今回の主役は、
日本プロ麻雀連盟所属、KONAMI麻雀格闘倶楽部・佐々木寿人。
老若男女問わず絶大な人気を誇る、麻雀界のスターだ。親しみを込めて、下の名前で「ヒサト」と呼ばれることが多い。
人気だけでなく、実力も折り紙付きだ。
Mリーグのレギュラーシーズンにおいては、ここまで234試合を打って、なんと+1434.8ポイントを獲得(2026年9月27日時点)。
堂々の個人通算成績1位である。
チームの立場で考えると、寿人を出していれば1試合につき7ポイント弱を持って帰ってきてくれる計算になるのだから、これほど頼もしい選手はいない。
麻雀のスタイルは、見ていて実に気持ちがいい「メリハリ型」である。
攻めるときはとことんまで攻めて、守るときはピタッとやめる。
竹を割ったような麻雀というか、とにかく爽快な打ち筋なのだ。
さらには、切るときのテンポもよく、寿人が登板する試合は早く終わる傾向にある。
Mリーグは基本的に月・火・木・金曜日という平日夜に行われるので、次の日に仕事があると、
「寿人が打つ日は、番組が早く終わるから、睡眠時間が確保できて助かるわー」
と思っている人も多いことだろう。
タイトルに「スピードスター」とつけたのは、打牌速度にも由来する。
そんな寿人がじっくりと考えるほど、難しい局面があった。
9/22(火)麻雀2ch 1試合目、南2局、
親番の寿人は、中盤にこのような手格好となっていた。
1つメンツがあるものの、やや苦しい形だ。
ここで寿人が切った南を、
「ポン」
南家の茅森が仕掛けてきた。
茅森は、
この時点で、ダブ南赤のイーシャンテンとなっていた。
次の手番で寿人は、
3索を引き入れて、2メンツ目が完成。
ここは端の9萬を打って、タンヤオでのアガリを狙っていった。
役をつけておけば、鳴くことが出来たり、リーチせずとも出アガリが効いたりして、終盤の立ち回りで選択の幅が広がる。
次巡、
7索を引いて、ソウズの形がよくなった。ここは打4索。
この4索も前に切った9萬も茅森には通っていない。
下家の茅森が仕掛けているのが気にはなるが、寿人はアガリを求めて斬り込んでいく。
次のツモは、
2萬であった。
ここでマンズで3ブロック目が出来たので、浮いている4筒をリリース。
「チー」
この4筒を茅森が鳴いて、テンパイ。
待ちは3-6索だ。
なんとかして追いつきたい寿人。
続いて、
寿人はドラの7萬を持ってきた。
テンパイへの受け入れ枚数が増えるとともに、手の打点的価値も上がった。ここは打7筒とする。
そんな中で、
「チー」
北家の大介も参戦してきた。
麻雀は四人でやるゲームだ。
自分だけがアガりたいわけではないので、このように仕掛けが飛び交う局も少なくない。
気持ちとしては焦ってしまうものだが、アガるため、無駄な放銃をしないためには、冷静な判断力が求められる。
この後、大介が切った8索を、
「チー」
寿人が鳴いて、テンパイを入れる。
速度を合わせる意味でも、自然かつ適切な仕掛けだ。
寿人は、
2萬を打って、ドラ表示牌待ちのカン6萬待ちにとった。
状況を見ていた優も、
8索を仕掛けてテンパイへと向かう。
接戦の南場にふさわしい「空中戦」だ。
そんな中で、寿人の手が「珍しく」止まった。
寿人は、
3索を持ってきて、どうするかを熟考していたのだ。
これは、茅森のアガリ牌だ。
一方、自身はタンヤオドラ赤、5800のテンパイ。
“テンパイしているからしょうがない”
と自分に言い訳をして、パッと切る方も多いことだろう。
だが、
寿人は盤面を見つめて、考えた。
俯瞰で見ると、
(黄色の牌かツモ切り、灰色の牌は「そのタイミングで仕掛けが入った」ことを示す。)
このようになっている。
上家の大介や対面の優の河を見ると、「下家にいる茅森に危険な牌を切っていない」ことが分かる。
二人が3-6筒を打っているのは、茅森がピンズを副露していることからも、もうピンズは完成していて待ちになっていないと読めるからだ。これは押しているうちに入らない。
大介や優は、テンパイしている可能性は低いだろう。
ならば、警戒すべきはやはり茅森だ。
前述のように、ピンズ待ちは考えづらい。
他の色で待ちの候補を絞っていくことにしよう。
ソウズなら「3-6索」が本命だ。6-9索も一応通っていないが、茅森は8索を早くに捨てているので、これはめったに出てこない待ちだろう。
マンズに関しては、「3-6萬」と「4-7萬」待ちが本線だ。茅森が仕掛けてから寿人が切った9萬に、茅森の声がかからなかったことから、6-9萬待ちはまずないと考えられる。
愚形待ちなどのレアケースもなくはないが、基本は今挙げた三筋が本線だ。
しかも、マンズ待ちに関しては、自分の目から5萬が3枚見えているのでワンチャンス。パターンとして、5萬絡みのリャンメン「3-6萬」と「4-7萬」はやや出にくくなっている。
よって、
「3索は打てない」
と判断した寿人は、
ソウズのメンツを壊して、4索を打ったのだ!
234索を維持するために茅森の現物である5萬を切ると、ソウズが横に伸びてテンパイしたときに、ドラの7萬が出ていくことになる。それは歓迎できない。
自身の打った4索が茅森に鳴かれなかったこともあって、このような「3索を打たない構え」にして、粘り込む選択だ。
次に寿人は、
6萬を引いてテンパイ復活!
2索を捨てて、8萬と3索のシャンポン待ちだ!
見事なローリングだ。
しかし、寿人の試練はここで終わりではなかった。
寿人が打った2索を優がポン。
寿人に回ってきたのは、
先ほど引いたばかりの、ドラ表示牌6萬だった。
寿人はテンパイを維持するために、マンズを選択せねばならない。
大介や優は、変わらず「危険な牌」を切っていない。見るべきは茅森だ。
6萬は通っていないので、切るのは現物の5萬かスジの8萬。
8萬に関しては、カンチャン待ちとシャンポン待ちが考えられるところだが、茅森は5筒や西よりも先に5萬を手放している。
もし、579萬とあったら、ドラを使い切るために5萬は引っ張ることになるだろう。
従ってカン8萬への警戒は解いてよし。シャンポン待ちはあるが、リスクとしては小さいと言える。
それならば――
勝負だ!
寿人は8萬を打った。
こうしておくと、マンズは、
345+赤56+678
で4-7萬待ちのリャンメンとなる。寿人はこの「待ちの広さ」を優先したのだ。
茅森の現物の5萬を切った場合は、
34赤5+66788
と、7萬のカンチャン待ちになってしまう。
もし、そうしていたら、
このハイテイでの4萬ツモはなかっただろう。
ハイテイタンヤオドラ赤、大きな大きな4000オールのアガリだ。
茅森の当たり牌を止めながら、微細なリスクに臆することなく待ちを広げ、自身のアガリを決めた寿人。
まさに会心の一撃だ。
このあとも得点を重ねて、寿人はこの半荘トップを獲得した。
試合中は鋭い眼光を卓に向けている寿人だが、
インタビューではこの笑顔。
普段の柔らかい雰囲気も、寿人の魅力の一つである。
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