伊藤匠王座に広瀬章人九段が挑む第74期王座戦五番勝負(主催:日本経済新聞社・日本将棋連盟、特別協賛:東海東京証券)は、両者2勝で迎えた最終第5局が10月27日(火)に山梨県甲府市の「常磐ホテル」で行われました。相掛かり力戦に進んだ対局は広瀬九段が121手で勝利。39歳にして8年ぶりのタイトル獲得を実現しています。
広瀬九段、充実の角切り
前局はカド番をしのいでタイに戻した広瀬九段。拮抗する星取りとは裏腹にその内容は手ごたえ十分で、終盤の逆転で落とした第2局を含めて勝機十分の展開が続いています。振り駒が行われた最終局はその広瀬九段が先手となって得意の相掛かり持久戦へ。この日は後手の伊藤王座が7筋の位を取る工夫を見せたことで盤上は乱戦の雰囲気が漂い始めました。
伊藤叡王のさりげない端攻めが戦いを誘発します。ぶつかった端歩を取らず、単に角を切ったのが広瀬九段の充実ぶりを示す好手となりました。角銀交換の駒損ながら歩切れの後手が手を作りづらいのを見越しており、例外的に成立したこの秀逸な判断をきっかけとして先手がリードを拡大する流れが出来上がりました。伊藤叡王は駒得ながら焦らされています。
日頃の努力が結実
広瀬九段の読みは随所に冴えわたります。左辺から飛車を成り込まれそうな局面で右辺の合わせの歩を利かせたのがギリギリの利かし。自陣に眠る飛車の活用がしやすくなって全軍躍動が確約されました。飛車銀交換を甘受して攻め合いを求めた伊藤王座ですが、こちらは攻めさせられている印象で気合が空回りした形に。広瀬九段が一歩ずつゴールに近づきます。
終局時刻は20時46分、最後は自玉の詰みを認めた伊藤王座が投了。感想戦では先手が明快な決め手を逃したとされたものの、全体的に後手有利の局面はなく広瀬九段の強さが遺憾なく発揮された快勝譜となりました。8年ぶりのタイトル奪取を決めた広瀬九段は「日ごろ地道に行っていること(努力)が身になっていることを示せた」と喜びを語りました。
水留啓(将棋情報局)
