今回解説するチャットのマナーは、「見やすく書く」だ。以前にも解説したとおり、チャットは会話調でやり取りができるので、メールのように硬く冷たい表現にならずに済むというメリットがある。しかし、会話調でだらだらと長いチャットだと、確認・検討が必要な情報が余計なやり取りの中に埋もれてしまう。特に、何かしらの課題を解決する(結論を出す)ためのディスカッションのチャットでそれをやられてしまうと、話が脱線したり確認・検討事項が漏れてしまったり、揚げ句の果てには何を議論しているのか分からなくなってしまう。
また、一文が長すぎたり、話にまとまりがなかったり、質問なのか自分の意見を述べているだけなのか分からないチャットが送られると、途中から何を言っているのか分からなくなってしまう。チャットはメールと違って「書きやすい」ので、ついつい書きすぎてしまう傾向にあるのだが、それがデメリットにもつながるのだ。
さらに、一つのチャットの中で複数の質問・依頼があると、いくつか見逃してしまい、途中で回答・対応することを忘れてしまって漏れが生じる可能性がある。特にチャットはハイスピードでテンポ良く進むので、前のチャットがタイムラインに流れてしまいがちだ。
「見やすく書く」4つのテクニック
そこで、特に情報量が多くなってしまうチャットを送る際は、確認・検討をすべき情報がどれなのか、回答・対応をしなくてはならない質問・依頼はどれなのか、ひと目で分かるよう、見やすく書くことが必要になる。そのための具体的なテクニックは、以下のとおりだ。
(1)箇条書きを使う
番号を振り、冒頭に「・」を入れるなどして箇条書きを使えば、情報が整理される。
(2)一文を短く、ワンセンテンス・ワンテーマにする
一文が長いと途中で何の話か分からなくなるし、目で追っているだけでも息継ぎができなくなる。一文を短く、ワンセンテンス・ワンテーマにすれば、文書が理解しやすくなる。
(3)順番に切り出す
質問や依頼が複数にわたるときや、伝えたい情報量が多いときは、一気にまとめてチャットを投げるのではなく、順番に切り出す。
(4)冒頭に結論やテーマを示す
チャットが長くなる場合は、冒頭に結論やテーマを示して、その後に続くチャットが何に関するものなのかガイドする。
まず冒頭で、「最初に、代理店契約の仕組みについて解説します。」と、これから送るチャットのテーマを示している。解説の文書も、箇条書きを使っているし、一文が短く、ワンセンテンス・ワンテーマになっている。
また、解説を一つのチャットに全てまとめて送るのではなく、テーマごとに(「1.契約関係」「2.販売店・代理店の売り上げ」という感じで)切り出して順番に送っている。こうすることで、代理店契約の仕組みというややこしいテーマであっても、顧問先企業が理解しやすくなっているのだ。
「見やすく書く」ことで、相手にチャットが伝わりやすくなり、ハイスピードでテンポ良く進むというチャットのメリットを最大化させるというのが、チャットのマナーである。
執筆者プロフィール:藤井 総(ふじい そう)
第一東京弁護士会所属『弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所』代表弁護士
慶應義塾大学法学部法律学科在学中に司法試験合格。2015年に独立し事務所を設立。「世界を便利にしてくれるITサービスをサポートする」ことを使命(ミッション)に掲げ、IT企業に特化した法務顧問サービスを提供している。顧問を務める企業は2019年現在で約70社。契約書・Webサービスの利用規約(作成・審査・交渉サポート)、労働問題、債権回収、知的財産、経済特別法など企業法務全般に対応している。自身もITを活用したテレワークスタイルを実践。年間の約1/3は世界を旅しながら働く”ワーク・アズ・ライフ”を体現している。