深い黒色の車体に金色のロゴが映える、JR九州のD&S列車「36ぷらす3」。これまでにのべ7.4万人以上の利用者を乗せ、九州を巡ってきた列車が、このほど6号車を大幅にリニューアルした。リニューアル後の列車は9月6日から通常運行を開始する。

  • 大分駅に入線した「36ぷらす3」。8月30日に報道試乗会が行われた

    大分駅に入線した「36ぷらす3」。8月30日に報道試乗会が行われた

これに先立ち、報道関係者向けの試乗会を実施。8月30日には、大分駅から博多駅へ向かう日曜日ルート「青の路」と同じスケジュールで試乗会の列車が運行された。今回、リニューアルの中心となった6号車に乗車し、途中の小倉駅まで「36ぷらす3」の旅を味わった。

途中駅でのおもてなし、車内イベント、食事、自由散策と、場面が次々に変わる列車でのひととき。新しい6号車を中心に、旅の過ごし方についてたどっていく。

  • 「36ぷらす3」は787系を改造した6両編成のD&S列車

  • 報道試乗会では、リニューアルした6号車に乗車

「36ぷらす3」はJR九州の特急列車で活躍する787系を改造し、2020年にデビュー。曜日ごとに異なる5つのルートで九州の各地を巡る。沿線の食と文化、途中駅でのおもてなしなどを組み込み、九州のさまざまな魅力を楽しめるように設計されている。

リニューアルで最も大きく変わったのが6号車。これまで畳敷きのグリーン席として使用されてきたが、リニューアル後は定員1~2人のグリーン個室10室を備える。

  • グリーン個室にコンセントを設置

    グリーン個室にコンセントを設置

  • すだれで個室と通路を仕切る

    すだれで個室と通路を仕切る

個室と通路の間はガラスのパーテーションとすだれで仕切られ、各室の座席はそれぞれ異なるデザイン。畳だった床はフローリングへと変わり、通路も歩きやすくなった。

すだれを上げれば通路側まで視線が抜け、すだれを下ろせば周囲の視線をほどよく遮れる。実際に座ってみても、個室特有の閉塞感はほとんど感じなかった。

個室のテーブル下にコンセントも設置。中央のテーブルは2人分のランチを並べても窮屈に感じない大きさで、向かい合って座っても十分に余裕があった。

  • ステッカーやリーフレットなどを配布

    ステッカーやリーフレットなどを配布

  • ドリンクとスイーツが書かれたメニューも

    ドリンクとスイーツが書かれたメニューも

  • ご当地の品々も車内で販売される

テーブルの下には、3号車のビュッフェで販売されているオリジナルグッズや九州のお土産、車内で味わえるドリンクとスイーツが書かれたメニューも置かれていた。ステッカーと記念乗車証、リーフレットが配布され、ますます気分が高まる。

6号車のグリーン個室は、「36ぷらす3」のJR券と食事(ファーストドリンク付き)、お茶菓子と食後のドリンクがセットになった「プレミアムランチプラン」の利用者専用だという。追加の代金を支払えば1人でも利用できる。2人旅または1人旅で個室を利用し、食事や車窓をゆっくり楽しみたい人向けの車両といえる。

  • 最初の「おもてなし駅」杵築駅へ到着

  • スタンプコーナーもあり、「36ぷらす3」のリーフレットにスタンプを押せる

    スタンプコーナーもあり、「36ぷらす3」のリーフレットにスタンプを押せる

「36ぷらす3」は10時48分に大分駅を出発し、日豊本線を走行。別府駅を経由し、11時30分頃に最初の「おもてなし駅」となる杵築駅へ到着した。

約10分間の停車中、通常運行と同じく地域の関係者らによる物販とおもてなしが行われた。ホームで手作りの和菓子と特産品の販売も。車内で配布されたリーフレットにスタンプを押すコーナーも設置されていた。

  • 中津駅も「36ぷらす3」の「おもてなし駅」に

続いての「おもてなし駅」は中津駅。12時10分頃に到着し、ご当地キャラクター「くろかんくん」と地域の関係者らが出迎えた。約15分間の停車中、中津ならではのグッズと特産品を販売。杵築駅と同様、中津駅でも発車の際、多くの人たちがホームから「36ぷらす3」を見送っていた。またこの地に帰ってきたくなるような温かさを感じる。

中津駅を発車した後、12時30分頃から6号車でプレミアムランチ(弁当)の提供が始まった。日曜日ルート「青の路」のプレミアムランチは、大分市内に店舗を構えるイタリアン「RISTORANTE Oba」が手がけ、メニュー名は「大分食材のご馳走コース料理 お重仕立て」。この日はオーナーシェフを務める大庭勝広氏も乗車していた。

