忙しい日の夕食、買い忘れた食材、体調を崩して外出できないときの水分補給など。Uber Eatsが届けるものは、この10年で料理から暮らしの必需品にまで広がりました。

Uber Eatsが2016年9月29日に日本でサービスを開始してから、2026年で10周年を迎えました。10月13日に開催された記者発表会では、Uber Eats Japan合同会社代表ゼネラルマネージャーのユリア・ブロヴキナ氏がサービスの歩みと今後の展望を語りました。

  • Uber Eats Japanの10周年記念イベントが都内で開催されました

    Uber Eats Japanの10周年記念イベントが都内で開催されました

ユーザーの生活に欠かせない、様々な商品を届けてきた

日本のUber Eatsのサービスは、東京都内の一部地域と約150のレストランからスタートしました。現在は一部離島を含む47都道府県にまで広がり、加盟店は約14万店舗、配達パートナーは約13万人を達成。累計注文数は10億件を超えました。

ブロヴキナ氏によると、今では日本に住む5人に1人がUber Eatsで食事を注文した経験を持つそうです。

「ユーザーの『今日、何を食べよう』に答えるところから始まったUber Eatsは、今では『今日、何が必要』という、より幅広いニーズに答えるサービスに進化しました」と、ブロヴキナ氏は振り返ります。

  • 日本国内におけるUber Eatsの歩みを語るユリア・ブロヴキナ氏

    日本国内におけるUber Eatsの歩みを語るユリア・ブロヴキナ氏

Uber Eatsが多くの人々の生活に定着したことは、近年の注文データから「トレンドランキング」を見ても明らかです。料理の内容はハンバーガーや牛丼など定番のファーストフードから、例えば小中規模のレストラン加盟店が提供するインドカレー、近年話題の麻辣湯など多様性が表れており、近年の食トレンドの変化をありのままに映し出しています。

スーパーで注文された商品には、肉や牛乳、野菜に納豆などいつもの食卓に並ぶ料理の材料や食材がトレンドランキングに多く入っています。コンビニではホットスナックや飲料、ドラッグストアでは水分・栄養補給の商品なども注文されています。

夕食を丸ごと任せるだけでなく、自炊に足りない食材を補ったり、外に出づらいときに必需品を届けてもらったりするため、多くの人々にUber Eatsが「なじみのサービス」になっていることが、データから浮かび上がってきます。

ブロヴキナ氏は「午後10時から午前3時の深夜帯にもUber Eatsが活用されている」と壇上で語りました。主に都市部で暮らす人々の利用傾向を反映しているものと思われますが、選択肢の広さだけでなく、様々なユーザーの生活時間にフィットしながら、多様な生活の困りごとを受け止められるサービスであることも、人気の理由であると考えられます。

「2020年に始まったコロナ禍はUber Eatsの利用を広げる契機となりましたが、成長はそこで終わることがなかった」と、ブロヴキナ氏は強調しています。実際にコロナ禍後もサービスは二桁成長が続き、2023年から3年連続で黒字を達成。2026年前半には売り上げの伸びがさらに加速したといいます。

  • 日本での事業開始から、Uber Eatsは10年間に様々なサービスを展開してきました

    日本での事業開始から、Uber Eatsは10年間に様々なサービスを展開してきました

物価高の中で「手頃さ」を維持できるのか

Uber Eats Japanは、これからの成長戦略として「3A戦略」を掲げています。その柱になるのは「Anything(欲しいものを増やす)」「Anywhere(利用できる地域を広げる)」「Affordability(もっと手頃にする)」という3つの方向性です。

昨今、日本では食料品を中心に物価高が続き、消費者の節約志向も強まっています。多くのユーザーにとって気になることはやはり「料金の手頃さ」でしょう。

発表会後、ブロヴキナ氏は集まった記者による囲み会見にも応じました。物価高が続く日本ではいま消費者の価格への感度が高まっており、コストパフォーマンスが重視される傾向にあるという記者からの指摘に対して、ブロヴキナ氏は「デリバリーサービスの利用を広げるには、ユーザーにとって手の届きやすい価格で提供できることがとても重要」であると述べて、そのために具体的な手立てを打ってきたと答えています。

