Kodalineが語る「解散」という決断と最後のアルバム「バンドがなくなったあとも、僕らの音楽は残る」

コーダライン(Kodaline)が何の前触れもなく解散を発表したのは、昨年10月のことだ。その前にアルバムをもう1枚制作し、ツアーをもう1度行なって、2026年末にバンドに終止符を打つのだと。それからちょうど1年が経とうとしている今、6年ぶり5作目にあたるラスト・アルバム『We Were Only Young』が到着し、6月に始まったフェアウェル・ツアーも、12月18日に故郷のアイルランドはダブリンで迎えるフィナーレへと、カウントダウンが始まっている。

ダブリン郊外の町ソーズで生まれ育ち、8歳の時に出会ったシンガー/リリシストのスティーヴ・ギャリガンとギタリストのマーク・プレンダーガスト、のちにふたりに加わったドラマーのヴィンセント・メイとベーシストのジェイソン・ボーランドの4人から成るコーダラインは、2013年にデビュー。繊細にしてスケール感に溢れ、切なくも聞く者を高揚させてやまないギターポップで彼らは世界中でファンを獲得し、この世代を代表するアイリッシュ・アーティストの一組として広く愛されてきた。日本も例外ではなく、4人はファンに別れを告げるべく、8月のサマーソニック2026に出演。続いて、東京で大盛況の単独公演を敢行した。以下のスティーヴとヴィンセントとのインタビューは、その東京公演を前に会場の楽屋で行われたものだ。

彼らにはこれまでに何度か取材する機会を得たのだが、いつもとことん謙虚で、かつ誠実だった。そう、コーダラインの音楽性と同じように。今回もそこは変わらず、解散に至った具体的な理由こそ明らかにしていないものの、スティーヴとヴィンセントの言葉は、バンドがポテンシャルを全うし、4人の旅がごく穏やかに自然な終着点に辿り着いたことを示唆している。寂しくはなるものの、昨今隆盛を誇っているアイルランドの音楽界にこの先も色んな形で彼らは貢献するのだろう。

グレン・ハンサードが残したもの、躍動するアイルランド新世代

―今日はニュー・アルバムの話をする前に、7月末に事故で亡くなったグレン・ハンサードの話をさせて下さい。というのも報道から察するに、音楽界だけでなく国全体がショック状態に陥っているようで、いかに大きな存在だったか思い知らされた気がするんです。

ヴィンセント:確かにそうだね。

―あなたたちは彼と親しくて、恒例のチャリティ・クリスマス・バスク(※グレンの主宰でダブリンのバスキングの名所グラフトン・ストリートで毎年開催。U2のボノやダミアン・ライスら地元アーティストを多数交えて路上でセッションを行なってきた)に参加したりと、何度も共演していますよね。グレンってどんな存在でしたか?

スティーヴ:そうだな……バンドとしても個人としても交流してきたけど、あまりにも悲しい出来事で、いまだ亡くなったという実感が湧かないくらいなんだ。12月の僕らの最後のライブにゲストとして出演してもらおうと思っていたのに、56歳なんて若すぎるよね。本当に魅力的な人で、インスパイアされてやまなかった。それは僕らだけじゃなくて、アイルランドの全ミュージシャンにとってのインスピレーション源であり、圧倒的な存在感があったな。

ヴィンセント:特にジェイソンは子どもの頃からグレンをよく知っていて、実は公式な発表がある前に、亡くなったことをジェイソンから知らされたんだ。家も近くて、ふたりとも同じ頃に子どもが生まれたりして、本当に仲が良かったから、特に大きなショックを受けていたよ。

―へえ、そうだったんですね。

ヴィンセント:で、僕らもジェイソンを通じてグレンと親交を深めたところがあるし、本当にたくさんの音楽的インスピレーションをくれたわけだけど、それだけでなく、誰もがひとりの人間としての彼に自然に惹きつけられるんだよ。話術にも長けていて。

スティーヴ:うん。彼と過ごした時間を振り返ってみると、いつも歌っていた印象がある。そして、そこにいる人たちを巻き込んで一緒に歌わせるんだ。ライブのバックステージであろうと、バーであろうと、どこにいてもギターを取り出して、「さあ、みんな歌って!」と呼び掛けて。あと、アドバイスをくれることでも有名だったよ。その昔、U2のメンバーなんかも参加したイベントでパフォーマンスをしたことがあって、ものすごくナーバスになっていたんだ。そうしたらサウンドチェック中にグレンがやってきて、「君の直感が常に正しい」と言ってくれた。当時はその意味が完全には呑み込めなかったんだけど、あとで思い出して、あのシチュエーションでああいう言葉をかけてくれた彼の思いやりを実感したよ。自分がやっていることが正しいのか分からなくなっていた僕が、まさに必要としていた言葉だった。亡くなってからグレンにまつわる色んな逸話が語られているけど、とにかく若いミュージシャンを応援してくれたんだよね。

