世界的なモビリティ・デリバリープラットフォームであるUberによる年次製品発表イベント「GO-GET 2026」が米国時間の4月29日、ニューヨークで開催されました。本記事ではその詳細をレポートします。
これまで「移動(GO)」と「デリバリー(GET)」の2本柱で成長してきたUberが、今回新たに掲げた柱は「旅(TRAVEL)」です。CEOのダラ・コスロシャヒ氏はイベントの冒頭でステージに立ち、次のように語りました。
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Uberが毎年新しいプロダクトを発表するイベント「GO-GET」が、今年もニューヨークのマンハッタン市内で開催されました。冒頭にCEOのダラ・コスロシャヒ氏が、新しい製品群により「ユーザーが大切な時間を有効に活用するためのツールを、Uberが提供したい」と意気込みを語りました
「私たちの周囲には現在あまりに多くのアプリと、アプリによる通知があふれています。多くの情報におぼれてしまうと、意思決定のプロセスも複雑化します。Uberの役割は、ユーザーが日常の煩雑な手配に費やす時間を減らし、本当に大切な時間に集中できるよう支援することです」
今回の発表では、AIを活用した直感的な操作や、旅先での体験を一元化する画期的な新機能が次々と披露されました。Uberを活用する日本のユーザーのライフスタイルに、新しい機能とサービスがどのような体験をもたらすのか、現地での取材をもとに紐といていきます。
エクスペディアと連携するホテル予約サービスが始動
今回の目玉は、アメリカのオンライン旅行予約サイトであるExpedia Group(エクスペディア)との提携による、新しいホテル予約機能の「Hotels on Uber」です。Uberのアプリを開けば、世界70万件以上のホテルを検索・予約できるようになります。
特筆すべきは、その圧倒的にシームレスな使い勝手です。ユーザーが登録するUberのアカウント情報をそのまま利用するため、改めてクレジットカードを登録したり、別のアプリを行き来したりする必要はありません。
さらに会員プログラム「Uber One」の特典が強力です。すべてのホテル予約で10%分のUber Oneクレジットが還元されるからです。加えて、対象となる世界1万件以上のホテルで20%以上の割引サービスが実施されており、Uber Oneのクレジット還元と併用ができます。
ホテルの予約以外にも、ユーザーの旅行に関連する情報がアプリ内で共有されるため、空港に到着した瞬間にホテルまでの配車を提案したり、滞在中の移動を割引価格で予約したりといった、宿泊と移動を密接につなぐ体験が提供されるところも、Uberアプリならでは魅力になりそうです。
Uberアプリが「旅のコンシェルジュ」になる
見知らぬ土地での移動にはストレスがつきものです。Uberが提供する新機能「Travel Mode」はアプリを「専属の旅行コンシェルジュ」へと進化させます。
空港施設内のウェイファインディング機能によって、ゲートから手荷物の受け取り、そして配車のピックアップ場所までの移動がよりスムーズになります。
空港を出て街に入ると、アプリのインターフェースが再び変化します。アプリがユーザーが滞在しているロケーションを把握して、その土地で人気のスポットやおすすめ情報を表示してくれます。
さらにはOpenTableを通じたレストラン予約まで、ひとつの画面で完結するところがUberアプリの特徴です。長時間のフライトの後、ホテルに到着する頃に合わせてアプリから食事や日用品を注文すれば、ホテルのドアまで直接届けてくれるので、まさしくUber版の「ルームサービス」ともいえる体験になりそうです。
日本のユーザーにとって最も身近なニュースは、会員プログラムのUber Oneがグローバル対応になることです。
これまで国内限定だった特典が海外でも適用されます。例えば海外での配車でクレジットを獲得したり、配達手数料無料の特典が利用できたりするようになります。貯まったクレジットは帰国後の空港からの帰宅にも使えるため、出張の機会が多くあるユーザーは、国内での移動にかかるコストも節約できます。
配達パートナーに「おつかい」をお願いできる
日常の利便性を高める新機能も発表されました。
特に注目したいのが「Shop for Me」です。これは、Uber Eatsに掲載されていない店舗であっても、配達パートナーに買い物を「おまかせ」できる機能です。
「あの路地裏にある馴染みの精肉店の肉が欲しい」「お祝いに特定のブランドの観葉植物を届けてほしい」といったリクエストに対し、評価の高いパートナーが代理で店舗に足を運びます。ユーザーは配達パートナーとUberアプリ上でチャットで相談したり、あるいは欲しいもののイメージを具体的に伝えたりすることができます。
移動時間を有効活用する「Eats for the Way」もユニークです。プレミアムクラスの配車サービス「Uber Black」(Uber プレミアムに相当)を予約した時に対象になる機能で、同時にコーヒーや軽食を注文しておくと、ドライバーがピックアップして車内で待っていてくれるというサービスです。
Uberでは、いそがしい朝にコーヒーショップの列に並ぶ10分間を、車内でのリラックスタイムに変えられる機能として紹介しています。
音声アシスタントなどAI活用によるユーザーインターフェース強化
今回の発表会で最も多くの時間を割いてデモンストレーションが行われたのが、AIを活用した「One Search」と「Voice Bookings」です。
これらは、ユーザーがUberアプリのユーザーインターフェースを改善することを目的とする新しい機能です。
One Searchは、Uberの配車アプリとデリバリーアプリのUber Eatsを橋渡しするワンストップの検索機能です。
例えばアップデートされた新しい検索バーに、ニューヨークで人気のベーグルショップ「Brooklyn Bagels」と検索すると、そこへ行くための配車予約と、そこから自宅へ届けてもらうデリバリー注文の両方が候補として提示されます。
