今回解説するチャットのマナーは、「チャットだけにこだわらない」だ。これまで解説してきたとおり、チャットはとても便利なコミュニケーション手段だ。そのため、ついついどんなやり取りもチャットで済ませがちになる。とはいえ、コミュニケーションの中にはチャットが向かない場面がある。また、チャットでのやり取りが苦手な人もいる。

  • チャットでのやり取りが苦手な人とはどのようなやり取りをすれば良いのか?

    チャットでのやり取りが苦手な人とはどのようなやり取りをすれば良いのか?

チャットが向かない場面は2つ

1つ目は、相手を褒めたり叱ったりフォローしたりするなど、相手の顔を見ながら話す必要があるときだ。文字だけでは、どうしてもキツイ印象を相手に与えてしまい、こちらの温度感が伝わりにくい。また、相手の顔が見られないと、こちらの話がちゃんと伝わっているのか、相手が今どんな気持ちなのかなどを汲み取ることができなくなってしまう。

2つ目は、キックオフミーティングや企画立案など、議題が明確・具体的ではなく、各自思い思いに発言して、場の盛り上がりや空気感の共有が必要なときだ。これをチャットでやると、話がまとまらなかったり、盛り上がりに欠けたりしてしまう。

また、テキストコミュニケーションであるチャットをスムーズに行うためには、文書作成力、読解力がある程度必要になる。しかし、その能力が高くない人が少なからずいるのだ。そういう人と無理にチャットでやり取りをすると、こちらの言っていることが伝わらなかったり、誤解されたり、相手の言っていることが分からなかったりして、かえってコミュニケーションコストが生じることになってしまう。

筆者も以前はチャット原理主義者のようになって、クライアントとのやり取りは全てチャットだけにしようとしたこともあったが、色々と不都合が生じてしまった。

  • 筆者とチャットでやり取りすることに不満を示された顧問先企業からの連絡

    筆者とチャットでやり取りすることに不満を示された顧問先企業からの連絡

例えばこれは、筆者とチャットでやり取りすることに不満を示された顧問先企業からの連絡だ。顧問先企業からのフワッとした相談に対して筆者が矢継ぎ早にチャットで質問を投げかけることが続いたところ、音を上げられてしまった。

とはいえ、一度チャットの便利さを知ってしまうと、対面での打ち合わせがどうしても面倒に感じられてしまう。そこで筆者がよく使うのがテレビ会議だ。有名どころだと「Skype」があるが、最近は「zoom」など、相手がアカウントを持っていなくてもテレビ会議グループのURLをワンクリックするだけで参加できるような(しかも無料の)便利なテレビ会議システムがある。

  • 筆者から顧問先企業にテレビ会議を提案している場面

    筆者から顧問先企業にテレビ会議を提案している場面

例えばこれは、顧問先企業が筆者に相談するにあたり、背景の説明をチャットでまとめることが難しそうだったので、筆者からテレビ会議を提案している。

これまでの記事で解説してきたとおり、チャットは現代のビジネスの場で最も優れたコミュニケーションの手段ではあるが、「チャットだけにこだわらない」、つまり場面や相手によっては「対面」か「テレビ会議」を選択するというのが、チャットのマナーである。

執筆者プロフィール:藤井 総(ふじい そう)

第一東京弁護士会所属『弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所』代表弁護士

慶應義塾大学法学部法律学科在学中に司法試験合格。2015年に独立し事務所を設立。「世界を便利にしてくれるITサービスをサポートする」ことを使命(ミッション)に掲げ、IT企業に特化した法務顧問サービスを提供している。顧問を務める企業は2019年現在で約70社。契約書・Webサービスの利用規約(作成・審査・交渉サポート)、労働問題、債権回収、知的財産、経済特別法など企業法務全般に対応している。自身もITを活用したテレワークスタイルを実践。年間の約1/3は世界を旅しながら働く”ワーク・アズ・ライフ”を体現している。