今回解説するチャットのマナーは、「グループチャットを活用する」だ。チャットには、1対1でやり取りをする「ダイレクトチャット」と、複数名でやり取りをする「グループチャット」があるが、ビジネスでチャットを使うときは、グループチャットが基本となる。なぜかというと、ほとんど全てのビジネスは複数名でチームを組んで協力しながら進めていくからだ。1対1のやり取りで完結するビジネスのほうが、むしろ少ないだろう。

  • グループチャットの効果的な活用法とは?

    グループチャットの効果的な活用法とは?

グループチャットのメリット

それに、例えば現段階でそのビジネスが1対1のやり取りで完結しているとしても、メンバーが追加になることもあろうだろう。そのときに、それまでグループチャットでやり取りをしていると、後から加わったメンバーもグループチャットに参加してもらえば、情報共有、引き継ぎがスムーズにできるのだ。

とはいえ、メールの場合はccにいちいちメンバー全員を入れずに送信することも多い。メールの感覚だと、グループチャットが基本ということに違和感があるかもしれない。しかし、from(送信者)とto(受信者)だけのやり取りになる(ccが傍観者になる)メールとは違い、グループチャットではメンバー全員が柔軟に発信者にも受信者にもなり得るので、そのグループチャットのプロジェクトに関わるメンバーは、基本的にグループチャットに入ってもらうべきだ。

メールのccに入れられるのを嫌がる人が多いのは、受信トレイに全てのメールが並列し、重要なメール(自分が宛名の場合や、把握しておくべき情報が記載されたメールなど)とそうでないものの見分けがつきにくいからだ。これがグループチャットだと、新着メッセージのあるグループチャット名を見れば、それが確認すべきメッセージかどうか当たりがつくし、どうでもいいグループチャットなら、退出するかミュート設定にしてしまえばよい。

では、グループチャットを活用するにはどうすればいいのか。それには3つのポイントがある。

3つのグループチャットのポイント

ポイント(1) メンション機能の活用

1つ目のポイントは、メンション機能(to)を活用することだ(大抵のチャットには機能としてある)。これがないと、誰宛てのメッセージか一見して分からず、関係のないメンバーに確認の手間をかけることになる。メンション機能の活用を徹底すれば、それこそ、自分宛てではないメッセージの確認は後回しにするなど、より仕事を効率化することもできるようになる。なお、グループチャットのメンバー全員に伝えたいメッセージに関しては、to ALLの機能を使うとよい。

ポイント(2) グループチャット名の統一

2つ目のポイントは、グループチャット名の付け方を社内で統一することだ。グループチャットの数が増えてくると、チャットを送りたい・内容を確認したいグループチャットが見つけられなかったり、このグループチャットが何に関するものか、グループチャット名を見ただけでは分からなくなったりする。これは、みなが思い思いにグループチャット名をつけるから起きてしまう問題だ。

例えば、筆者の顧問先企業は、プロジェクト(Project)は【PJ】、報告(Report Line)は【RL】、通常業務(Operation)は【OP】というように、そのテーマに応じてグループチャット名の冒頭に【略語で英語2文字】を入れている。

ポイント(3) 内容ごとのグループチャットの使い分け

3つ目のポイントは、メッセージの内容によってはグループチャットを使わないことだ。例えば注意・叱責するようなチャットをグループチャットでやると、晒し上げみたいな状況になる。誰だって人前でそんなことをされたくないし、他のメンバーも見たくないだろう。また、逆に褒めることも、グループチャットでやるべきでない場合もある。褒められたメンバーが他のメンバーから反感や嫉妬を買うような場合だ。そういう場合は、ダイレクトチャットでやるか、第6回の記事で解説したように対面で伝えるべきだろう。

ビジネスでチャットをどれだけ活用できるかは、実はこのグループチャットの活用にかかっている。慣れないうちは、テーマが大きすぎてボンヤリとしたグループチャットや、同じようなテーマで複数のグループチャットを作ってしまうかもしれないが、こればかりは慣れもあるし、社内の体制・業務フローによって各社やり方は様々だろう。試行錯誤しながらも「グループチャットを活用する」というのがチャットのマナーである。

執筆者プロフィール:藤井 総(ふじい そう)

第一東京弁護士会所属『弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所』代表弁護士

慶應義塾大学法学部法律学科在学中に司法試験合格。2015年に独立し事務所を設立。「世界を便利にしてくれるITサービスをサポートする」ことを使命(ミッション)に掲げ、IT企業に特化した法務顧問サービスを提供している。顧問を務める企業は2019年現在で約70社。契約書・Webサービスの利用規約(作成・審査・交渉サポート)、労働問題、債権回収、知的財産、経済特別法など企業法務全般に対応している。自身もITを活用したテレワークスタイルを実践。年間の約1/3は世界を旅しながら働く”ワーク・アズ・ライフ”を体現している。