「人生100年時代」と言われる現代。20代でも早いうちから資産形成を進めることが求められています。一方で、どのように投資・資産運用の目利き力を磨いていけばいいのか、悩んでいる方は多いのではないでしょうか。

この連載では、20代の頃から仮想通貨や海外不動産などに投資をし、現在はインドネシアのバリ島でデベロッパー事業を、日本では経営戦略・戦術に関するアドバイザーも行っている中島宏明氏が、投資・資産運用にまつわる知識や実体験、ノウハウ、業界で面白い取り組みをしている人をご紹介します。

今回は、AIやビックデータを活用したマイニングマシンを開発・運用しているゼロフィールドの代表取締役・村田敦氏にインタビュー。

業務管理を可視化するサービスQaseeの開発・運用を行うなど、マイニングマシンとは全く異なるビジネス領域でも活躍されている村田氏に「事業投資としての仮想通貨マイニング事業が持つ可能性」について伺いました。

  • 村田敦氏/株式会社ゼロフィールド・Qasee株式会社 代表取締役。1983年生まれ。福岡県北九州市出身。高校卒業後、警察官として約10年間、初級幹部としてマネジメント業務に携わった後、ITシステム開発を行う株式会社ゼロフィールドを創業。事業は初年度から黒字化し、2019年2020年と雑誌経済会の注目企業にも選出。これまでの組織マネジメント経験を生かした新たなシステムQaseeを開発、Qasee事業を分社化し現在に至る

なにもないゼロから世界をあっと言わせる企業を作りたい

――村田さんとは、共通の友人から「AIやビックデータを活用したマイニングマシンを開発している優秀な社長がいる」とご紹介していただいたのが出会いでしたね。お話を伺うと、マイニングマシン開発だけでなく業務管理の領域のお仕事もされていて、しかも元警察官とお聞きしてとても興味が湧きました。元警察官の村田さんが、なぜマイニングマシン開発に行き着いたのでしょうか?

村田氏: 福岡の高校を卒業して、神奈川県警察で10年ほど勤務していました。私が警察官として勤務していた時代の警察業務は、まだまだアナログでの業務が主流で、警察の職務上、仕方がないことなのかもしれませんが、当時は、セキュリティリスクの観点から中々IT化が進まず、業務はいつも非効率、残業は常態化し、いつも現場は疲弊していました。今の時代は、警察も働き方改革が進んでいてそんなことはないと思いますが。

一方で、その当時、ものすごい勢いでインターネットが普及していて、新しい仕組みやサービスが次から次へと生み出されていて、時代が大きく動いているような感覚を持っていました。

警察官という職業自体に不満はなく、世の中に貢献できているという充実感もあったのですが、どんどん進化を続けていくテクノロジーが持つ壮大な可能性の虜となっていきました。

自らそれらを活用して新たなサービスを生み出し、もっと多くの人に大きな価値を提供していきたいという思いが強くなっていき、警察官を辞めてIT会社に転職しました。警察を辞めたときに起業することは決めていたので、起業するタイミングを模索していた感じですね。

技術変革は、多くのチャンスをもたらしてくれるものだと思います。「なにもないゼロから世界をあっと言わせる企業を作りたい」「新しい価値を、自らの手で生み出していきたい」。そんな風に考えるようになり、同じ考えを持ったメンバーが集まってテクノロジー企業としてゼロフィールドを設立しました。

「テクノロジーで世の中をより良く変える」というビジョンだけあって、「じゃあ、なにをつくろうか?」と。それで、マイニングマシンに着目しました。

マイニングマシンは、ゼロから仮想通貨(暗号資産)という"価値"を生み出しています。なんだかすごいものに思えたんですよね。仮想通貨(暗号資産)はデジタルの世界ですから、ビックデータを活用して答えを出していくことができます。そこは得意な領域だったので、最高のマイニングマシンを開発しようと。

起業当時は、クラウドマイニングが流行っていて詐欺が横行していました。技術で勝負している開発会社がほとんどなかったので、自分たちのバリューを発揮できると確信できたのもあります。先行優位性が高かった時期でもありますから、自分たちで新しいスタンダードを創っていこうと考えました。

マイニングマシン開発は日進月歩の世界

――実際にマイニングマシン開発に携わってみて、印象はどうでしたか?

村田氏: やり始めてみると、「すごいイノベーションだ」と改めて感じましたね。サービスを提供して、その対価としてお金を得るのが普通ですが、マイニングはハードウェアが価値を生み出しています。それに、マイニングは技術が伴うので知れば知るほど奥深い世界です。

――そうですよね。エンジニアの方々は、例えば「暗算を0.01秒でも速くするには」「サイトの表示を0.01秒でも速くするには」と、日進月歩で日々技術の向上を図っているわけですよね。マイニングを行う人たち(マイナー)は、「パソコンが働いてくれる」と表現することがありますけど、簡単・シンプルに見える裏側では、すごい技術が働いているわけで。

村田氏: いかに効率的にマイニングできるかを算出できることが自分たちの強みですので、その技術には自信がありますね。

エコでサスティナブルなマイニングマシンを実現する

――ゼロフィールドさんが開発するマイニングマシンには、どのような特徴があるのでしょうか?