2015年のクリスマス・イブ、ダブリンのグラフトン・ストリートで行われた恒例のチャリティ・バスク。グレン・ハンサード、ボノ、ホージア、Kodaline、The Scriptらが参加し、ホームレス支援のために演奏を披露した

―グレンに限らずアイルランドは近年多くの偉大なミュージシャンを亡くしていますが、他方で若手の活躍が目覚ましいことにも触れないわけにはいきません。サマーソニック2026にはあなたたちを含めてなんと5組のアイリッシュ・アーティストが出演しましたよね。

スティーヴ:うんうん、ダーモット・ケネディとかね。彼は素晴らしいアーティストだよ。アメリカでも成功を収めているし。

ヴィンセント:フローレンス・ロードも出演したっけ。

―いったいアイルランドで何が起きているんだろうかと驚かされます。

ヴィンセント:アイルランドには常に、いくらでも素晴らしいミュージシャンがいたんだよ。

スティーヴ:長い間抑圧されていたんだ(笑)。

ヴィンセント:確かに、クランベリーズのドロレス・オリオーダンやシネイド・オコナー、ザ・ポーグスのシェイン・マガウアン、アスランのクリスティ・ディグナム……と、誰もが尊敬するアイルランド音楽界の重鎮たちが次々に亡くなってしまって、僕ら自身が幼い頃から聞いて育ってきた偉大なシンガーやソングライターばかりだから残念でならないんだけど、新しい世代の活躍を見ていると頼もしいよね。フォンテインズD.C.にしろ、ダーモットにしろ。アイルランドの音楽界はここ数年、本当に健全な状態にあるんじゃないかな。

スティーヴ:というか、これまでも常にいい状態にあったんだよ。音楽はアイルランド人の血に流れているからね。「アイルランド人は音楽好き」なんてあまりに使い古されたセリフだから笑われかねないけど、実際そうなんだよ。僕らにとって、歌ったり詩を書いたりすることは生活の重要な一部なんだ。

ヴィンセント:ストーリーテリングもそうだね。

スティーヴ:だから、多くのアイリッシュ・アーティストが世界的に活躍している現状は本当にうれしいよ。

ヴィンセント:「ようやく気付いてくれたか!」っていうバンドもいるし。

スティーヴ:それに、ここにきてアイリッシュ・トラッドの大規模なリバイバルも起きていて興味深いね。バンドで言うとアンブルとか……

―キングフィッシャーも大ブレイクしました。

スティーヴ:そうそう、こんな動きが起きたのは久しぶりだよ。

ヴィンセント:みんな正統派のトラッドにモダンな解釈を加えているよね。

―だとすると、世界がようやく目を覚ましたってことですね。

ヴィンセント:その通り! 以前からたくさんのいい音楽がアイルランドでは鳴っていたのに、世界が見逃していたんだよ(笑)。

スティーヴ:これまではその中のほんの一部分だけが海外に伝わっていたんだ。

―コーダラインはまさにそういう1組でした。

ヴィンセント&スティーヴ:ほんとだね(笑)。

スティーヴ・ギャリガン、サマーソニック2026のライブ写真

ヴィンセント・メイ、サマーソニック2026のライブ写真

解散という決断、活動20年を振り返る

―前置きが長くなってしまいましたが、そんなあなたたちも昨年10月に解散を発表してファンにショックを与えました。その後は、終わりが来ることを意識しながらアルバムを作り、ツアーを続けているわけですが、バンドにとってどんな時間でしたか?

ヴィンセント:そうだな……まず、ツアーをもう一度行なってから終止符を打つというのは、バンドの幕引きとして僕らが強く望んだことなんだ。結果的に素晴らしい体験になったし、ファンも本当に盛り上がってくれて、申し分ないよ。ニュー・アルバムからの曲への反応も上々で、とにかく思い切り楽しんでいる―という感じかな。

スティーヴ:そもそも解散という決断は長い時間をかけて出した答えであって、僕らにとってはいたって自然な帰結だった。何しろ子どもの頃から一緒に音楽をプレイしてきたからね。学校にも一緒に通って、最初はストリートでバスキングをしていて、それから正式に活動を始めて、以来本当に多くのことを達成した。次のアルバムは5枚目になるんだけど、5枚で終わりにするという判断が、僕らにはしっくり感じられたんだ。もちろんホロ苦い気分ではあるけど、正しいことをしているという実感がある。しかもヴィンセントが言った通り、今回のツアーは本当に楽しくて、キャリアで最高のパフォーマンスを見せられた気がするよ。シンガポール公演も良かったし、マニラ公演(※彼らは2万人収容のアリーナで公演している)なんか信じられない盛り上がりでね。

