今回解説するチャットのマナーは、「とにかく即レス」だ。第2回の記事でも解説したとおり、チャットは、会議や電話のような「同期」(相手と時間を合わせる必要がある)と、メールのような「非同期(お互い都合の良いタイミングでよい)のいいとこ取りの、「半同期」のコミュニケーション手段だ。

  • チャット利用、「即レス」のメリットとは

    チャット利用、「即レス」のメリットとは

事前に開始時間を決めてリアルタイムでやり取りをする必要はないが、早めにレスを返すことでテンポ良くやり取りをすることができる。特に、スマホネイティブ世代の若いビジネスパーソンは、LINEでのハイスピードなやり取りに慣れている。メール世代のビジネスパーソンにとって、メールの返事が翌日というのは、別におかしくない(むしろ早い)としてもだ。

メール世代といえば、筆者が社会人になりたてのときに読んだビジネス書では、メール仕事術として「メールの確認は朝と夕方の1日2回にすべきだ。メールを確認し返信をしていると集中力が途切れてしまうし、1日中メールの対応に追われることになってしまう。できるビジネスマンはメールに振り回されない」みたいなことが書いてあった。

確かに、1通1通が重くて長く、返信を書くのも一苦労なメールではそれが合理的だったかもしれないが、細かいメッセージがテンポよくやり取りされるチャットで1日2回しか返事が返ってこないとなると、やり取りが全然進まないことになってしまうし、「この人はちゃんとチャットを確認しているのかな?」と、相手をヤキモキさせることになってしまうだろう。

それに、即レスが返ってくると相手は安心をしてくれる。場所を越えて、相手とつながっていることを感じられるのだ。

  • 筆者が顧問先企業からの相談を受けたときのやり取り

    筆者が顧問先企業からの相談を受けたときのやり取り

例えばこれは、筆者が顧問先企業からの相談に即レスをしたときのやり取りだ。14:55に来た相談に対して、その直後の14:56と14:57に返信をしている。それに対して顧問先企業は、「お返事早すぎて本当に助かりますー!!」と喜びのチャットを返してくれている(15:02に)。ちょうどこのとき筆者はパソコンを開いてチャットの画面を見ていたので、こんな短時間で即レスができたのだ。とはいえ、内容によっては即レスできないチャットが来ることもあるだろう。そのときはどうすればいいか。

  • 筆者が顧問先企業からNDA(秘密保持契約書)のチェックを依頼されたときのやり取り

    筆者が顧問先企業からNDA(秘密保持契約書)のチェックを依頼されたときのやり取り

これは、筆者が顧問先企業からNDA(秘密保持契約書)のチェックを依頼された際のやり取りだ。契約書のチェックなので、即レスで対応できるような話ではない(チェックに多少の時間がかかる)。そこで筆者は「明日確認しますね。」と返信をしている。その返信は、依頼があった16:13の1分後の16:14に送信している。これによって相談者は、私(藤井)がチェックの依頼を即座に把握したこと、そして対応が明日になることを確認でき、安心しているのだ。ひとまずチャットは認識したこと、そしていつまでに何のアクションをするのか、それだけでも即レスで返信しておくべきだろう。

では、いったいどうすれば即レスができるのか。それには、チャットを受信したらデスクトップにポップアップで通知される設定にしたり、一定時間見ていない未読チャットがある場合にメールで通知される設定しておくことで、見逃しを防ぐのが有効だ(大抵のチャットサービスにはそのような機能がある)。また、パソコンを開いているときは、常にチャット画面を表示しておいたほうが良いし、スマホにチャットのアプリを入れておき、隙間時間でも対応できるようにしたほうが良いだろう。

また、相手が即レスができるよう、こちらが送るチャットも工夫をすべきだ。予測される相手の答えを取り込んだ形で自分の結論を含めた長文をいきなり送ったり、質問項目や依頼項目が多岐にわたる長文をいきなり送ったら、相手としても返事をする必要があるのか疑問に感じたり、返事をするのが億劫になってしまうだろう。相手の即レスが返ってくることを前提に、伝えたいことを順番に切り出していくのが良いだろう。

「とにかく即レス」。それは単なる心構え、精神論ではなく、自分が即レスできるような設定にしておくこと、そして相手が即レスしやすいよう内容を整理してチャットを送るようにすること、というのがチャットのマナーである。

執筆者プロフィール:藤井 総(ふじい そう)

第一東京弁護士会所属『弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所』代表弁護士

慶應義塾大学法学部法律学科在学中に司法試験合格。2015年に独立し事務所を設立。「世界を便利にしてくれるITサービスをサポートする」ことを使命(ミッション)に掲げ、IT企業に特化した法務顧問サービスを提供している。顧問を務める企業は2019年現在で約70社。契約書・Webサービスの利用規約(作成・審査・交渉サポート)、労働問題、債権回収、知的財産、経済特別法など企業法務全般に対応している。自身もITを活用したテレワークスタイルを実践。年間の約1/3は世界を旅しながら働く”ワーク・アズ・ライフ”を体現している。