村田氏: AI・ビックデータを活用して、長期的観点で最適化されたマイニングができることが強みです。リターンに見合った電力になるように最適化し、コストを削減しています。

仮想通貨(暗号資産)でよく問題になるのは、「エコではない(消費電力が多い)」ことです。仮想通貨(暗号資産)でなくても、レンダリングや演算処理、ディープラーニング…いずれも消費電力は大きいのですが、仮想通貨(暗号資産)は消費電力の面で批判されがちです。この問題を解消して、よりエコで簡単に仮想通貨(暗号資産)を活用できる社会をつくっていきたいですね。

仮想通貨(暗号資産)を支えるブロックチェーンによって、「トラストレス=信用する必要なく、価値を送り合える」「改ざんリスクがない」というのは、本当に画期的な技術で将来の可能性も高いものだと思います。ただエコではない。消費電力の問題を解決することで、持続可能な事業により一層なっていくと考えています。

――そうなると、マイニングマシンも時流に合った投資対象になりますね。単なるブームではなく、仮想通貨(暗号資産)の取引を支えるインフラ事業としてマイニングマシンの購入を考える人や企業も増えていくと思います。仮想通貨(暗号資産)のユーザーからすると、マイニング事業者がいないと取引ができませんからね。ところで、ゼロフィールドさんのマイニングマシンは直販だけなのですか?

村田氏: リンク・ソリューションさんという、事業投資のコンサルティングを行っている企業さんとパートナーシップを結んでいます。リンク・ソリューションさんに販売はお任せしています。仰るとおり、マイニングマシンは仮想通貨(暗号資産)取引のインフラとして、今後ますます必要とされると思います。マイニングという、「新しい価値の創出方法」をもっと多くの人に知ってほしいですね。

――そうですね。マシンが仮想通貨(暗号資産)という直接的な価値を生み出しているというのが面白いですよね。私のなかでは、マイニングマシンという事業投資は、不動産投資やコインランドリー事業投資に近い感覚があります。

多くの人を雇うわけではないので、マネジメントの気苦労や負担が少ない。しかし一方で、不動産は局地投資なので、大通りを挟んで向かい同士にある物件でも同じリターンを得られるかはわからないですし、間取りやデザイン、周辺環境など多くの条件があってリターンが見込めるわけで、不確定要素も多いですよね。2棟・3棟と増やそうと思っても、良い条件の物件がポンポン見つかるわけではない。

でもマイニングマシンの場合、マシンを増やせば良いだけなので再現性が高い。多角経営化の選択肢としては程良いのではないかと思います。

村田氏: 中島さんは仮想通貨(暗号資産)のホルダーでもありますが、今から仮想通貨(暗号資産)への投資を始めるなら、トレードとマイニングマシンのどちらを選びますか?

――ビットコインで言えば、もう1BTC=600万~700万円になっていますよね。早かれ遅かれ1BTC=1000万円は超えると思っているので、今から買っても遅くはないと思います。それに、『今でも案外多い? 仮想通貨に関する3つの勘違い』で書いたように1BTCからしか買えないわけではないですからね。安いときに買った方が利幅は大きいですが、今からならドルコスト平均法でコツコツ定額で買い、暴落したらいつもより多めに買うのが現実的ですね。ただ、いつ暴落するかはわからないですから、買ったときよりも価値が下がる可能性はもちろんあります。

マイニングマシンであれば、税効果もありますし、仮想通貨(暗号資産)の価値は変動するにしてもマイニングによって得られた仮想通貨(暗号資産)の枚数が減ることはないので、インカムゲインを仮想通貨(暗号資産)で得られると考えればメリットはあるのではないでしょうか。

マイニングマシンを買えるまとまった資金があれば、良い選択肢だと思います。マイニングによって得られた仮想通貨(暗号資産)を売却するタイミングは、マシンオーナーの自由ですから、長期保有しても良いですしね。

テックカンパニーとしてAI・ビッグデータをフル活用

――村田さんが経営されているゼロフィールドさんとQaseeは、マイニングマシンと業務管理でビジネス領域が全く違いますし、マイニングマシン事業者ではなくて「テックカンパニー」という感じですよね。そういう方が仮想通貨(暗号資産)の世界に関心を寄せてくださるというのは、業界関係者としてはうれしいです。

村田氏: まさにテックカンパニーです。AI・ビックデータ活用のインフラ、ソリューションとして2つの会社を捉えています。今はこの2つの事業に集中していますが、今後ビジネス領域が広がっていく可能性は大いにあります。自分たちの強みを活かせることで、社会に貢献していきたいですね。