「BCP」と「BCM」は、どちらも大規模災害などのリスクに対して企業が備えておくための概念です。
共通するキーワードは「事業継続」。どういった意味の言葉なのか、具体的に見ていきましょう。
自然災害とBCP
2018年の日本は、さまざまな災害に襲われました。6月の大阪北部地震、7月の西日本集中豪雨、9月の北海道地震や台風24号など、各地は大きな被害を受けています。
こうした災害に対して、命を守る事はもちろん必須ですが、生活を支えるという観点では「会社が事業をおこなうこと」もまた重要です。
大雨による浸水や社屋の倒壊や火災、停電などの被害から、人命を始めとする資産を守り、少しでも早く立ち直って、元通りの事業ができるように計画しておくこと。これを"BCP"といいます。
BCPとは
BCPとは【Business continuity planning】の略で、日本語では「事業継続計画」と訳されています。
政府はBCPを4段階に分類しています。すなわち、非常事態が発生した「BCP発動フェーズ」、最低限の業務態勢を再開させる「業務再開フェーズ」、復旧までの見通しができた「業務回復フェーズ」、そして平時の状態に戻す「全面復旧フェーズ」です。
いきなりすべての業務を復旧することは困難ですが、最も重要なビジネスを見極め、素早く再開させることによって、損害の発生を最小限に留めることができます。もし、事業の再開に何年もかかってしまったら、会社の存続自体が危うくなってしまうでしょう。
事業の継続が危ぶまれるような事態は、災害だけに限りません。テロや大事故、不祥事、感染症の蔓延なども想定しておく必要があります。事前に備えることを重視するのが防災計画なら、事後に限られたリソースでどのように対処していくかを考えるのが事業継続計画です。
BCPが注目を集めるきっかけとなったのは、2001年9月11日に発生した同時多発テロ事件です。このとき、バックアップセンターを備えていた企業がいち早く事業継続に成功したことが、大きな話題になったのです。
どのような指揮系統で緊急対策本部を設置するのか。従業員の安否や損害状況をどのように確認するのか。業務用データをどこにバックアップしておくのか。業務インフラを何で代替するか。資金繰りはどうするのか。
混乱した状況でも対応していくためには、あらかじめBCPを策定し、これにもとづいた準備をおこなっていく必要があります。「非常時対応マニュアル」はBCPのひとつの成果物といえるでしょう。
【例文】
「大企業だけでなく、中小企業でもBCPをつくっているところが増えているらしい」
「どんなBCP訓練が実践で役立つのかなあ」
運用するためのBCM
BCPによってマニュアルを製作したとしても、いざ非常時になったとき、誰も読んでおらず、対応ができない。こんなケースは大いに考えられます。
本当に「事業継続能力」を身に付けた組織にするためには、BCPのマニュアルをメンテナンスしたり、従業員を教育したり、事業継続のためのシステムを強化する必要があります。
このように、復旧および対応力を養う方法を"BCM"といいます。
BCMとは
BCMとは【Business continuity management】の略で、「事業継続マネジメント」などと呼ばれています。
いざという時に備えた訓練の実施や、原材料や資源を確保などもBCMの一種です。BCPにもとづいて、的確に行動するための仕組みや心構えをやしなうのがBCMといえるでしょう。
【例文】
「BCMを勉強するためにはどの資格を取るのがいいだろうか」
「交換部品を余分に持っておくのもBCMのうちだ」