AIがユーザーの意図をくみ取る、スマートな検索にも対応します。例えば 「ヘルシーな食事がしたい、でもサラダ以外で」という曖昧な入力に対し、AIがメニュー内容を分析し、最適なレストランを提案します。
情報ハブとしての機能も持たせます。例えば初めてロンドンに旅行する際には、「Uberはどう使えるのか」が不安になるものです。検索バーに「London」と入力すれば、検索結果のリストに「Uber in London」が表示され、配車サービスの価格や平均的な待ち時間、支払いの手順、フードデリバリーの使い方など「現地のUber事情」をまとめて確認できます。
人と対話するように音声で配車を予約する
「Voice Bookings」は、スマホを操作する余裕がない状況を想定した、AIによる音声予約アシスタントの機能です。デモンストレーションでは、AIがユーザーの状況に応じて柔軟にプランを提案する様子が披露されました。
例えばユーザーが、ニューヨークのメイン空港のひとつであるラガーディア空港までUberの配車サービスを利用する場合、音声で「デルタ航空」と伝えれば、行き先にターミナル情報も加えてくれます。
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Uberアプリのユーザーが「手を離せない」時に、音声操作で配車サービスが利用できる「Voice Bookings」も公開。現在はBetaテスト版として、アメリカとカナダのユーザーの一部から提供を始めています
最初に提示された配車サービスの料金に対し、「もっと安いのはない?」と尋ねると、AIは「Wait and Save(待ち時間を増やす代わりに安くなるプラン)」を提案。さらに「どのくらい待つの?」という質問にも即座に回答します。
ユーザーが 「やっぱり家族5人で、荷物も5個ある。全員乗れる一番お得な配車サービスは?」といった条件を後から追加しても、AIは最適な車種を再選定します。さらに、「高速道路の利用料金は別途かかるの?」という、細かな問いに対してもAIアシスタントが答えてくれます。イベントのステージで行われたデモンストレーションを見る限り、まるで人間と話しているかのような自然なやり取りで、Voice Bookingsによる予約が完結していました。
この機能はUberが長年に渡って培ってきたデータを元に、OpenAIのGPTモデルやグーグルのGeminiなど、最新のモデルを基盤に構築されています。単に検索が音声でできるだけでなく、スムーズな「対話型体験」をつくることにUberは注力しています。
プロダクトの最高責任者が語る「Uberの強み」
イベント後、Uber Technologiesのチーフ・プロダクト・オフィサー(CPO)であるサチン・カンサル氏が、日本のメディアとのグループインタビューに応じました。
会員プログラムのUber Oneの特典について、日本で獲得したものが海外でも使えるようになるサービスの他、今回Uberが発表した2026年の新プロダクトは日本市場にも展開されるのでしょうか。
カンサル氏は「日本はUberにとって極めて重要な市場」であると切り出して、次のように答えています。
「今回のAI機能やホテル予約は、日本のユーザーにも大きな価値を提供できるはずです。特にホテルの予約は、海外から日本を訪れる旅行者にとっても、日本のホテルを簡単に予約できる強力なツールになるでしょう」
筆者はHotels on Uberのプロダクト担当である同社のアディブ・ルマーニ氏に、サービス展開の見通しを聞きました。
Hotels on Uberは最初にニューヨーク市内でUberアプリを使うユーザーから提供されます。筆者も滞在期間中にアプリを開いたところ、東京のホテルが予約できることを確認しました。続く段階として、5月上旬には機能を全米にロールアウトします。
ルマーニ氏は、世界展開は段階的に視野に入れると答えています。現在はまだ検討段階である理由は技術的な障壁によるものではなく、「各地域のユーザーに、ストレスのない使い勝手を提供するためのチューニングを行っているから」だといいます。
Hotels on Uberのサービスについて、カンサル氏に対して「競合するホテル予約サイトとの差別化」をめぐる質問も寄せられました。カンサル氏は現状は他社との競争よりも、Uberのエコシステム内でのシームレスな体験づくりに集中する段階と答えています。「予約したホテルまでスムーズに移動できる配車サービス、到着後に利用できるフードデリバリーをつなぐことで、Uberらしい『エンド・ツー・エンド』の体験を磨きあげて、多くのユーザーに使ってもらいたい」と、カンサル氏は意気込みを語りました。
画期的な数々の機能を日本にも展開できるのか?
筆者はUberの配達パートナーに「おつかい」を頼める「Shop for Me」の将来性に注目しました。「知らない人に買い物をお願いする」というサービスは、筆者にとっては若干違和感があります。
先行的に試験提供が始まる米国とメキシコの生活文化的には「アリ」なのかもしれませんが、個人の信頼関係や衛生面、丁寧な対応を重視する日本のユーザーには心理的ハードルがあるかもしれません。
Shop for Meのアイデアは、既存の即時宅配便サービスである「Courier(クーリエ)」を、Uberアプリのユーザーがハックして、裏技的に使っていたことから生まれた機能であるといいます。このことを踏まえると、究極の時短を求める現代人のニーズには合致しているとも考えられます。まずは贈答品や消耗品にカテゴライズされるような日用品といった、特定のユースケースや品物から浸透していく可能性がありそうです。
今回の新しいプロダクト群は「時間は最も貴重な資産である」というUberのフィロソフィーを、ありのまま形にした説得力のあるラインナップでした。私たちの移動と暮らしは、Uberのプラットフォームによってさらにスマートになりそうです。










