「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第81回のテーマは「どうしてキレる人に言い返せるのか」です。

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我が家は「他責タイプ」のパートナー・ノダDと、「自責タイプ」のさるころというコンビで、ある一定の時期までノダDがキレては、私が諫める、というパターンでした。

彼がキレないように、先回りして行動したり、キレた後は落ち着かせるように立ち振る舞ったりしていました。しかしある日、私に限界がきて「これ以上キレるなら別れる」という話し合いになり、ノダDが根本から行動と思考を修正するということになりました。

今は、お互いのタイプを理解してキレない、ケンカにならないように行動しています。

この話をすると「自責タイプで自分を責めるタイプなのに、どうして野田さんに対抗できたのですか」という質問をされることがあります。もちろん「この人を怒らせないようにしよう」とか「機嫌が悪くなってきたから機嫌を取ろう」とか、そういう行動はしてきたのです。

そして「そういうことはやめて欲しい」「こういう風になったら、こうしてほしい」という話もしてきました。でも、それじゃ修正できなかったんですよね。

私は初婚で離婚をして、深く落ち込んでいたときに弟に「全部自分が悪かった」という話をしていました。元夫が家事ができないのも、私が全て抱え込んだせい。元夫を私が頼れない結婚生活になってしまったのも、元々私が「結婚してくれ」と頼んだせい。彼が結婚生活において受け身で協力的でないこと、結婚生活がうまくいかなかったのは全部私のせい、と思っていたのです。

すると弟は「そういう考えは傲慢だ」と言いました。「『全部私のせい』」というのは『私には相手を変えるだけの力がある』ということだよね? でも本当は、そんな力なんかないんじゃないの? 元々彼はそういう人間だっただけじゃないの?」と言ったのです。

目から鱗が落ちました。本当だ!! 私は「自分が努力すればいい」と言いつつ、努力さえすれば相手を変えられるだけの力があると思っているんだ、だから、全部自分のせいだと思っているんだ、と気が付いたのです。

人間は一緒にいれば、もちろん相手に影響されるし、相性もあります。実家にいたときの自分と、元夫と暮らしたときの自分と、今のパートナーとの生活で私の「役割」や「自意識」は違います。でも、根本的な人間性や元々ある性格まで変わってしまうかというと、それは違う。

相手の問題を、勝手に「私のせい」と抱え込んでも、絶対解決できないのです。なぜなら、相手は私じゃないから。

連載第55回「自分とパートナーの境界線」でも書いたように、私は自分と相手の境界線をハッキリさせたいタイプなのだと自分のことを思っていたのですが、相手の問題を「自分のせい」と思うことは、相手と自分の境界線が曖昧になっていたんですよね。相手のお金や功績を自分のもののように思うことを嫌悪しつつ、なぜか問題は「私のせい」と考える。相手の能力や性格や「自分でやらなければならないこと」も全部勝手に「奪っていた」んです。「私ならうまくやれる」ってものすごい傲慢な思い込みです。

そこで、すごく反省したはずなのに、気が付けばまた「キレやすい相手とも、私ならうまく立ち回ってやっていける」って思っちゃった。でも、相手の機嫌をうまく取ろうとしたり、彼がイラつく行動を避けようとしたりしても、無理なんです。だって、怒りを抱えて爆発させるのは、私じゃないから。

「うまくやろう」……つまり相手をうまくコントロールしよう、というのは私の欲望であって、うまくいってるように見えるときは私が自己満足するだけ。でも、決して問題の解決はしないのです。

そして、うまくいかなければ疲弊して「こんなに頑張ったのに、なぜ私はこんなに傷つけられなきゃいけないの」という気持ちにさせられます。

そもそも、私だってイライラしたり、感情的になったりすることはあります。でも、それをやると人を傷つけて信頼を失ってしまう。だから、どうやって自分の機嫌を取るか、常に考えて行動しています。自分が自分の機嫌を取りながら、パートナーの機嫌まで取ってられるわけないんですよね。

さんざん傷つけられて、やっと「また勝手に人の問題を抱えてしまった」「自責と言いつつ、また傲慢な考え方をしてしまった」と……間違った自責の方向性を「自責」して、やっと「キレる」という「加害」をする相手の問題を、相手に突き返すことができた。

あなたが怒りを自分でコントロールするしかない。それができなければ、また家族を失う」と。

そこから先は、向こうがキレたり怒鳴ったりしたら、その前の前提がなんであろうとアウト、という姿勢になれました。自責タイプは、正しく「人のせいにする」ことや「自分の問題ではない」と切り離す必要があるということを忘れがちなのです。自責は「なんでも自分で解決できる」と思い込む傲慢さと紙一重ということを忘れないようにしています。

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著者プロフィール:水谷さるころ

女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)、『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』(幻冬舎)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。