藤本渚七段と永井大三段の間で争われる第57期新人王戦(主催:しんぶん赤旗)決勝三番勝負は、永井三段先勝で迎えた第2局が10月20日(火)に東京・将棋会館で行われました。雁木対早繰り銀の対抗形に進んだ対局は藤本七段が貫録を見せ138手で勝利。決着は最終第3局にもつれ込んでいます。
「激渋」の中盤戦
第1局を落としあとがない藤本七段は得意の雁木を採用。対する先手の永井三段は早繰り銀から先攻して主導権を求めます。銀交換が行われた盤上は穏やかな第二次駒組みへと進展、定跡書であれば「これにて一局」とまとめられそうな局面でともに力が出せる展開となりました。両者攻め手はなく、若い二人に似つかわしくない「激渋」の受けの応酬が続きます。
ジリジリとした中盤戦が続くなか永井三段が力を発揮します。後手のさりげない香浮きに反応して銀を出たのが玄人好みの間合いで、角をのぞいての馬作りを見せて心理的なリードを奪いました。とはいえ形勢はまだまだ難解。実戦はここで浮足立った永井三段が拙速の銀打ちで結論を急いだため藤本七段の老獪な指し回しが引き出される結果となりました。
攻め急ぎに乗じて完封
焦る先手をヒタヒタと追走してきた藤本七段のもとに好手が舞い込みます。ジッと1マス飛車を浮いて馬取りをかけたのが読みの入った一手で、この飛車に角のヒモがついたことにより先手の桂をタダ取りする手が可能に。この手により「悪くなった手応えがあった」と振り返った永井三段、ここは直前の桂跳ねの前に馬の位置を調整しておく必要がありました。
反撃の手番を得た藤本七段は攻めても妙手を連発。戦場となる左辺一帯を無視するようにそっぽに桂を投入したのが意表のB面攻撃でした。先手の飛車を抑え込むのが遠いようでいてもっとも勝ち味の早い手で、このあとは粘る永井三段を丁寧に抑え込む藤本七段の手厚い指し回しを見るばかりとなりました。終局時刻は17時1分、最後は永井三段が投了。
一局を振り返ると、永井三段の銀上がり(59手目)や藤本七段の飛車浮き(84手目)など地味な一手に両者の強みが発揮された好局に。どちらが新人王を戴冠するか、注目の第3局は11月5日(木)に東京・将棋会館で行われます。
水留啓(将棋情報局)
