民放公式テレビ配信サービス「TVer」を運営するTVerと在京民放5局が共催する「TV×TVer Conference 2026」が27日、都内のホテルで行われ、TVerの大場洋士社長は、サービス開始から11年を迎えた現在の課題として「見逃し配信からまだ脱却できておりません」と指摘。月間ユーザー数が5,000万MUB(月間ユニークブラウザ数)に迫る中、番組との新たな出合いを生み出すプラットフォームへの進化を宣言した。
大場社長「私たちは今が生まれ変わる時」
今回のカンファレンスは、日本テレビ、テレビ朝日、TBS、テレビ東京、フジテレビの在京民放5局が開催してきたテレビカンファレンスと、TVerによるカンファレンスを初めて合同開催したもの。「いま、ひとつの絵を描く。」をコンセプトに、放送と配信が一体となって生み出す新たな価値を提示した。
冒頭に登壇した大場社長は、2015年10月26日にサービスを開始したTVerが11周年を迎えたことに触れ、月間再生数が約6億5,000万回に達したことを報告。月間ユーザー数についても、27日中に5,000万MUBを突破する見込みだと明かした。
違法動画への対策としてスタートしたTVerは、番組制作に携わる関係者に正当な対価を還元する仕組みとして成長してきた。一方で、大場社長は「11年を経て、見逃し配信からまだ脱却できておりません。私たちは今が生まれ変わる時であると考えています」と、新たな段階に進む必要性を強調した。
その上で、テレビが長年にわたって提供してきた価値として、感動や共感、信頼性の高い情報に加え、チャンネルを回すことで未知の番組に出合うという体験を挙げた。
TVerでも、こうした偶然の出合いを再び生み出すことを目指すとし、放送局が積み上げてきた信頼を守りながら、コンテンツとの出合い方そのものを変革していく方針を示した。
すでに9月末からコネクテッドTV、10月初旬からスマートフォン向けにデザインを刷新しており、年内にも複数回のアップデートを予定しているという。
若年層のテレビ画面視聴も拡大
続いて登壇したTVerの齋藤祥平サービス本部長は、TVerの利用動向について「もうテレビの補完のプラットフォームではなくなった」と強調。月間ユーザー数4,470万MUB、月間動画再生数6.5億回、コネクテッドTVでの月間再生数2.3億回という実績を紹介した。
特に、コネクテッドTVでの視聴が伸長。20~34歳の若年層における再生数は前年同月比約138%となり、テレビ離れが指摘される世代でも、TVerを通じてリビングのテレビ画面でコンテンツを楽しむ動きが広がっていることを示した。
コンテンツの再生数も好調で、今夏のTBS系ドラマ『VIVANT』第2シーズン初回は、配信開始から8日間で887万再生を記録。従来のTVerにおける単一エピソードの記録を大幅に更新した。
また、嵐の出演作品を集めた「嵐コレクション」では、実施期間中の再生数が7,000万回を突破。齋藤氏は、TVerが番組を届けるだけでなく、自ら盛り上がりを生み出す場になってきたことに手応えを示した。
野球のハイライトをはじめ、スポーツのライブ配信も利用者獲得につながっているといい、現在は毎月約1,000番組を継続して配信。ユーザー数、視聴デバイス、コンテンツのいずれも拡大を続けているという。
ホーム画面の刷新でユーザー当たり再生数が約10%向上
松岡綾乃プロダクト推進部長は、TVerのデザイン刷新について説明。今回のアップデートでは、番組と広告を主役に据え、コンテンツとの出合いを促進するホーム画面へと変更した。
従来よりも番組の映像やサムネイルを大きく表示する一方、TVerのブランドカラーやロゴの露出をあえて抑え、それぞれの番組が持つ世界観を前面に押し出した。
また、番組の配信予定や一気見できるエピソード数などの情報を充実させたほか、視聴履歴に基づくおすすめ表示を拡充。視認性やフォントサイズの改善など、アクセシビリティの向上にも取り組んだ。
リニューアル後には、デザインや操作性を評価する声が寄せられる一方、大幅な変更に戸惑う利用者もいたという。こうした意見を分析し、改善を重ねているとした。
一方、先行してリニューアルしたテレビデバイスでは、ユーザー当たりの再生数などが平均で約10%向上。広告の表示機会も増加しており、利用拡大につながっているという。
番組の名場面から本編へ…新機能「シーン」を導入
さらに、新機能「シーン」も発表された。これは、テレビ番組の印象的な場面を短い動画で次々に視聴できる機能。縦方向にスワイプすることで別の番組のシーンへと切り替わり、気になった作品があれば、そのまま本編を再生できる。
開発の背景にあるのは、SNSや動画共有サービスでテレビ番組の切り抜き動画が広く視聴されている現状だ。松岡氏は、テレビコンテンツの面白さが広く認知されている一方、違法に切り抜かれた動画が外部サービスで再生されている状況を課題に挙げた。
新機能では、番組との出合いから本編視聴までをTVer内で完結させることが可能になる。事前に実施した若年層向けのユーザーテストでも好評だったといい、11月以降、順次提供する予定だ。



