次々に新しい料理や食材などが登場するとあって、『食のトレンド』は刻一刻と移り変わっていく。しかし、クライアントや職場の同僚と「あれ食べた?」という話になることはよくある。そんなときに「……聞いたこともない」というのは、かなりマズい。この連載では、ビジネスマンが知っておけば一目おかれる『グルメの新常識』を毎回紹介していく。第15回は「ロースター併設カフェ」。

「ロースター併設カフェ」って何?

ロースターを併設したカフェが増えている。ロースターとは「焙煎機」のこと。昔から小型のロースターを店に置き、自家焙煎にこだわる個人経営のレトロな喫茶店はあったが、近ごろはおしゃれなカフェにもロースターが置かれるようになり、焙煎所(ロースタリー)を兼ねたところも増えている。

  • 店内に大きな焙煎機がある東京・中目黒の「スターバックス リザーブ ロースタリー 東京」

焙煎(ロースト)とは、コーヒーの生豆を炒ること。焙煎する前の豆は淡緑色をしているが、焙煎によって茶褐色や黒褐色へと変化していく。焙煎度合いは豆選びと共にコーヒーの味や香りの重要な決め手となる。

アメリカ発のカフェ「グリーンベリーズコーヒー」を運営するK&BROTHERS代表取締役の岩谷良平さんは、ロースター併設カフェのメリットについて、「焙煎された豆で淹れたコーヒーを味覚で味わっていただくだけではなく、焙煎中のコーヒー豆の色が変わっていく様子を視覚で、焙煎中の香ばしい香りを嗅覚で感じていただくことで、五感を通した特別な体験をお楽しみいただけます」と話す。

「ロースター併設カフェ」はどこにある?

最近では、2月27日に東京・渋谷にロースタリー&カフェ「ウッドベリーコーヒーロースターズ」が、翌2月28日には東京・中目黒に世界で5番目となるロースター併設店舗「スターバックス リザーブ ロースタリー 東京」がオープンした。ほかにもサードウェーブコーヒーブームの火付け役として知られる「ブルーボトルコーヒー」の「清澄白河ロースタリー&カフェ」や「猿田彦珈琲」の「猿田彦珈琲 調布焙煎ホール」など、ロースター併設のカフェは増えつつある。

  • FOOD HALL BLAST! TOKYOにある「グリーンベリーズコーヒー」の店内には小型の焙煎機が。焙煎中でなくてもリクエストすれば焙煎してくれる

前述の「グリーンベリーズコーヒー」は、東京・新宿のFOOD HALL BLAST! TOKYOと大阪・難波のFOOD HALL BLAST! OSAKAがロースター併設店舗になっている。「アメリカ本国では少量焙煎にこだわり、"SMALL BATCH,BIG FLAVOR(少量焙煎が生み出す豊かな香り)"を特徴にしていることから、日本でもあえて小型のロースターを導入して焙煎しております」と岩谷さん。

「ロースター併設カフェ」へ行ってみた

実際にロースター併設カフェへ行ってみた。今回訪れたのは、話題の「スターバックス リザーブ ロースタリー 東京」。オープン以来混雑が続いており、整理券をもらって順番が来たら入店する。待ち時間は日や時間によって違うが、数時間の待ち時間があることも。

  • 「スターバックス リザーブ ロースタリー 東京」

4階立ての店内で目を引くのが、焙煎設備が内蔵されている高さ17メートルのキャスク。キャスクは焙煎した豆を飲み頃になるまで保管する貯蔵庫になっている。すぐ横には焙煎するドラムがあり、焙煎された豆は冷却装置で冷やされ、天井にはりめぐらされたパイプを通じて各階へ運ばれていく。そうした様子を目で見て楽しめるだけでなく、機械の音や焙煎したての豆のキャラメルのような香りなど、五感でコーヒーを感じられるため、工場見学のようなおもしろさがある。

  • 「バレルエイジド コールド ブリュー」(税別1,200円)

店内で焙煎した豆を使ったメニューはいろいろ。今回は店舗限定メニューの中から「バレルエイジド コールド ブリュー」をオーダーしてみた。コーヒー豆をバーボンウイスキーの樽の中で熟成させたそうで、ウイスキーの香りとコーヒーの香りが調和し、なんとも贅沢な気分。バニラシロップの甘みも上品だ。まるでウイスキーのように、ロックアイスが入ったグラスに入れて飲むスタイルも粋。水出しらしい口当たりの滑らかさもうれしい。ロースターのある店内で飲むコーヒーはまた格別だ。

最近はカフェに行く目的が休憩や仕事など多様化し、コーヒー以外がメインになっていることも少なくないが、ロータリー併設カフェではコーヒーそのものを味わい、楽しみつくすことができる。コーヒーの魅力にあらためて気づかせてくれる場所といえそうだ。