ヴィンセント:マニラはすごかったね。

スティーヴ:そしてサマーソニックに帰ってくることもできて本当にうれしいし、光栄だよ。ヨーロッパのバンドにとってサマーソニックは、キャリアで最初に自分たちの存在を示す機会みたいなところがあって、僕らにとってもすごく意義深い場所でね。アイコニックなフェスだし、今回が3度目になるのかな。ダーモットのショーを日本で観れたのもうれしかったね。ほかにも、これまで3回にわたって日本で単独公演を行なう機会にも恵まれた。2013年に初めて来たときは、「僕らを観に来てくれる人が日本にいるんだろうか?」ってめちゃくちゃ不安だったけど(笑)。

ヴィンセント:あの時はうれしい驚きが待っていたよね。

デビュー期を象徴する代表曲「All I Want」、2014年のグラストンベリー・フェスにて

―スティーヴが言う通り、あなたたちはバンドとして多大な成功を収めて、アイルランドでは3枚のアルバムがナンバーワンを獲得し、ヨーロッパやアジアでも絶大な支持を勝ち取るに至りました。今振り返って、「ちょっと待った、すごいことになってきた」と気付いた瞬間って覚えていますか?

スティーヴ:僕の場合、いまだにその辺が曖昧でね。というのも、どんどんゴールが変わった気がするんだ。ひとつ目標を達成したかと思うと、次の目標が新たに設定されるという感じで、過去に何を成し遂げていようと、一番新しい曲の出来が良くないと評価は維持できない。だから僕は常に前を向いて、次の曲、次のアルバムのことばかり考えて活動してきた。そういう意味では、現在進行しているバンドの最終章はすごく大事で、色んな回答を出してくれると思う。とはいえ、自分たちがこれまでにどれだけのことを達成したのかって考えると、クレイジーでしかないよ。まさに0から1000まで昇りつめたわけだし……振り返りって難しいね。考えがうまくまとまらなくて。

ヴィンセント:バンドが僕らの全人生だったと言って過言じゃないからね。10代の時に、「この先こんなことが君の身に起きる」と予告されたとしても絶対信じなかっただろうから。

スティーヴ:コーダラインに加わった頃、ジェイソンはダブリン空港の近くにあるディクソンズっていう電化製品の店でバイトをしていたっけ。

ヴィンセント:うん(笑)。それを思うと本当に感慨深い。僕らはカレッジを中退して、バンドに専念するようになって、レコード会社と契約して、世界中をツアーして、色んな人たちと出会って……。夢そのものだよ。

スティーヴ:あえてひとつ転機を挙げるとすると、2013年なのかな。毎日新しい体験が待ち受けていて、自分たちに何が起きているのか把握する時間なんてなかった。やるべきことが常にあったし、次はこっち、次はこっち……という感じで。そういう状況が結局パンデミックが起きるまで続いたとも言える。すでに6年前になるんだね。パンデミックのおかげでようやく少し休むことができたんだけど、あの時もアルバムを1枚作って、オンラインでも色んな試みをしたし、ロックダウンが終わるとすぐにツアーを再開して……つまり、僕らは立ち止まったことがなかった。そんなわけで君の質問への答えは……アイ・ドント・ノウ、だね(笑)。

ヴィンセント:今の僕らの話から何らかの回答が見つかると思うけど(笑)。

スティーヴ:とにかく素晴らしい経験をさせてもらえて、感謝の気持ちで一杯だよ。と同時に、本当にハードでもあった。

サマーソニック2026のライブ写真

最後のアルバムとこの先の未来

―そして、コーダライン節満載と呼べるアルバム『We Were Only Young』も完成しました。解散する前にもう1枚アルバムを作る余地がある、それだけの創造欲が自分たちの中にあると感じていたんですね。

スティーヴ:そうだね。みんなそれぞれにやりたいことがあって、そっちに移行したいという気持ちが強まっていたんだけど、もう1枚アルバムを作りたいという気持ちもごく自然に湧いてきた。だからといって普段と何かが違うというわけじゃない。僕らのアルバムはどれをとっても、着手した時点ではどこに向かっているのか、何をしたいのか、明確じゃなかった。今回も然りで、ただ自分たちらしい曲を書いて、それらの曲が僕らをどこに連れて行ってくれるのか様子を見て、あとは聞き手が気に入ってくれたらいいなって願うだけだよ(笑)。

ヴィンセント:僕らの曲は、一旦レコーディングし終えたら自分たちの手を離れるんだ。聞き手が好きなように意味付けしてくれていいし、すでにこれまでの活動を通じて、色んな曲が大勢の人々とコネクションを見いだしている。本当に僕らは恵まれていると思うよ。結婚式でもお葬式でも、誰かと恋に落ちた時にも、もしくは失恋した時にも、何かしらその人に寄り添うコーダラインの曲があるんだよ(笑)。

