思ってやらなかった結果」を身をもって知っています。お互いがすれ違い、お互いが「思いやり」に欠けると思って信頼関係を目減りさせたり、片方の気遣いのなさを、もう片方がコストとして抱え込んだり……。

そうやって家族関係を冷え込ませるよりは、どんなに日々の細かなやりとりが面倒でも頑張って伝え合いたい。このコミュニケーションにかかるコストは、かければかけるほど、それに見合った成果があるなと思っています。そして面倒でも、それをやる価値のある相手だとお互いが思える状態で居続けたいなと思います。

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