  • 「3A戦略」のもと、Uber Eatsのサービスによって利用できるアイテムの種類、エリアと手軽さをさらに強化していきます

    「3A戦略」のもと、Uber Eatsのサービスによって利用できるアイテムの種類、エリアと手軽さをさらに強化していきます

その対策の一つが、3月20日に始まった「お店と同じ価格」です。全国約1万8,000店舗を対象に始まり、現在の参加店舗は2万4,000店以上に拡大しています。Uber Eatsは使ってみたいけれど、商品の提供価格が高くなることからためらっていたユーザーにとって、Uber Eatsが試しやすくなります。

ただし、「お店と同じ価格」は商品の販売価格を対象とするサービスです。注文時には配達手数料やサービス料などが別途発生する場合があり、必ずしも店頭で購入する場合と支払総額が同じになるわけではないので要注意です。

定額制のサブスクサービスであるUber Oneでも、会員向けに配達手数料だけでなくサービス料を無料にする取り組みを進めました。対象や条件はありますが、Uber Eatsを頻繁に使うユーザーの負担を軽減することが狙いです。

楽天との連携も深まっています。Uber EatsとタクシーサービスのUberを合わせて、楽天IDを連携したユーザー規模は200万人を突破しました。現在は「楽天ポイントが貯まるだけでなく、Uber Eatsでの注文に楽天ポイントが使えること」も、ブロヴキナ氏はあらためてプッシュしています。

  • 近年ではUber EatsおよびUberのサービスと、楽天ポイントとの連携策も強化されています

    近年ではUber EatsおよびUberのサービスと、楽天ポイントとの連携策も強化されています

国内の物価高の影響は、Uber Eatsの売上高にも影響を与えているのでしょうか。ブロヴキナ氏は「確かにその影響はある」と認めつつも、「長くサービスを愛用いただいているユーザーだけでなく、新しいユーザーの広がりも見えている」と好調ぶりをアピールしています。今後も「手頃さ」を実感してもらえる施策に力を入れつつ、多くのユーザーに満足してもらえるサービスをつくることが同社の目標です。

今後、食料品の消費税減税が実施された場合の影響についても質問が出ました。ブロヴキナ氏は、ユーザーの負担軽減につながる施策として減税を重視し、レストランや小売店にとってデリバリーやテイクアウトの利用を広げる機会になり得るとの見方も示しました。

一方で、減税の実施や制度の詳細は決まっておらず、Uber Eatsとしての具体的な対応策もまだ示されていません。今後の政策動向を踏まえて加盟店や政府関係者と協力しながら、より手頃に利用できる施策を検討していく考えです。

利用できる地域をパートナーと一緒に広げる

3A戦略の柱のひとつである「Anywhere(利用できる地域を広げる)」について、筆者は2024年6月に日本で始まった「ピック・パック・ペイ(PPP)」のサービスに注目しています。

Uber Eatsの配達パートナーが対応店舗で注文商品を集め、袋詰めと会計を済ませてユーザーに届けます。商品を受け取って運ぶだけでなく、「おつかい」を支援するサービスとして、これから高齢者を中心とする全国のUber Eatsにとって強力な味方になると考えるからです。店員による商品準備の負担も抑えられることから、小売店の人手不足解消にもつながりそうです。

ブロヴキナ氏は、PPPの対応店舗が現在3,500店を超えており、今後もさらに注力しながら日本全国で幅広く展開したいと答えています。

海外では今年から「Shop for Me」という、Uberの新サービスが始まっています。Uber Eatsに掲載されていない店舗であっても、配達パートナーに買い物を依頼できるところがPPPとの違いです。ブロヴキナ氏は「現在、Shop for Meの日本導入については具体的にコメントできることはない」と答えています。今後、PPPの対応店舗を拡大し続けるのか、または全国のユーザーにとってより便利な形に発展していくのか要注目です。

