今回解説するチャットのマナーは、「チャットにパーソナリティを乗せる」である。第1回の記事でも解説したとおり、メールのメリットはテキストベース(テキストが残るので言った言わないのトラブルにならない)なところにあるが、逆にそのために、表現が硬く冷たくなりがちというデメリットがある。

  • チャットにパーソナリティを乗せるメリットは?

    チャットにパーソナリティを乗せるメリットは?

しかしこれがチャットなら、会話調でやり取りができるので、メールのように硬く冷たい表現にならずに済むというメリットがある。それに、大抵のチャットサービスの機能としてメッセージの削除・編集機能があるので、ついカッとなってキツイ表現のチャットを送ってしまっても、一呼吸おいて見返して「これはマズいな」と思ったら削除・編集も可能だ。

ところが、せっかくチャットを使っているのに、メールのような硬く冷たい表現を使ってしまう人が多い。情報共有や報告だけを目的としたチャットならそれでもいいが(むしろそれが適しているが)、皆でディスカッションをするようなチャットでそれをやられてしまうと、場の空気が悪くなる可能性もある。「この人は気分を害しているのかな?この意見に反対なのかな?」と他のメンバーにいらぬ気遣いをさせてしまったり、萎縮させたりして、皆が発言がしにくくなり、結果としてディスカッションが盛り上がらずに終わってしまう。

1対1のチャットでもそれは同じで、チャットで相談をしたところ、相手からそういうチャットが返ってきたらやり取りは続かないし、「この人に相談するのはやめよう」と思われてしまうだろう。

そこで、チャットには(特にそれが、ディスカッションや相談を目的としたもののときは)パーソナリティを乗せるべきだ。具体的には、表現はなるべく会話調でフランクにする。自分の気持ちや感想を一言入れる。「ありがとうございます」や「いいですね」といったポジティブな表現を使う。といったところだ。これらは、自分では「やりすぎでは?」と思うくらいがちょうどいい。スピーチや写真撮影で、「ゆっくり話しすぎでは?」「笑顔すぎでは?」と自分では思っていても、実際はそれでも話すスピードが速かったり、表情が硬かったりするのと同じ話だ。

また、チャットでは自分のアカウントのアイコンを設定できるのだが、これをデフォルトのまま(大抵の場合は灰色のシルエット)にしている人も多い(前回の記事で紹介した方も、アイコンがデフォルトのままになっている)。メールならまだしも、タイムライン上で会話調のやり取りが進むチャットでそれをすると、チャットが無機質な感じがするというか、発言者に人間味が感じられなくなってしまう。ぜひとも自分の顔写真(それも笑顔のもの)をアイコンに設定しよう。そうすれば、その人が気分よく発言をしているように相手からは感じられるだろう。

  • 筆者と顧問先企業のメンバーとのチャットでのやり取り

    筆者と顧問先企業のメンバーとのチャットでのやり取り

例えばこれは、筆者と顧問先企業のメンバーとのやり取りだ。筆者は2017年の年末休暇でバリにいて、その際に顧問先企業から相談を受けたので、回答がてら今バリにいることを伝えてその様子を写真で送ったところ、皆から盛り上がる反応が返ってきた。弁護士というと、どうしてもお堅くて、下手に相談をしたら厳しい返事が返ってきそうなイメージを持たれがちだが、それではクライアントから気軽に相談をしてもらえず、顧問弁護士として役に立たないことになってしまう。あえて弁護士のイメージを崩すような表現を使い、アイコンを笑顔の顔写真にすることで、親しみを持ってもらい、気軽に相談できる雰囲気を作っているのだ。

「チャットにパーソナリティを乗せる」。つまり表現は会話調でフランクに、自分の気持ちや感想を一言入れて、ポジティブな表現を使い、アイコンは自分の笑顔の写真を使う、というのがチャットのマナーである。

執筆者プロフィール:藤井 総(ふじい そう)

第一東京弁護士会所属『弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所』代表弁護士

慶應義塾大学法学部法律学科在学中に司法試験合格。2015年に独立し事務所を設立。「世界を便利にしてくれるITサービスをサポートする」ことを使命(ミッション)に掲げ、IT企業に特化した法務顧問サービスを提供している。顧問を務める企業は2019年現在で約70社。契約書・Webサービスの利用規約(作成・審査・交渉サポート)、労働問題、債権回収、知的財産、経済特別法など企業法務全般に対応している。自身もITを活用したテレワークスタイルを実践。年間の約1/3は世界を旅しながら働く”ワーク・アズ・ライフ”を体現している。