スティーヴ:僕らの曲を聞いて辛い時期を乗り切れたと言ってくれる人も多い。音楽が希望をくれたと。若い頃の僕らにとっても音楽はそういうものだった。試練に直面している時に支えてくれた。僕らもバンドとして、気付かないうちにそういう役目を果たしていたんだよね。多くの人がコーダラインの曲を通じて、自分の人生の重要な出来事を記憶してくれているというのは素晴らしいことだし、僕自身、去年結婚したんだけど、結婚式でスピーチをする代わりに曲を書いて歌ったんだ。喋るのは苦手だから。その曲もアルバムに入っているよ。

―「Without You」ですね。ほかにも結婚にインスパイアされたと思しきラブソングが少なくないですが、もうひとつ重要なテーマだと思われるのが、バンドの歴史です。「Last Forever」にも「Learn To Lose」にも「Hindsight」にも今までのコーダラインの歩みや、4人の関係について歌っているように聞こえる箇所がありました。

スティーヴ:それは、無意識に反映されたケースもあるし、バンドのことを考えながら綴ったケースもある。例えば「Last Forever」はダイレクトにバンドに言及していて、1stアルバム『In A Perfect World』の収録曲「Love Like This」を引用しているんだ。〈A love like this will live forever(こういう愛は永遠に生き延びる)〉とね。ここではバンドの音楽について語っていて、世界中にファンがいてくれるおかげで、バンドがなくなったあとも僕らの音楽は残るんじゃないかなっていう願いを託している。まあ永遠じゃなくても、そこそこ長い間残ってくれたらうれしい(笑)。たださっきもヴィンセントが言ったように、一旦世に出たらどう受け止めてもらっても構わない。そもそもあまり具体的な書き方はしていないし、できるだけオープンな表現を意識しているんだよね。

―ヴィンセントも、スティーヴが書いた歌詞を読んで、「ああ、これはバンドのことだな」ってすぐにピンと来ましたか?

ヴィンセント:もちろん。このアルバムは全体的に非常に内省的で、僕らがバンドとして歩んできた道を振り返っている曲が多い。と同時にスティーヴが言う通り、一定の曖昧さがあって、いかようにも解釈できる幅がある。そこが重要なんだよ。

―『We Were Only Young(僕らは若かったというだけ)』というアルバム・タイトルもそういう意味ではぴったりですよね。胸を締め付けるようなやるせないフィーリングを醸す一方で、若い頃の体験をポジティブに受け入れる肯定感も同時に伝えています。

スティーヴ:うん。人生って究極的にそういうものだよね。ある意味で、喪失感から立ち直るプロセスにも似ていて、悲しみをポジティブに転化する段階を追っているようなところがある。僕らが分かち合ってきたこれまでの体験から可能な限り学びを得て、前進するしかないんだよ。みんなティーンエイジャーだった時から変わったし、長い時間を一緒に過ごしてきたけど、人間としてそれぞれ違う方向に成長した。それにしては、20年も一緒に楽しくやって来たんだから、すごいなって自分でも思うよ(笑)。

ヴィンセント:全員の人生において、バンドにいなかった時間のほうが圧倒的に短いわけだからね(笑)。この間、当然ながらポジティブなことだけじゃなくてネガティブなこともあったけど、ポジティブなほうが遥かに勝っている。

スティーヴ:僕らはバンド以外の人生を知らないんだ。閉ざされた空間の中でずっと生きてきたようなところがあるから、感覚が麻痺していて、例えばものすごく大勢のオーディエンスの前に立ってプレイしている時にふと、自分たちがどれだけラッキーなのか、自分たちの体験がどれほど現実離れしているのか、自分たちがどれだけ遠くまで旅をしてきたのか、気付かされるんだ。ものすごく奇妙で、同時に最高の体験でもあったよ。

―来年からはそれぞれの道を歩むわけですが、解散後もみんな何らかの形で音楽活動を続けるんですよね? マークはすでにマン・アライブ名義で作品を発表していて、スティーヴもソングライターとして他のアーティストに曲を提供したりしていますよね。

スティーヴ:もちろん! これからも音楽を作るし、それを聞いてもらいたいし、ツアーもしたいし、色んなことを考えている。その点はみんな同じだよ。でも最後の公演が終わるまではコーダラインとして、一瞬一瞬を満喫したい。旅をしながらファンと会って。切なくはあるけど、僕らは全員満たされた気持ちだし、残りの数か月を楽しみにしているよ。

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2026年8月17日、Shibuya O-EASTでの単独公演ライブ写真

Photo by @thisiswolff

コーダライン

『We Were Only Young』

発売中(2026年10月2日リリース)

再生・購入:https://i.concordrecords.com/kodaline-wwoy--album