ブームは去ったかのようにも感じる「仮想通貨」ですが、その普及は世界中で着実に進んでおり、今後もさまざまなシーンでの活用が期待されています。本連載では、「仮想通貨に興味はあるけれど、なにからどう手を付ければいいかわからない」というような方向けに、仮想通貨に関連するさまざまな話題をご紹介。仮想通貨を2014年より保有してきた筆者の経験から、なかなか人には聞きにくい仮想通貨の基礎知識や歴史、未来像などもわかりやすくお伝えします。

ホワイトペーパーとは

第14回のICOに関する記事で少し触れましたが、「ホワイトペーパー」は、ICOで資金調達をする際に仮想通貨の発行元などが公開する事業計画書のようなものです。

この事業計画書どおりにプロジェクトが進むのか、ホワイトペーパーが絵に描いた餅になるのかは、プロジェクトメンバー次第と言っていいでしょう。見栄えの良いホワイトペーパーを作ることはできますし、最近はICOに特化したコンサルティング会社もありますので、ホワイトペーパーを鵜呑みにすることはできません。

ホワイトペーパーには何が書いてあるの?

ホワイトペーパーに書かれている内容は、発行元によってさまざまです。すべての内容が含まれていないこともありますが、大まかには以下の内容が記載されています。

・プロジェクトの内容
・実施主体の情報
・プロジェクトメンバー
・使用するブロックチェーン
・コンセンサスアルゴリズム
・トークンの単位
・調達資金の使途
・トークンの配分
・トークンの配布方法
・ロードマップ
など

「プロジェクトの内容」というのは、開発する仮想通貨によって社会にどのような影響やインパクトを与えていくかということです。「現在なんらかの課題・問題があり、それを解決・解消する手段としてその仮想通貨が必要である」ということが書かれているホワイトペーパーが多いです。ホワイトペーパーの中でも、プロジェクトに関する説明には多くの分量が割かれています。

「実施主体の情報」や「プロジェクトメンバー」は、誰がICOプロジェクトの責任者なのかという点を明確にし、プロジェクトメンバーの経歴を載せることでプロジェクト実現の説得力を高める狙いがあります。

「使用するブロックチェーン」や「コンセンサスアルゴリズム」は、技術面のことです。送金・決済スピードやセキュリティに関わることですので、当然重要な項目ですね。

「トークンの単位」や「調達資金の使途」「トークンの配分」「トークンの配布方法」は、詳細に書かれていることが望ましいと思います。調達した資金は開発資金以外では何に使われるのか、アドバイザーへの報酬やPRなどの広報費用としても使われるのか、などが数字で明確になっていると、投資する側としても安心材料になり得ます。

また、「数年間は売却しない」などの条件付きでトークンが開発チームに割り当てられると、開発チームが開発完了後もプロジェクトから離れず専念すると考えられるため、システムの改良などの対応が速い可能性があります。

最後の「ロードマップ」は、未来予想図のようなものです。ホワイトペーパーは、ロードマップに比べるとより説明的で具体的な内容になっていますが、ロードマップはもう少しざっくりとした内容になっています。ホワイトペーパーに付帯するロードマップは、未来予想図というよりは進行計画案と訳したほうが的確かもしれません。

ホワイトペーパーがない仮想通貨は詐欺コインなの?

ICOを行う仮想通貨の場合、ホワイトペーパーは必須とも言える資料です。計画すらない事業プロジェクトに投資する人は皆無でしょう。経営者が銀行や金融機関、出資者(投資家)に対して「事業計画は特にないんだけど、とりあえず事業をスタートするのにお金がかかるから貸してよ」と言っているようなものです。そんなことを言われたら、正直なところ引いてしまいますよね。

一方、Fusion Coin(フュージョンコイン)のようにICOを行わず仮想通貨を開発した場合は、ホワイトペーパーがないこともあります。その場合は、ロードマップが公表されているはずです。

つまり、「ホワイトペーパーがない=詐欺コインだからNG」というわけではありません。しっかりしたホワイトペーパーがあっても、発行元と音信不通になるような仮想通貨は存在しますし、ホワイトペーパーの内容が必ずしも実現するわけではありません。

また、仮想通貨の価格は誰にも保証されませんので、仮想通貨取引所への上場後(あるいは、オフィシャルマッチングサイトなどで自由に売買できる状態になった後)に価格が下落する可能性は、どんな仮想通貨にもあります。

マイナビニュース別稿にて「仮想通貨に関する法規制」などについて解説していただいた中野秀俊弁護士も仰っていましたが、ICOに投資する際はホワイトペーパーを読み込むことが絶対に必要となります。

「ビジョンや世界観が好きで投資している」という中野弁護士の言葉が象徴的ですが、ホワイトペーパーやロードマップをみてワクワクしないなら、そのICOプロジェクトや仮想通貨には投資しないほうが良いでしょう。

次回は、「なぜ仮想通貨を持とうと思ったのか? 」についてご紹介します。

執筆者プロフィール : 中島 宏明(なかじま ひろあき)

1986年、埼玉県生まれ。2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から仮想通貨投資、不動産投資、事業投資を始める。
現在は、SAKURA United Solutions Group(ベンチャー企業や中小企業の支援家・士業集団)、しごとのプロ出版株式会社で経営戦略チームの一員を務めるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。
オフィシャルブログも運営中。