「都心では物価が高いので、生活していくのが大変だ」または「地方は物価が安いので、生活費が都心に比べてあまりかからない」と世間で言われていることは、本当なのでしょうか。
お金の扱い方について、都心部と地方部では、違いがないのでしょうか。
「満員電車から解放されたい」、「もっと自然の近くで暮らしたい」などの思いから、地方移住を夢見る東京育ちの人が増えています。しかし、いざ本格的に情報収集を始めると、ふと現実的な不安が頭をよぎる人もいるでしょう。
「車がないとコンビニにも行けないのでは?」、「夜道が暗すぎて怖いかも」、「虫が苦手なのに耐えられるだろうか」など。生まれたときから「便利さ」が当たり前のように存在していた東京育ちの人にとって、地方の不便さは想像以上に心理的なハードルとなります。結果として、移住への一歩を踏み出せずに断念してしまうケースは少なくありません。
もし、「地方=大自然の田舎」という極端なイメージをお持ちでしたら、そのイメージを一度脇に置いてみましょう。東京育ちの移住ファーストステップとして、提案したいのが、「県庁所在地周辺に住む」という選択肢です。
1.利便性と地方の魅力が調和する、県庁所在地
県庁(あるいは府庁、道庁)が置かれている街は、言うまでもなく、その地域の行政、経済、文化、そして交通の中心地です。
東京でいえば、23区の中心部に住むような利便性が、コンパクトな規模に凝縮されています。駅周辺には商業施設や飲食店が集まり、公共交通機関もある程度整備されているため、車をすぐに所有しなくても生活を始められる利点があります。
「それでは東京に住んでいるのと変わらないじゃないか」と思うかもしれませんが、そんなことはありません。県庁所在地の最大の魅力は、「都市の利便性を享受しながら、その地域ならではの深い文化や歴史、自然にすぐ手が届く」という絶妙なバランスにあります。まずは、その地域の中心に身を置き、じっくりと腰を据えて、その地域の本当の姿を調べたり、見たりしながら味わってみる。それこそが、東京育ちの人にとって、最もリスクが少なく、かつ、豊かな移住の始め方かもしれません。
2.熱気に触れ、歴史を知る。街を彩るお祭りの魅力
その地域の文化や歴史に最も手軽に、そして深く触れる方法の1つが、地元で愛され続けている「お祭り」に参加することです。県庁所在地では、大規模なお祭りが数多く開催されます。
例えば、石川県金沢市で開かれる「金沢百万石まつり」は加賀藩祖・前田利家公が金沢城に入城した偉業を称える、街を挙げた一大イベントです。豪華絢爛な百万石行列が初夏の金沢を彩る様子は圧巻で、この街が積み重ねてきた歴史の重みを肌で感じることができます。
また、東北の力を1つに集結した「東北絆まつり」も有名です。東北6県の県庁所在地を持ち回りで開催されるこのお祭りは、青森ねぶた祭、秋田竿燈まつり、盛岡さんさ踊り、山形花笠まつり、仙台七夕まつり、福島わらじまつりが一堂に会します。震災からの復興を願い、多様な文化と熱意を持った東北が固い絆のもと団結する姿を間近で体感できるのは、まさに中心地ならではの特権と言えるでしょう。
観光客として外から眺めるだけでなく、住民としてこうした熱気に包まれることで、「この地域の一員になった」という深い愛着が芽生えていくはずです。
3.「安心」と「刺激」が同居するインフラの強み
実生活における安心感という面でも、県庁所在地には大きなメリットがあります。
近年、日本各地で自然災害が相次いでいますが、万が一の災害時には、県庁所在地に最新の情報や物資が最も早く集まる傾向にあります。地域の行政中枢が機能しているため、避難情報の伝達や復旧への動きもスピーディーで、土地勘のない移住者にとっては大きな安心材料になります。
一方で、退屈とは無縁の「刺激」もあります。県庁所在地にある美術館や劇場、公園などでは、週末ごとにさまざまなイベントや物産展などが開催されます。地方で「のんびりした時間」を過ごしながらも、休日は感性を刺激されるイベントにふらっと足を運ぶ。このバランスの良さは、東京育ちのライフスタイルにも自然に馴染むことでしょう。
4.現実的な注意点:家賃は「東京の郊外」並み
ここまで県庁所在地の魅力をお伝えしてきましたが、移住を成功させるためには、リアルなお金の話にも目を向ける必要があります。
地方移住の動機として「生活費を安く抑えたい」「家賃を劇的に下げたい」と考える人は多いでしょう。しかし、県庁所在地は、その地域で最も住む場所として人気があるエリアです。そのため、家賃相場は、決して「格安」ではありません。物件によっては、東京の郊外とさほど変わらないところもあります。
県庁所在地周辺に住むのであれば、住居費に関しては、想定よりも多めに予算を準備しておくのが賢明です。
終わりに:自分に合った「地方へのグラデーション」を見つけよう
東京で育ったからといって、地方移住を諦める必要はまったくありません。大事なのは、自分のこれまでの生活習慣といきなり決別しようとしないことです。
まずは、行政や文化の中心である県庁所在地で、その地域の歴史を学び、お祭りに興奮し、美味しい地元の食に舌鼓を打つ。そうして地域との距離を少しずつ縮めていくうちに、あなたにとっての「心地よい暮らしのバランス」がきっと見つかるはずです。
大自然への完全移住の前に、まずは「地方の都市」というクッションを挟んでみる。そんな一歩から、新しい生活を始めてみませんか?
