ブームは去ったかのようにも感じる「仮想通貨」ですが、その普及は世界中で着実に進んでおり、今後もさまざまなシーンでの活用が期待されています。本連載では、「仮想通貨に興味はあるけれど、なにからどう手を付ければいいかわからない」というような方向けに、仮想通貨に関連するさまざまな話題をご紹介。仮想通貨を2014年より保有してきた筆者の経験から、なかなか人には聞きにくい仮想通貨の基礎知識や歴史、未来像などもわかりやすくお伝えします。

やっぱり多い? 仮想通貨のネガティブ情報

前回は、仮想通貨に関するポジティブなニュースと発言をご紹介しました。今回は、ネガティブな情報をご紹介します。

ポジティブな面とネガティブな面の両方の情報を知ることは、投資を考えるうえで極めて大切なことだと思います。ネガティブニュースは主に、「価格下落」や「ICO詐欺」「取引所のハッキング」が考えられますが、仮想通貨の価格は保証されているものではないですし、ICO詐欺やハッキングに関する情報は事実確認が難しいため、今回は仮想通貨業界の著名人の発言や機関の情報を中心にお伝えします。

「仮想通貨の成長は頭打ちが近づいている」

イーサリアム(イーサ)の開発者として有名なヴィタリック・ブテリン氏は、2018年に「仮想通貨の成長が頭打ちに近づいてきている。仮想通貨は再度、1000倍の成長を示す機会はないだろう」と発言しています。同年9月に香港で行われたイーサリアム・インダストリー・サミット会議でのことです。

その理由は、「仮想通貨を導入するために、今までは広すぎる範囲をマーケティングの対象としてきたこと」「仮想通貨市場の評価額が、現在の2,000億ドルから世界中の総資産の70%に当たる200兆ドルになると予想するのは現実的ではないこと」としています。同時に、「仮想通貨は今後、実体経済の中での実用性を追求していく段階に入った」とも発言しました。

一方、イーサリアム(イーサ)の共同創業者であるジョセフ・ルービン氏は、ヴィタリック氏を尊重しつつも、「仮想通貨市場はまだスタート地点にいるにすぎない。ブロックチェーンの技術は今後、20年、30年間、経済や政治のシステムに対して影響力を持つ。現段階ではまだかなり未熟な技術だ。現在は資産と見なされるすべてのものが、将来的には仮想通貨の資産として表現されるようになるだろう。まだ成長は続く」と反論しました。

「2020年でも仮想通貨は日常で普及しない」

1991年に設立された、ヨーロッパの経済動向を調査・研究する非営利組織の研究機関である欧州経済研究センター(Zentrum fur Europaische Wirtschaftsforschung)は、以下の調査結果を公開しています。

「ビットコインやイーサリアムなどの仮想通貨は、2020年までにドイツで決済手段として普及しないと考えられている。ドイツで仮想通貨が持ち帰り用のコーヒーのような商品の支払い手段になる可能性については、2020年までに一般的になることが想像できると答えたのはわずか13%。アメリカと日本の場合では23%が想像できると答えた。また、2020年末までにドイツで音楽などのデジタル商品の代金を仮想通貨で支払えるようになる可能性があると回答したのは23%。アメリカは35%、日本は34%。仮想通貨が自動車の購入手段になるかについては、ドイツでは6%。アメリカでは15%、日本では13%という回答結果だった(調査対象:銀行、保険会社、複数の大企業の財務部における計300人の専門家)」

「私はビットコインのファンではない」

アメリカの連邦準備制度理事会(FRB)第15代理事会議長のジャネット・イエレン氏は、カナダ・フィンテック・フォーラムでビットコインに関する以下のような見解を述べました。

「率直に言ってビットコインのファンではない理由をお話しします。仮想通貨は何百種類もあり、中には魅力的なものも存在していますが……まず考えつくのはビットコインです。実際にビットコインが処理されている取引はごくわずかであり、多くのビットコイン取引は違法で不正なものだということでしょう。使い勝手の良い通貨となるためには価値の安定が必要ですが、ビットコインには無縁な話です。だから多くの取引では使われず、安定した価値の源泉にはなっていません。また、効率的な支払い手段になるには処理速度が遅すぎます」

決済や送金スピードの問題は、ビットコインが長く抱えている課題ですね。アメリカでは、マスターカード社などが法定通貨用の既存ネットワークを活用して問題解決に取り組むなど、改善に向けた動きがあるようです。

「仮想通貨の95%は消滅する」

仮想通貨企業であるビットワイズ社の研究責任者マット・ホーガン氏は、アメリカのブルームバーグ紙のインタビューで「仮想通貨の95%が消滅する」と発言しました。2000年代初頭のドットコムバブルを例に出し、「仮想通貨を投機としてしか捉えていない人が多い。バブルが弾ければ、仮想通貨のほとんどは淘汰されることになるだろう。しかし、ドットコムバブルの後にグーグルやアマゾン、フェイスブックといった時代を変えた企業が頭角を現してきた。淘汰され、生き残ったものは大きく成長する可能性を持っている」としています。

私も、ここ数年で淘汰が進むと思います。各国の法規制が進むことで、資金的・業務的に耐えられない詐欺的仮想通貨は徐々に消滅していくでしょう。投資する側としても、それは喜ばしいことです。数年が3年なのか5年なのか10年なのか、それは私にはわかりませんが。

次回は、「仮想通貨に価値はあるのか?」についてご紹介します。

執筆者プロフィール : 中島 宏明(なかじま ひろあき)

1986年、埼玉県生まれ。2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から仮想通貨投資、不動産投資、事業投資を始める。
現在は、SAKURA United Solutions Group(ベンチャー企業や中小企業の支援家・士業集団)、しごとのプロ出版株式会社で経営戦略チームの一員を務めるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。
オフィシャルブログも運営中。