  • パンデミック後にも堅調な成長を維持。2027年に向けた成長戦略の具体的な内容についても、囲み取材の中でプロヴキナ氏は言及しています

    パンデミック後にも堅調な成長を維持。2027年に向けた成長戦略の具体的な内容についても、囲み取材の中でプロヴキナ氏は言及しています

Uber Eatsのサービスは、日本全国で13万人以上が活躍する配達パートナーによっても支えられています。便利なサービスを維持するには、配達パートナーの安定確保も欠かせません。日本では少子高齢化に伴い、働き手の減少が長期的な課題となっています。サービスを全国津々浦々に広げても、配達パートナーが十分にいなければ、必要な時に注文できる便利さが維持できません。ブロヴキナ氏も、特に地方では今後、配達パートナーの確保が難しくなる可能性があるとして、重要な課題と捉えていました。

対応策として挙げたのは、東京や大阪で取り組む自動配送ロボットの活用と配達の効率アップです。複数の注文をまとめて運ぶ仕組みなどを工夫し、配達パートナーの時間を有効活用する考えです。働き手の確保が難しくなる中、技術の活用と配達方法の改善によって安定して届けられる体制も整えます。

競合の撤退や新規参入が相次ぐフードデリバリー業界への見解も問われました。ブロヴキナ氏は「ある程度の規模を拡大していかないと、効率性や収益性を確保するのが難しい」と、事業運営の難しさを説明しました。

一方、日本では配達への需要が強く、利用の浸透にはまだ余地があるとも期待を寄せています。「競争が加速することは選択肢が増えるという意味でも、業界にとって良いこと」だと、競争が日常的な利用を広げる意義を強調しました。

Uber Eatsによる市場の独占が、将来の値上げにつながるのではないかという質問も出ました。ブロヴキナ氏は今後の料金について明言しませんでしたが、「日本の市場には、まだまだ成長の機会がある」と答えを返しています。今後も品揃えの拡充や技術、手頃な価格で利用できる仕組みへの投資を続け、ユーザーと加盟店、Uber Eatsのそれぞれにメリットのある持続可能な事業を目指す考えを示しました。

Uber Eatsを応援するゲストも駆けつけた

発表会にはUber Eatsを応援するゲストも登壇しました。

カズレーザーさんは「仕事を終えて帰宅して、もう料理をする気力がない時や旅行先でいつも利用している」と紹介し、今では「生活の一部」であると、Uber Eatsとの関係性を表現していました。

藤本美貴さんは、家族それぞれの食べたいものを選べることや、翌日の弁当用の食材を届けてもらえる便利さを強調。仕事と子育てを支える存在として「特別な存在というよりも、仲間みたいなもの」と話しました。

  • Uber Eatsのサービスを支えてきた配達員パートナーの表彰式も実施されました

    Uber Eatsのサービスを支えてきた配達員パートナーの表彰式も実施されました

TAIGAさんは、コロナ禍で芸人やイベント関連の仕事が減った2020年3月からUber Eatsの配達パートナーとして活動。急に芸人の仕事が入っても対応できる柔軟さを評価し、「空いている時間を有効にできます」と語りました。配達先として訪れたレストランなどに、後日家族を連れて行くことも楽しみにしているそうです。

ステージではUber Eatsの配達パートナーの表彰式も実施されました。ブルース・ライダーさんは日本でのサービス開始当初から10年間活動してきたベテランの配達パートナー。自転車やスクーターで走ることが好きで、仕事の空き時間に自分の都合で配達できることが、長く続けてこられた理由だと言います。

旅人配達員Tさんは、日本一周の夢と配達を組み合わせ、自転車で旅をしながら47都道府県で配達をしてきました。関東から北へ向かい、反時計回りに全国を巡ったそうです。

2人には表彰の盾と特別な金色の配達バッグが贈られました。アプリの向こう側にも、さまざまな暮らしと働き方があることを感じさせるイベントでした。