  • 日曜日のプレミアムランチプランで提供される「大分食材のご馳走コース料理 お重仕立て」

    日曜日のプレミアムランチプランで提供される「大分食材のご馳走コース料理 お重仕立て」

  • 「RISTORANTE Oba」のオーナーシェフ、大庭勝広氏

    「RISTORANTE Oba」のオーナーシェフ、大庭勝広氏

  • 大分の食材がふんだんに使われている

「36ぷらす3」で提供するランチに関して、大庭氏によれば、弁当であることを理由に普段の料理へのこだわりを変えるのではなく、通常のレストランでの食事と同じ考え方で構成したという。刺激物を使わず、大分の素材そのものの美味しさを引き出す料理となっている。

大分県産蛸のマリネや佐伯産のカボスサーモン、佐伯産真鯛のセモリナ粉焼きなど、素材を生かす調理で味わう大分の食材は絶品。油っぽさや味付けの濃さがなく、野菜の自然な甘みとそれぞれの食感にも癒される。ビーフコンソメスープもシンプルながら旨味が詰まっている。肉と魚が贅沢に入ったボリュームのあるお重だが、最後まで楽しみながら完食できた。

  • ドリンクとスープも提供。お重と箸にも九州らしさが感じられる

料理だけでなく、器にも九州らしさが感じられた。お重には九州産の竹材を使い、ふたには日本の伝統文様「青海波(せいがいは)」を丸く切り抜いたデザインを使用。「『36ぷらす3』での旅が、丸く穏やかに続きますように」との意味を込めたという。

今回体験した「プレミアムランチプラン」では、熊本県の箸メーカーであるヤマチクが手がけた「36ぷらす3」オリジナルデザインの竹箸を用意しており、食後に持ち帰ることもできる。実際に手にしてみると、見た目よりも軽く、手へのなじみが良い。列車を降りた後も使える実用性も兼ねたうれしい乗車記念品だった。

  • 日曜日のランチプランで提供する「季節の大分食材を使った彩りイタリアン」

    日曜日のランチプランで提供する「季節の大分食材を使った彩りイタリアン」

なお、1~3号車にも別のランチプランを用意しており、日曜日ルートではプレミアムランチ(6号車)と同じ「RISTORANTE Oba」が手がけた「季節の大分食材を使った彩りイタリアン」を提供している。食事の内容だけでなく、どの車両でどんな時間を過ごしたいかによってプランを選ぶことが可能になっている。

食後の13時20分頃から、4号車「マルチカー」で車内イベント「金平糖体験」が始まった。4号車は通常の客室ではなく、乗客が自由に利用できる共用スペース。ルートごとに異なる体験を行うほか、イベントの会場としても使用される。

車内イベントは無料で参加可能。日曜日ルートの車内イベント「金平糖体験」は、大分・北九州・福岡の特産品を使った金平糖を紹介するとともに、試食も行う。3色の金平糖をそれぞれ食べ、味を当てるクイズも行われた。

  • 日曜日ルートの車内イベント「金平糖体験」

  • 日曜日ルートの体験メニュー「小倉織風呂敷包み体験」(2,600円)

    日曜日ルートの体験メニュー「小倉織風呂敷包み体験」(2,600円)

筆者は体験できなかったが、日曜日ルートでは有料の体験メニューとして、「小倉織風呂敷包み体験」(2,600円)を15時20分頃から実施している。小倉織の風呂敷のデザインを選び、金平糖を包む体験を楽しめる。使用した風呂敷は持ち帰ることができる。

「36ぷらす3」の日曜日ルートでは、小倉駅から先、レトロな駅舎で知られる門司港駅にも停車する。約80分間の停車中、駅舎の外に出て門司港エリアの観光スポットを自由に散策できる。門司港駅では、リーフレットを提示することで専用通路を通過できた。

  • 「36ぷらす3」は門司港駅にも停車。専用通路から駅舎の外に出られる

  • 門司港エリアの観光スポットも自由に散策できる

ところで、「プレミアムランチプラン」の内容には、お茶菓子と食後のドリンクも含まれている。日曜日ルートのお茶菓子は「大分県産かぼちゃのパウンドケーキとフルーツ」と「ティラミス」の2種類。ドリンクは佐賀県産紅茶と鹿児島県産ほうじ茶から選ぶことができ、いずれも九州の食を楽しめる内容となっていた。

その他、5つの味を楽しめるという「36ぷらす3」オリジナルキャンディの配布も。家族や友人と乗車した際、何味だったか話してみるのも良いかもしれない。

  • 食後のお茶菓子とドリンク

    食後のお茶菓子とドリンク

  • 「36ぷらす3」オリジナルキャンディ

    「36ぷらす3」オリジナルキャンディ

「36ぷらす3」は門司港駅で折り返し、再び小倉駅へ。筆者はここで途中下車し、取材を終了したが、日曜日ルートの終点は博多駅となっており、16時41分に同駅へ到着する。

個室でゆったりとした時間を楽しみ、途中駅でのおもてなしに癒され、ランチを味わい、食後はイベントに参加。列車そのものを楽しむことはもちろん、九州の食や沿線の町、人との出会いまで一度に味わえたひとときだった。