ブームは去ったかのようにも感じる「仮想通貨」ですが、その普及は世界中で着実に進んでおり、今後もさまざまなシーンでの活用が期待されています。本連載では、「仮想通貨に興味はあるけれど、なにからどう手を付ければいいかわからない」というような方向けに、仮想通貨に関連するさまざまな話題をご紹介。仮想通貨を2014年より保有してきた筆者の経験から、なかなか人には聞きにくい仮想通貨の基礎知識や歴史、未来像などもわかりやすくお伝えします。

今さらだけど、トークンってなんのこと?

仮想通貨について調べたり、仮想通貨に投資しようと考えたりしたとき、「トークン」という言葉に触れたことがある人は多いでしょう。「トークンセール」や「セキュリティトークン」などの言葉も、一度は聞いたことがあると思います。

トークンは、英語では「Token」と書き、直訳すると「しるし」「象徴」「証拠」「記念品」などの意味があります。仮想通貨においては、企業や個人が発行したコイン(仮想通貨)をトークンと呼ぶことがありますので、「コイン(仮想通貨)=トークン」と理解しても間違いではありません。

金融庁のホームページでは、「トークン(証票)」と表現されています。仮想通貨をまだ保有していない人にとっては理解しにくいかもしれませんが、身近なところでは、「アマゾンポイント」や「ビックカメラのポイント」「楽天ポイント」「ケーキ屋さんのポイントカード」「商品券」などもトークンと呼ぶことができます。

トークンは「他の価値と交換できるもの」

仮想通貨に関心がない人にとっても、ポイントは身近で日常的な存在だと思います。「ポイント還元」「本日ポイント●倍」という広告やメルマガを見ると、ついつい買い物してしまうという人も多いかもしれませんね。

ポイントで買い物ができたり、クレジットカードの支払いにポイントが使えたり、ポイントをマイルに換えられたりと、ポイントサービスの利用の幅は年々広がっています。私もポイントで子どものオムツなどの日用品をよく買っています。買っているというより、感覚としてはもらっているというほうがしっくり来るかもしれません。

商品やサービスに換えられるということは、ポイントはお金の代わりとして利用できているということです。つまり、ポイントとお金はニアリーイコールだと言えます。そして、トークンは「他の価値と交換できる」という点でポイントとよく似ています。

ICOにおけるトークンは少しニュアンスが違う

トークンにはいくつかの種類がありますが、多くの方が知っているのは「ICOで配られるトークン」ではないでしょうか。ICOでは、単に「トークン」と呼ばれることもあれば、「セキュリティトークン」と呼ばれることもあります。ICOプロジェクトに出資(投資)すると投資家にトークンが配布され、ICOによって集められた資金により仮想通貨の開発が完了すると、受け取ったトークンを開発された仮想通貨(コイン)に換えることができる、という仕組みです。

「他の価値と交換できる」という点では、ICOで配布されるトークンは「ポイント」や「仮想通貨(コイン)」と同じ意味合いなのですが、ICOではまだ仮想通貨(コイン)は開発されていません。ですので、ICOにおけるトークンは「約束手形のようなもの」と表現したほうが良いかもしれません。

トークン発行は、ただの資金調達の手段になりつつある

2017年は仮想通貨ブームであり、ICOブームの年でもありました。そして、多くのICOプロジェクトが乱立しては消えていきました。ICOに投資したもののトークンの売買ができない「塩漬け状態のトークン」を保有している人も少なくないでしょう。

第14回の記事でご紹介したとおり、ICOプロジェクトは事業ですので、本来であれば事業責任者(企業であればCEOや役員)の自己資金や金融機関からの融資、私募債などで資金調達するべきだと私は思います。しかし、ICOが手軽な資金調達手段として知られたことで、本来は仮想通貨と無関係な事業でもICOが行われているケースがあります。

仮想通貨がさまざまなシーンで活用されるのは望ましいことですが、資金調達のために悪用されるのはどうかと思います。仮想通貨業界全体にとっても損失ですよね。

次回は、「トークンの種類」についてご紹介します。

執筆者プロフィール : 中島 宏明(なかじま ひろあき)

1986年、埼玉県生まれ。2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から仮想通貨投資、不動産投資、事業投資を始める。
現在は、SAKURA United Solutions Group(ベンチャー企業や中小企業の支援家・士業集団)、しごとのプロ出版株式会社で経営戦略チームの一員を務めるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。
オフィシャルブログも運営中。