ドラが8萬で、この形でテンパイをしました。

アナタは何を切りますか?

今回スポットライトを当てる選手は、日本プロ麻雀連盟所属、前田直哉。

獲得タイトルは、第31期鳳凰位、第4期グランプリMAX、2015年の最強位。

Mリーグファンの方には、明るくて分かりやすい解説でお馴染みのプロである。

Mリーグを中心に「見る雀」を楽しんでいる方の中には、前田が選手として麻雀を打っているところを見たことがない、という人もいるのではなかろうか。

その背景もあって、知る人ぞ知るという意味でタイトルに「公然の秘密兵器」と書いたのだが、前田の麻雀は、とにかくヤバい。

語彙力がなくて申し訳ないが、本当にヤバいのだ。

モニターを見ていて「うおっ!」と思わず声が出るような選択が、前田の麻雀では突如として現れる。

一部で語りぐさとなっていて、この日解説の石橋も試合前に少し触れていた、前年度2025Mトーナメントでの前田の「神選択」を簡単に紹介しよう。

2人が勝ち上がりという条件戦で、1戦目トップだった前田はピンチを迎える。

南4局に、親の松ヶ瀬がリーチをしているところへ、

飯田から追っかけリーチが飛んできたのだ。

飯田は初戦2着。

飯田がこの半荘も2着に浮上すると、前田が4着の場合はまくられてしまう。

前田にとってはまずい状況だ。

仕掛けたあと、松ヶ瀬のリーチにオリていた前田は、

驚くべきことに、なんとここから、

赤5萬を場に放ったのだ!!

画像だと、河が見にくくて申し訳ないのだが、親の松ヶ瀬には通っている牌であった。

しかし、飯田に5萬は通っていない。

「だからこそ」前田は、あえて赤5萬を切ったのである。

飯田の通過条件(この年は2戦トータルで上位2名)は、

このようになっている。

飯田は、前田からは16000以上をアガらないと、この2戦目で2着目にいる松ヶ瀬をまくれないので、条件をクリアできない。

一方で、飯田は松ヶ瀬から直撃できれば差がグッと縮まる。この場合は8000点であればOKだ。

そう、前田は、飯田の条件まで全て計算し尽くしていたのだ。 

なんせ、

どう転んでも倍満に届かない手なら、飯田はこの赤牌を見逃すほかない。

そのときは、飯田の待ちはフリテン扱いとなるので、

松ヶ瀬からアガリ牌が出ても、ロンできないのだ!

松ヶ瀬の8萬に声がかかることはなく、ゲームは進行していく。

先程も見た飯田の手は、

ドラの南が雀頭のリーチドラドラ。

松ヶ瀬から直撃して裏ドラが1枚でも乗れば、条件である8000点のアガリとなる。

その場合、飯田は前田を逆転していた。

恐るべし、前田直哉。

意図的に出アガリできない状況を作り出して、飯田に「裏ドラをめくるチャンス」すら与えなかったのだ。

このあとの南4局1本場は多井がアガって、前田は多井とともに勝ち上がりを決めた。

このように、常人がなかなか思い付かない選択を発想する力。そしてそれを事も無げにやってのけるスマートさ。

これを見て私は、

“もしかして前田直哉は、とんでもなく凄い打ち手なのでは…?”

という感情になったのを覚えている。

そして、2026年のMトーナメントでも、やはり「あのとき感じた予感は本物」だった、と思える選択が飛び出した。

2半荘を打って、1位が3rdステージへ、2位が2ndステージへ進める仕組みで、

1戦目にトップを獲った前田は、

2戦目の東3局で、親番阿久津のリーチを受けていた。

前田は、

現物がないので、端牌の1索、

続けて、

無筋の8索と押していった。

タンヤオドラドラ赤のイーシャンテン。

相手は親であるが、安全な牌がないのなら、自分の都合で進めるのがいい。

次の巡目には、

通った3索を合わせ打ち。

形をキープしつつ、ファイティングポーズを保っていた。

そこへ、

安藤からもリーチがかかった!

前田が持ってきた牌は、

ドラの8萬!

4-7索待ちのテンパイだ!

下家の安藤は4策を切ってリーチをしてきたので、これは「現物待ち」のリャンメンテンパイとも言える。

ここで前田は、

なんと、

アンコになったドラの8萬を打ったのだ!!

河を見てみると、上家にいる阿久津が今5萬を切っている。阿久津にも安藤にも5-8萬リャンメン待ちはない。

そして、自分が3枚目の8萬を持ってきたことから、シャンポン待ちも存在しないのが分かった。

残るは、カンチャン待ちと単騎待ちだが、全部で9萬は4枚見え。カンチャン待ちの可能性もない。

単騎待ちに関しても、自分が3枚持っている時点でめったに出てこない。

また、リーチ者二人の河は、真っ直ぐ進めていそうな「手なり」の切り順となっている。最終形が単騎待ちになっていること自体、稀だろう。

もちろん、自分がアガりたい気持ちもあっただろうが、前田は、

1戦目がトップで、この2戦目のも点数に余裕があることも踏まえ、「最も安全な」ドラの8萬を役アリテンパイから、そしてアンコから打ったのだった。

実にクレバーな選択だ。

追っかけリーチの安藤は1-4筒待ち。

そして、

親の阿久津は1-4萬待ちだった。

前田がテンパイをとっていたら、親への放銃となっていたのである。

このあとも、

悠然と8萬を連打していく前田。

この2軒リーチは流局となった。

岩より“堅い”、ダイヤモンド麻雀。

放銃を回避した前田は、このあとも泰然自若とした打ち回しを見せ、2戦目もトップを獲得。トータル1位の通過で、3rdステージ進出を決めたのだった。

前田は、試合前のインタビュー動画で、こう語っていた。

「見て貰っている人に感動を与えられるような麻雀が打てれば、一番嬉しい」

と。

前田直哉が見せてくれるのは、まさに「人に感動を与える麻雀」である。

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