次々に新しい料理や食材などが登場するとあって、『食のトレンド』は刻一刻と移り変わっていく。しかし、クライアントや職場の同僚と「あれ食べた?」という話になることはよくある。そんなときに「……聞いたこともない」というのは、かなりマズい。この連載では、ビジネスマンが知っておけば一目おかれる『グルメの新常識』を毎回紹介していく。第16回は「台湾ラーメン」。

  • 「台湾ラーメン」

    台湾ラーメン

「台湾ラーメン」って何?

ラーメン大国の日本。味噌ベースの「北海道ラーメン」、豚骨スープの「博多ラーメン」など、さまざまな特色あるご当地ラーメンがあるが、では「台湾ラーメン」は台湾生まれのラーメンかといえば、そうではない。台湾ラーメンは、手羽先や味噌カツといったご当地グルメで知られる愛知県名古屋市生まれ、いわゆる「名古屋めし」の一つだ。

唐辛子で辛めの味付けをした挽き肉と、ニラ、長ねぎ、もやしなどの野菜を炒めて、醤油ベースのタレと合わせる。辛さと旨みがたっぷり詰まったスープが特徴だ。麺は中細麺~中太麺が多く、スープとよく絡めて、その辛さに汗をかきながら食べるのが定番スタイルだ。

台湾ラーメンが誕生したのは1970年代とされる。名古屋市内にある台湾料理店「味仙(みせん)」の台湾人店主が、本国の「担仔麺(タンツーメン)」という麺料理をアレンジし、従業員のまかないとして出したのが始まりといわれている。

もともと味噌や溜まり醤油など濃い味付けを好んでいた名古屋の人々の心を掴み、やがて味仙の看板メニューになった。名古屋市内の他のラーメン店もこの後に続き、今では市内の7割近いラーメン店のメニューに台湾ラーメンが並んでいるという。いつしか名古屋めしの一つに数えられるようになり、その人気は全国区に広がっていったようだ。

「台湾ラーメン」はどこで食べられる?

前述の通り、台湾ラーメンを提供している店は名古屋市内に集中している。特に発祥店である味仙は市内に10店舗を展開しており(2019年4月現在)、地元の人々や観光客に人気だ。東京にも進出しており、神田に続いて2019年3月には新橋店がオープン。元祖の味を都内でも楽しむことができる。

  • 「味仙」の台湾ラーメン。名古屋以外にもファンが多い

他にも、名古屋で創業し、さまざまな飲食店経営を手掛ける企業・ゼットンは、地元の味を東京でも味わってほしいという思いから、都内で名古屋めしが楽しめる和食バルを展開。銀座にある「舌舌(たんたん)」と「gz(グズ)」の2店で台湾ラーメンを提供している。

近くに台湾ラーメンを食べられる店がない……という人は、インスタントラーメンを購入するのも一つの手。ヤマダイが2018年8月にカップ麺の「凄麺 名古屋台湾ラーメン」(希望小売価格210円)をリニューアル発売したほか、2019年3月に寿がきやが「5食入台湾ラーメン」(同575円)、同4月にファミリーマートが期間限定で「味仙 台湾ラーメン」(同200円)を発売するなど、台湾ラーメン人気はインスタント麺にも波及している。お試し感覚で購入してみるのもおすすめだ。

「台湾ラーメン」を食べてみた

激辛注意!? な台湾ラーメンを食べてみた。訪れたのは、銀座コリドー街にある「舌舌(たんたん)」。愛知県産の銘柄鶏「奥三河どり」を使用した鶏料理や、味噌おでんなどの名古屋めしが味わえる和食バルだ。

  • 「舌舌」の台湾ラーメン。2、3人でシェアして食べる人も多いという

〆の一杯として人気の「台湾ラーメン」(730円)を注文。香ばしいスープの香りを漂わせながら、丼がテーブルに運ばれてきた。「まずはスープから楽しんでほしい」(「舌舌」店長・梶川健治さん)とのことなので、レンゲですくってひと口。ガツンとした辛さがダイレクトに感じられる、インパクトのある味だ。ただ辛いだけではなく、鶏ガラと牛ひき肉から出る旨みもしっかりと感じられる。

  • 旨みの詰まったスープに、ミンチ肉、野菜、唐辛子がたっぷり

早くも体が熱くなるのを感じながら、続いて、麺の上に載ったミンチ肉や野菜とスープを混ぜてひと口。ゴロゴロした粗挽きの肉、細かく刻んだニラやネギのシャキシャキとした食感が加わって"飲む"というより"食べる"スープという感覚。ミンチ肉にもしっかり辛みがついているので、スープ単体よりさらに辛さが増した。いよいよ額に汗がにじんでくる。すっきりしたレモンサワー(520円)で一旦リセットしてから、麺に箸をつける。ややちぢれた中太麺とスープをしっかり絡めると、ほのかな小麦の甘みも相まってさらに奥深い味になった。

おいしい! でも、辛い! と、クセになる"旨辛"を楽しみながら完食。気づけば体中がポカポカと温かくなり、じんわり汗をかいていた。思っていた以上に辛さを感じられたが、苦手な人は辛さを控えめにすることもできるそうだ。

激辛料理が好きな人はもちろん、ご当地のユニークなラーメンを食べてみたいという人も、ぜひ台湾ラーメンの旨味と辛みを体験してみてはいかがだろうか。噴き出す汗を拭えるよう、ハンカチの準備をお忘れなく。

※価格はすべて税別