「中間管理職のような...」――。フジテレビ系ドラマ『ラストノート』(毎週木曜22:00~)で主演・一瀬葵(いちのせあおい)役を務める内田有紀が取材に応じ、自身のキャリアや人生観について率直に語った。

20代、30代、40代を駆け抜け、現在50歳。内田は今の自分を「ミドルノートからラストノートへ移行している状態」だと表現する。その言葉には、年齢を重ねたからこそ見えてきた景色が詰まっていた。

  • 内田有紀『ラストノート』場面カット

    内田有紀『ラストノート』場面カット

「40代になると、一歩踏み出すのが怖くなることもある」

『ラストノート』は、大人の恋愛を描くラブストーリー。内田は、特に40代から50代の視聴者に届いてほしい作品だと語る。

「40代から50代、それからもっと上の世代の方々も含めて、人生の折り返しを経験した大人の方の心へも届けたい作品です」

葵は離婚を経験し、「現状維持でいい」「変化はいらない」と自分にフタをしてしまっている女性。内田自身もまた、40代に入った頃に似た感覚を抱いたことがあったという。

「私が40代になる前や、なってからも感じていた、“息をひそめて生きてきた”みたいなことが起きるんです」

「若い頃は怖いものがなくて、前向きな気持ちが強すぎて空回りすることもあったり。でも年齢を重ねると、だんだんブレーキを踏めるようになったり、自分の弱点も強みも分かってくる。その頃に、人生って頭をバンと叩かれるようなことが起きたりとか。『そんなんじゃだめだよ』と言われるようなことを神様は用意していて」

そうした経験を経て、人は少しずつ慎重になる。「一歩踏み出すのが怖くなったりすることがあるんです。だから葵の気持ちがすごく分かる」

しかし、本作はそんな主人公の一瀬葵が人との出会いによって変化していく物語でもある。

「男性とか女性とか関係なく、人って誰かとの出会いによって生き方や考え方に刺激を受けて変われるんだなと思いました」

「息を吸い込んで、吐き出さない」葵に重ねた自身の40代

  • 内田有紀『ラストノート』場面カット

    内田有紀『ラストノート』場面カット

内田が主人公・葵に強く共感したのは、“呼吸”だったという。

主人公・葵は職場でもプライベートでも、自分の感情を飲み込みながら周囲との調和を優先する女性。内田は、そんな彼女を象徴する仕草として「息を吸い込む瞬間」を挙げた。

「葵って、自分のやりたくないことでも飲み込んで物事を円滑に進めようとするんです。みんながうまくいくなら自分が我慢すればいいと思っているところがある」

撮影中、内田が印象的に感じているのは、葵が何かを言いかけるたびに息を吸い込むことだ。

「葵って息を吸い込むんですけど、吐き出さないんですよね」
「葵は息を止めてしまう。つまり自分の思いを飲み込んでしまうんです。そこがすごく彼女を象徴している気がして」

そして、その姿は内田自身が感じていた心情とも重なった。

「年齢を重ねると、いいことも悪いことも積み重なってきちゃうんで」だからこそ、物語を通して葵には少しずつ変わっていってほしいと願っている。内田は「呼吸って大事だなと思う」と笑いながら語った。

「今はミドルノートとラストノートの間にいる」

  • 内田有紀『ラストノート』場面カット

    内田有紀『ラストノート』場面カット

『ラストノート(残り香)』というタイトルにちなみ、「人生のどの香りの段階にいると思うか」と聞かれた内田は、少し考えたあとでこう答えた。「今はミドルノートからラストノートへ移行している状態だと思っています」

トップノートは若さゆえの勢いやエネルギーに満ちた時代。ミドルノートは経験を積み、視野が広がる時期。そしてラストノートは人生の本質が残る時間だと捉えている。

「いろんなことが見えてきて、視野も広がってきた。でも最後の余韻になるにはまだ早い。だから今は変化している時期なんです。中間管理職みたいな(笑)」

将来、どんな香りになりたいかという問いには、柔らかな笑顔を見せた。

「穏やかな、柔らかい甘い香りになれたらいいですね。甘すぎず、温かく周りを照らせるような」

さらに、「遠赤外線って周りの人も温めるし、芯まで届くじゃないですか。そういう人間でいたいなと思います」「香りじゃなくなっちゃった(笑)」と穏やかに将来の理想を語った。

「一人で立っていると思っていた」

1990年代から第一線で活躍を続ける内田に、30年前と比べて自身の変化を感じる部分について聞くと、「10代の頃はリーダーシップを取る元気な女の子の役が多かった」と振り返る一方、「実際の私は誰かについていきたいタイプだった」と明かした。

近年は主演として作品の中心に立つよりも、「強い力で真ん中に立ってくださる主演の方を支えたい」という思いが強かったという。

「縁の下の力持ちとして支えていきたい気持ちがすごく強くて、そこを極めていきたいという職人的な思いもありました」

そのため、今回『ラストノート』で主演を務めることには躊躇もあったと語るが、若い頃に感じていた主演としてのプレッシャーは、今では少し形を変えたという。

「若い頃は責任感に押しつぶされそうになることもありました。でも今は『一人じゃない』と思えるんです。みんなで作り上げているから大丈夫、と本気で思えるようになりました」

年齢を重ねたことで視野が広がり、スタッフや共演者の存在をより強く感じられるようになったという内田。「これは年を重ねるっていいなと思うことの一つです」と笑顔を見せ、「今はプレッシャーというより、とにかく素敵な作品を届けたいという思いだけ」と語った。

さらに、長年応援してきたファンについても言及。「昔の出演作を見ていた小学生が高校生や大人になり、『ラストノート』を楽しみにしてくれていることもある」と話し、「この仕事は点ではなく線。一つひとつの仕事が次につながっていくことを実感しています」とキャリアへの思いを口にしていた。

50代を目前にしながらも、「変化の途中」にいると語った内田。その言葉からは、年齢を重ねることを恐れるのではなく、人生の新しい季節を楽しもうとするしなやかな姿勢が伝わってきた。

『ラストノート』で描かれる大人の恋愛もまた、そんな内田自身の実感と重なりながら、多くの視聴者の心に寄り添っていきそうだ。

(C)フジテレビ