タッグを組むナビゲーターの中で印象的だったのが、リリー・フランキー。「ご一緒するのは結構緊張しました。しかも生放送なので、どんな感じになるのか予想できないなと思っていたんです。でも、ものすごく優しくて、その時に番組に足りていない感情を補ってくださる感じがしたんです」と振り返る。
例えば、次の曲の紹介に入ろうとしたタイミングで、「生のキンプリ、やばいね」と一言添える。それだけで、予定調和に進みかけていたスタジオの空気が変わるのを感じたという。上垣アナは「単純に次へ次へと進んでいくのではなく、その時に必要なものを補っていただける。1時間ご一緒して、とても勉強になりました」と感銘を受けた。
学んだことは、大きな声を出さなくてもマイクにしっかりと声が入る話し方や、立ち姿、存在感、事前の確認の仕方まで。そんな中でも心に残っているのが、生放送と収録の違いについての話だった。
「リリーさんが“生放送と収録だったら、収録のほうが好き”とおっしゃっていたんです。その理由は、放送には入らなくても、場を温めるために必要な時間が取れるからということ。アーティストの方にいきなり来ていただいて、いきなりお話ししていただく時、放送では絶対に使わない2~3往復の会話が必要だったりする。でも、生放送だとそれができないと話されていて、確かにその通りだなと思いました」
『STAR』は収録回も疑似生放送形式で進行するため、基本的には生放送に近い。だからこそ、放送前の時間を大切にするようになった。
「楽屋にご挨拶に伺った時に、“よろしくお願いします”にプラスして、何か一言お話しするようにしています」と意識。今回の『STARフェス』でも、二言三言の会話を交わすことができたといい、そうした小さなコミュニケーションの積み重ねが、今回のステージにも反映されたようだ。
競馬実況にも生きる経験「度胸や踏ん切りを学びました」
『STAR』での経験は、音楽番組以外の仕事にも変化をもたらしている。その一例が競馬実況で、思い切って言葉を発する度胸が身につきつつあるという。
これまでは、「実況席に座ると、この放送を実現するためにどれだけの人が関わっているのかとか、聞いている人がどれだけいるのかとか、いろいろ想像してしまう。そうすると、普段だったら絶対に出てくるはずの一言が出てこなくなることがあるんです」と、課題を抱えていた。
一方、『STAR』では、進行上の決断を自分一人で下さなければならない場面を数多く経験。「トークをそろそろ締めなきゃいけないとなったら、“そういうことですね、分かりました。それでは行きましょう”と進めなければいけない。その度胸や踏ん切りのようなものを学びました。それは実況にも、バラエティ番組の進行にも通じるところがあると思います」と、手応えを語る。
そんな上垣アナにとって、身近な手本となっているのが、長寿音楽番組『MUSIC FAIR』の司会を務める軽部真一アナウンサーだ。「『STAR』を担当するようになってから、軽部さんとお話しする時間が増えました。軽部さんは、『MUSIC FAIR』と『STAR』は、いろんな意味で好対照だとおっしゃるんです」という。
長い歴史を持ち、ベテランが司会を担当してきた『MUSIC FAIR』に対して、『STAR』は誕生したばかりの新しい番組。そうした違いを踏まえながら、フジテレビの音楽番組の歩みや、アーティストとの向き合い方を教わっているという。
軽部アナからは「台本も大事だけれど、その場で何が重視されているのかを読み取って、察知していくことが大事なんだ」という教えを受けたほか、『めざましテレビ』で見せる短い言葉で要点を伝える技術にも感銘を受けている。
「例えば訃報を伝える時、その方の業績について15秒くらいの短い時間、軽部さん自身の言葉で語るんです。映画の感想でもそうですが、一言でグッとその場を締めて、次に行くというのがすごいなと思います。私それを意識して挑戦するようになりました」
自らが課題として挙げる「受ける一言」にも通じる先輩の技術は、経験を重ねるほど、その奥深さを実感しているようだ。
