「都心では物価が高いので、生活していくのが大変だ」または「地方は物価が安いので、生活費が都心に比べてあまりかからない」と世間で言われていることは、本当なのでしょうか。
お金の扱い方について、都心部と地方部では、違いがないのでしょうか。
連載コラム「地方の生活コストは本当に安いのか?」では、ファイナンシャル・プランナーの高鷲佐織が、実際に東京と地方、両方の生活を経験して感じたことを交えながら、お金に関する情報などをお伝えいたします。
東京23区の利便性の高いマンションから、自然豊かな地方へ住まいを移す。それは、豊かさを再定義する素晴らしい選択の1つだと思います。しかし、移住後に多くの人が最初に直面するカルチャーショックは、意外にも「ゴミ捨て場」で起こります。
今回は、東京23区のマンション暮らしと地方暮らしにおける「ゴミ出し」の違いについて掘り下げてみましょう。
1.「24時間いつでも」という利便性の消失
東京都心部にあるマンションの多くは、敷地内に専用のゴミ置き場を備えています。最大のメリットは、「365日24時間いつでもゴミを出せる」という点でしょう。
・管理人の存在:住民がゴミを置けば、マンションの管理人さんがゴミ置き場を管理し、ごみ収集車の到着に合わせて立ち会ってくれます。
・ストレスフリーな室内:生ごみが出れば、その場ですぐにゴミ置き場へ持っていけるため、室内に不快な臭いやゴミが溜まることはありません。
しかし、地方暮らし(あるいは一軒家暮らし)に移行した瞬間、この高い利便性はなくなります。ゴミ出しは「気が向いた時」にやるものではなく、「自治体が決めたスケジュール」に自分を合わせるものへと変わるのです。
2.冷蔵庫の主役は「ゴミ出しカレンダー」
地方へ移住して真っ先に手に取るのは、おしゃれなインテリア雑誌ではなく、自治体から配布される「ゴミ出しカレンダー」です。
私自身も23区内から地方へ引っ越しした際、最初に行ったのは、このカラフルなカレンダーを冷蔵庫に貼ることでした。
「明日は、月に2回しかない不燃ゴミの日だ。袋のストックはあったかな?」、「明後日はプラスチック資源の日。今日は洗って乾かしておこう」など、毎日のようにスケジュールを確認する生活が始まりました。寝坊して朝の回収時間(朝8時までなど)に間に合わなければ、そのゴミ捨てができるのは、次の収集日までの1週間後、あるいは1カ月後となります。都心部での暮らしでは意識すらしなかった「ゴミ収集サイクル」を生活リズムの中に入れる必要があるのです。
3.「ゴミ袋代」というコスト意識
2026年5月現在、東京23区においては、家庭ごみを捨てる際に自治体指定の「有料ゴミ袋」を購入する制度(家庭ゴミの有料化)は導入されていません。中身が見える透明・半透明の袋であれば、市販の安価なポリ袋で捨てることができます。
一方で、東京都内であっても多摩地域の全市町村ではすでに有料化が導入されており、地方都市の多くも「自治体指定の有料ゴミ袋」を採用しています。1枚数十円というコストがかかるようになると、ゴミ捨てに対する意識は劇的に変わります。
「いかにゴミを出さないか」、「いかに資源としてリサイクルに回すか」を真剣に考えるようになり、環境意識を高めるきっかけにもなります。また、購入した物は、大事に扱うようになります。
4.地域のコミュニティとしての「ゴミ置き場」
マンション内のゴミ置き場は、誰がいつ出したかがわからない匿名性の高い空間ですが、地方にあるゴミ置き場は、「その地域に住む人たちの共同管理」です。「誰かがやってくれる場所」から、「自分たちで維持する場所」へ変わります。これは少し面倒に感じるかもしれませんが、近隣住民と顔を合わせ、挨拶を交わす「ちょっとした交流」の場でもあります。ルールを守ることは、その土地のコミュニティに受け入れられるための第一歩です。
5.終わりに
東京23区の「至れり尽くせり」なゴミ捨て環境は、非常に特殊で恵まれたものです。そこから離れることは、不便さを引き受けることでもありますが、それは同時に「自分が出したゴミに責任を持つ」という丁寧な暮らしの始まりでもあります。カレンダーをチェックし、指定の袋に分別して詰める。そんな小さな手間を楽しむ心の余裕こそが、地方暮らしを豊かにする秘訣かもしれません。都会の感覚を一度リセットして、新しい地域のルールを軽やかに受け入れていけたら、地方暮らしはさらに充実した日々となるでしょう。
