radikoの池田卓生社長とTVerの大場洋士社長が9日、ビデオリサーチ主催の「VR FORUM 2025」に登壇し、「民放主体配信サービスが描く未来」をテーマにトークを繰り広げた。
「Unity」の精神で新たな音声体験を
今年6月に、TBSラジオからラジオ局出身初のradiko社長に就任した池田社長は「放送局にいるとコンテンツをradikoに供給し、radikoが配信インフラとして流すという、いわば“対”の立ち位置だったと思っているのですが、これからは放送局目線でいろんなradiko運営ができると思っているので、放送局とradikoが結束して、一つの目線でラジオ未来を描いていくフェーズに入ったと思っています。リスナーに対して、“Unity”という精神で一体となったradikoが、新たな音声体験を様々な切り口で届けていくメディアとして価値向上を目指していきたいと思います」と抱負。
さらに、AM局のFM転換や、FM局においても小規模中継局の維持に多額の費用がかかるため、「ラジオ局のインフラ領域の課題について、radikoが代替メディアとして機能していくことも目指したい」とした。
こちらも6月に就任したTVerの大場社長は「コンテンツに触れる瞬間が多くなってきている一方で、コンテンツがかなりあふれています。視聴者の目線や可処分時間を奪い合うというのが今の状況だと思うのですが、その中でTVerは放送局クオリティが最大の武器だと思います」と、コンテンツの質や信頼を強みに展開していく方針を語った。
TVer無料の認知度は51%にとどまる
radikoは現在の月間ユーザー数が850万となっているが、池田社長は「これを1,000万、2,000万にしていくことが必須だと思っています」と意欲。昨年のデータで、都道府県別の人口に対してのradikoユーザー率を見ると、最も高い東京都でも12.53%にとどまり、47都道府県平均では4.8%だという。これを踏まえ、「まだまだ全国でradikoユーザーを増やしていける伸びしろがあると思っています」とポテンシャルを示した。
TVerの月間利用者(ユニークブラウザ数)は、今年1月時点で4,120万。アンケート調査では、TVerが無料で見られることを知っているのが51%にとどまっており、大場社長も「伸びしろかなと思っています」と期待を語る。そして、YouTubeの国内ユーザー数が7,500万と言われる中で、「少なくともそこには追いついて追い越したいと思っています」と意欲を述べた。
リスナー熱量、放送局クオリティの価値の可視化を
radikoの売上高は2024年度が前年比162.2%と伸びており、25年度も上期で200%超と好調。池田社長は「非常にご活用いただけるようになってきたなと実感しています」といい、今後の事業計画では100億の売上規模を目指していることを明かした。
このために、「放送局の皆さんと協力して、広告在庫を増やしていくのはもちろんですが、radikoと地上波が一体となったセールスを企画していく、仕組み化していくことが重要だと思います」と意識。また、「ラジオは熱量とすごく密接なメディアだと思っています。様々なラジオ番組発のイベントが大きな集客を生んでいるのですが、熱量はなかなか数値化できないんです。これが数値化できると、もっともっとラジオやradikoを活用していただけるのかなと思っています」と、ビデオリサーチへの期待を述べた。
TVerは、24年度のテレビメディア関連動画広告費が653億円(電通「日本の広告費」より)となっていることから、大場社長は「早期に1,000億、2,000億にはいきたいと思います。さらに先を目指すなら、3,000億、4,000億は目指していくべきだと思います」と力説。そのために、「データによって暗黙知をどう可視化するかが、放送局クオリティの価値の向上につながると思っていますので、ビデオリサーチさんの知見を頼りにしながら実現していきたいと思います」と要望した。
民放主体の新たなネット事業としてスタートした両サービスだが、radikoは今年12月1日に15周年、TVerは今月26日で10周年を迎える。これを記念した様々な展開も予定されているそうだ。
今年の「VR FORUM 2025」は、8日・9日の2日間で53人の登壇者による全19セッションを開催。オンラインを含む4,900人が参加した。全19セッションのアーカイブ動画は、14日以降、順次公開予定となっている。


